13.過不及
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昔から思っていたことだが、やはりアカギはどこか神聖な雰囲気がある。
彼の衣服ははだけていて、首から腹にかけて巻かれた包帯が目に入った。
それがなんだかやけに扇情的に思えて、舞美はうっとりとアカギを見つめてしまう。
(早く目覚めてよ……)
するとすぐに仰木と安岡が部屋に入ってきた。
舞美は姿勢を正し、2人に茶菓子でも買ってこようと気を利かせ、外に出る。
その辺で人数分の饅頭を買い、病室に戻り、ガラガラと扉を開けたら。
半身を起こした状態で、きょとんとした顔のアカギが、こちらに目を向けていた。
「あ、アカギ! 起きたの!」
舞美の声に、アカギは瞬きする。
「東雲」
饅頭を雑に置いてから、舞美はベッドに近寄る。
「心配したよ、また会えてよかった」
アカギは言葉を発さずに、ただ舞美の頭を撫でた。
仰木はゴホンと咳払いをしてから、会話の続きを話し始めた。アカギが命を張って自分の出目を曲げなかったことについて、軽く説教をしていたらしい。
「ほらな、アカギ。おまえにはこうして東雲がいるじゃねえか。あんな所、命を張る場所じゃねえ。もっと上を目指せるはずだ」
アカギはゆっくり仰木に目を向ける。
「興味ねえな。それに、確かに東雲はいい女だけど、だからってオレが自分の考えを曲げる理由にはならないだろ」
あの時はそんな気分だった、とアカギは漏らす。それで死ぬのなら死ねばいい、とも。
対して仰木も食い下がった。
「2流3流と当たってばかり。たぶん、いたたまれないんだろう。おまえには、今のぬるま湯が」
アカギは口の端を上げ、仰木の話を聞く。
「……おまえが心底望んでいるのは、冷たい死なんかじゃない。おまえが求めているのは、滾るような、焦げ付くような熱い生」
舞美は一理あると思った。
きっとアカギもそうだし、自分にも当てはまっている気がする。
飽きを殺すための強い刺激が必要なの。
「その相手。おまえに足る男。——ひとり、知ってるぞ」
アカギはその言葉を嘲るように小さく笑った。
「やっぱりそんなとこか。ぶつけようって言うんだろ。高レートの麻雀。その男と、オレを。今くっちゃべったのは、全部前置きってわけだ」
すると、返答の代わりに、新聞がベッドの上に飛んできた。アカギがそれを手に取り、表紙を見る。舞美も隣から覗き込むようにして記事を読んだ。
「その一面に出ている猟奇殺人事件。その犯人が今回のおまえの相手だ」
「……えっ?」
顔を上げると、安岡は一枚の写真を取り出した。
「その記事の死体は、おまえたちもよく知っている、この男だった……」
舞美は目を見開く他仕方なかった。
隣でアカギの驚く声が聞こえる。
「こいつは……」
「そう。かつておまえの名を騙っていた、オレの相棒、平山幸雄だ」
13.過不及〈完〉
彼の衣服ははだけていて、首から腹にかけて巻かれた包帯が目に入った。
それがなんだかやけに扇情的に思えて、舞美はうっとりとアカギを見つめてしまう。
(早く目覚めてよ……)
するとすぐに仰木と安岡が部屋に入ってきた。
舞美は姿勢を正し、2人に茶菓子でも買ってこようと気を利かせ、外に出る。
その辺で人数分の饅頭を買い、病室に戻り、ガラガラと扉を開けたら。
半身を起こした状態で、きょとんとした顔のアカギが、こちらに目を向けていた。
「あ、アカギ! 起きたの!」
舞美の声に、アカギは瞬きする。
「東雲」
饅頭を雑に置いてから、舞美はベッドに近寄る。
「心配したよ、また会えてよかった」
アカギは言葉を発さずに、ただ舞美の頭を撫でた。
仰木はゴホンと咳払いをしてから、会話の続きを話し始めた。アカギが命を張って自分の出目を曲げなかったことについて、軽く説教をしていたらしい。
「ほらな、アカギ。おまえにはこうして東雲がいるじゃねえか。あんな所、命を張る場所じゃねえ。もっと上を目指せるはずだ」
アカギはゆっくり仰木に目を向ける。
「興味ねえな。それに、確かに東雲はいい女だけど、だからってオレが自分の考えを曲げる理由にはならないだろ」
あの時はそんな気分だった、とアカギは漏らす。それで死ぬのなら死ねばいい、とも。
対して仰木も食い下がった。
「2流3流と当たってばかり。たぶん、いたたまれないんだろう。おまえには、今のぬるま湯が」
アカギは口の端を上げ、仰木の話を聞く。
「……おまえが心底望んでいるのは、冷たい死なんかじゃない。おまえが求めているのは、滾るような、焦げ付くような熱い生」
舞美は一理あると思った。
きっとアカギもそうだし、自分にも当てはまっている気がする。
飽きを殺すための強い刺激が必要なの。
「その相手。おまえに足る男。——ひとり、知ってるぞ」
アカギはその言葉を嘲るように小さく笑った。
「やっぱりそんなとこか。ぶつけようって言うんだろ。高レートの麻雀。その男と、オレを。今くっちゃべったのは、全部前置きってわけだ」
すると、返答の代わりに、新聞がベッドの上に飛んできた。アカギがそれを手に取り、表紙を見る。舞美も隣から覗き込むようにして記事を読んだ。
「その一面に出ている猟奇殺人事件。その犯人が今回のおまえの相手だ」
「……えっ?」
顔を上げると、安岡は一枚の写真を取り出した。
「その記事の死体は、おまえたちもよく知っている、この男だった……」
舞美は目を見開く他仕方なかった。
隣でアカギの驚く声が聞こえる。
「こいつは……」
「そう。かつておまえの名を騙っていた、オレの相棒、平山幸雄だ」
13.過不及〈完〉