2.目覚め
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警察はやはり、アカギを探していた。
不良グループ同士の抗争事件としてチキンランが行われたこと、2台の車が落ちたこと。それから、1人は重傷で病院に担ぎ込まれ、1人は海に落ちてから自力で泳いで逃げたこと……。
この界隈に逃げ込んだという情報があったこと。
アカギは悪い笑みを浮かべ、竜崎たちはそれを見てざわつく。しかし、彼も都合が悪いらしく、黒服たちに「追い払え」と命令した。
彼らが扉に向かってなにやら言い出したのを、舞美はじっと見ていた。
頑張れヤクザ!
頼むから、警察には帰ってほしい。
と、その隙に、舞美はアカギが何か南郷に囁いているのを聞いた。
「取引しませんか……?」
「え…?」
「サツも何かネタがあってここを嗅ぎつけたんだから…たぶん引き下がらない……ものの1分もしないうちに入ってくる……」
舞美はごくりと喉を鳴らした。それは困る。
アカギは一瞬だけ舞美をちらりと見てから、続けた。
「……その時オレと口ウラを合わせて、オレと東雲のアリバイ、そして身元を保証してくれればいい……」
「いい加減にしろっ!」
南郷は、素寒貧には取引などできないともっともなことを言う。しかし、アカギは「フフ……」と不気味に笑った。
「“物 ”はある……」
彼はそっと伏せた牌を上げた。舞美は今度こそ驚きを隠せない。不可能なはずの、四暗刻大三元、ダブル役満が完成されている。こんなことは、あり得ない。
だって、それはさっき見逃したんだから。
つまりこれは、イカサマによる産物。
「いつ、抜いたの?」
「たった今だよ。あんただってあっちに気を取られてただろ」
「そ、そんな」
アカギだって焦っていてもおかしくないはずなのに、どうしてこんなに冷静に化け物じみたことをできるんだろう……。もはや覚悟とか度胸とか、そういう一般的なものでは説明できないのではないだろうか。
そんなアカギは南郷を無言で見つめ、圧力を与えている。ついでに、中をつまむなどして、効果的に南郷を脅し始めた。
なんて恐ろしい男なの。
そしてなんて魅力的な男なの。
舞美は不覚にもそう思った。
観念した南郷がポンとアカギの肩に手を乗せた、その時。
後ろの方がまた騒がしくなり、とうとう大柄な刑事がずかずかと入ってきた。
刑事はアカギと、その隣の舞美を見て、にやりと笑った。
「なるほど、おったのかい……問題のガキがこんなところに。それも、可愛い恋人なんか連れ込んで」
可愛い恋人。それが自分のことを指していると分かり、舞美は何故か気分がよくなった。
「おまえだろ、チキンランの生き残りってのは…」
精神的に追い詰められた舞美は、アカギの服のすそをそっとつまんだ。
幸い、彼に振り払われることはなかった。
なんだか、ほっとする。
南郷は、約束通り口を出した。
「刑事さん、それは違います。この2人はオレの兄貴のガキでね……。わけあってちょっと預かってるんですよ」
南郷の咄嗟の偽証に、竜崎も乗ってくる。刑事は煙草をくわえ、やれやれと息をつきながら、どかっと長椅子に座った。
「見たってやつがいるんだよ。それに階段に足跡もある。そこのガキがつけたびっしょり濡れた足跡が…な」
やばい、どうしよう。ちらりとアカギを見たが、彼は余裕そうに笑った。それを見た舞美は無条件に安心してしまう。
「それは説明がつきます、刑事さん。さっきコイツとタバコを買いにいったから、その時のものでしょ」
コイツ、という時にそっと肩に触れられた舞美は、アカギからのスキンシップに体を固くしながらも、頷き微笑んだ。
「この深夜にか…?」
「そうです」
「そのタバコは…?」
「……それがやっぱり店開いてなくてね。僕もこんな夜中にムリって言ったんだけど……」
アカギはペラペラと嘘をついた。
「ね、舞美」
「う、うん」
あ、そうか。わたしたち、兄妹って設定か。
舞美はアカギから名前を呼ばれたので、なんだか役得だなぁと思いながらふふふと笑った。
不良グループ同士の抗争事件としてチキンランが行われたこと、2台の車が落ちたこと。それから、1人は重傷で病院に担ぎ込まれ、1人は海に落ちてから自力で泳いで逃げたこと……。
この界隈に逃げ込んだという情報があったこと。
アカギは悪い笑みを浮かべ、竜崎たちはそれを見てざわつく。しかし、彼も都合が悪いらしく、黒服たちに「追い払え」と命令した。
彼らが扉に向かってなにやら言い出したのを、舞美はじっと見ていた。
頑張れヤクザ!
頼むから、警察には帰ってほしい。
と、その隙に、舞美はアカギが何か南郷に囁いているのを聞いた。
「取引しませんか……?」
「え…?」
「サツも何かネタがあってここを嗅ぎつけたんだから…たぶん引き下がらない……ものの1分もしないうちに入ってくる……」
舞美はごくりと喉を鳴らした。それは困る。
アカギは一瞬だけ舞美をちらりと見てから、続けた。
「……その時オレと口ウラを合わせて、オレと東雲のアリバイ、そして身元を保証してくれればいい……」
「いい加減にしろっ!」
南郷は、素寒貧には取引などできないともっともなことを言う。しかし、アカギは「フフ……」と不気味に笑った。
「“
彼はそっと伏せた牌を上げた。舞美は今度こそ驚きを隠せない。不可能なはずの、四暗刻大三元、ダブル役満が完成されている。こんなことは、あり得ない。
だって、それはさっき見逃したんだから。
つまりこれは、イカサマによる産物。
「いつ、抜いたの?」
「たった今だよ。あんただってあっちに気を取られてただろ」
「そ、そんな」
アカギだって焦っていてもおかしくないはずなのに、どうしてこんなに冷静に化け物じみたことをできるんだろう……。もはや覚悟とか度胸とか、そういう一般的なものでは説明できないのではないだろうか。
そんなアカギは南郷を無言で見つめ、圧力を与えている。ついでに、中をつまむなどして、効果的に南郷を脅し始めた。
なんて恐ろしい男なの。
そしてなんて魅力的な男なの。
舞美は不覚にもそう思った。
観念した南郷がポンとアカギの肩に手を乗せた、その時。
後ろの方がまた騒がしくなり、とうとう大柄な刑事がずかずかと入ってきた。
刑事はアカギと、その隣の舞美を見て、にやりと笑った。
「なるほど、おったのかい……問題のガキがこんなところに。それも、可愛い恋人なんか連れ込んで」
可愛い恋人。それが自分のことを指していると分かり、舞美は何故か気分がよくなった。
「おまえだろ、チキンランの生き残りってのは…」
精神的に追い詰められた舞美は、アカギの服のすそをそっとつまんだ。
幸い、彼に振り払われることはなかった。
なんだか、ほっとする。
南郷は、約束通り口を出した。
「刑事さん、それは違います。この2人はオレの兄貴のガキでね……。わけあってちょっと預かってるんですよ」
南郷の咄嗟の偽証に、竜崎も乗ってくる。刑事は煙草をくわえ、やれやれと息をつきながら、どかっと長椅子に座った。
「見たってやつがいるんだよ。それに階段に足跡もある。そこのガキがつけたびっしょり濡れた足跡が…な」
やばい、どうしよう。ちらりとアカギを見たが、彼は余裕そうに笑った。それを見た舞美は無条件に安心してしまう。
「それは説明がつきます、刑事さん。さっきコイツとタバコを買いにいったから、その時のものでしょ」
コイツ、という時にそっと肩に触れられた舞美は、アカギからのスキンシップに体を固くしながらも、頷き微笑んだ。
「この深夜にか…?」
「そうです」
「そのタバコは…?」
「……それがやっぱり店開いてなくてね。僕もこんな夜中にムリって言ったんだけど……」
アカギはペラペラと嘘をついた。
「ね、舞美」
「う、うん」
あ、そうか。わたしたち、兄妹って設定か。
舞美はアカギから名前を呼ばれたので、なんだか役得だなぁと思いながらふふふと笑った。