彼は今、どこにいるのだろう。
私はまだ彼を忘れられないでいた。
そう、私が13の頃家に通ってくれていた、あの赤木しげるくんのことだ。

あれから数年が経った。

もう来れない——
そう言い残し、私の前からいなくなってしまってから、もう何年も会っていない。

急にそんなことを言って消えちゃうもんだから、私がその日の夜泣きじゃくったことなんてあなたは知らないでしょ？ 罪な男。

あんなに——幼い私の身体をあんなにしておいていなくなっちゃうなんて、ひどいよ。
私はあなたに初恋をしてたことにようやく気付いたっていうのに。

あの頃の私は何も知らなくて、いわば純粋だったけど、流石にこの歳になるとようやくあれは “病気” なんかじゃなかったことを知る。もちろん、赤木くんのしていたことが “治療” なんかじゃなかったことも。

今考えると、あんなことをしていたのは狂気の沙汰としか思えない。でも、私にとっては幸せだった。もう、１つの思い出みたいになってしまっている。
そんな出来事が本当にあったのか、疑うほどだ。

多分、もう二度と会うことはない。
彼と私は別世界の人間なんだ。
私はそう諦めていた。