無頼な恋
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「次、発展問題」
授業に集中すると、少し難しめの問題が出てきた。元々数学が特に得意というわけではないオレは、結構苦戦する。
「周りの人と話し合っても良いですよー」
……ま、周りの人?
彼女は解けたんだろうか。
オレは隣の東雲を盗み見そうになってしまった。
いやいや、まずは1人で考えてからにするべきだろ。分からないからってすぐ人に頼るようじゃ、まるでダメっ……!
が。
「涯くん」
あのさ……と控えめにオレの名を呼ぶ東雲に、オレは振り向かずにはいられなかった。
「これ解けた……?」
「いや、まだ……」
「私も。難しくて、全然分かんない」
そう言ってノートを見せる彼女。とりあえず問題に取り掛かったものの、あまりそこから切り込めてはいないようだ。
オレは東雲より一歩先を行っていたので、オレもノートを見せる。
「たぶん、最初はこうやってやるんじゃないか……そこから先は、まだ進めてないけど」
「ああ、そっか。ちょっと見せてね」
身を乗り出して、オレのノートに顔を近づける東雲。オレは思わず息を飲む。
東雲は気がついていないかもしれないが、これ、まあまあ至近距離だぞ……。それに、髪の毛からなんか良い匂いが漂ってくる。五感から攻めるなんて、反則だ。
「ありが、」
東雲が礼を言おうと顔を上げる。
その瞬間、目と目が合った。
東雲も驚いたようで、大きな目をさらに真ん丸くして動きを止めている。
か、かわいいけど、近いっ……。
まるで時が止まったかのように思えたその一瞬の間、オレたちは見つめ合っていた。
「……と」
“ありがと”、を言い切ることで再び動き出した、2人の時間。
気がつけば、オレの胸はドキドキと高鳴っている。もう数学どころの話じゃない。
慌てたせいか、問題に戻ろうとして腕で消しゴムを落としてしまい、また焦る。
ど、どこ行った?
オレの動体視力は人より良いはず。こんなことは今までなかったのに。おかしい。異常だ。
オレがきょろきょろ床を見回していると、東雲が腕を伸ばして何かを取った。
少し期待しながら彼女の手のひらを見ると——とっても柔らかそうだ——、オレの消しゴムがそこにちょこんと乗っていた。
東雲が手のひらに乗せるだけで、オレの消しゴムまでかわいく見えてくる。
「あったよ、消しゴム」
「あ……ありがとう」
手を差し出すと、東雲はもう片方の手をオレの手の下に添えて、消しゴムをオレの手のひらに落とした。
「はい。……あっ」
手と手が触れ合い、彼女の肌の柔らかさを直に感じとる。東雲の方もそれに気がついたらしく、オレの骨ばった手を一瞬見つめてからノートへと目をそらした。
オレの顔、赤くないと良いんだけど。
授業に集中すると、少し難しめの問題が出てきた。元々数学が特に得意というわけではないオレは、結構苦戦する。
「周りの人と話し合っても良いですよー」
……ま、周りの人?
彼女は解けたんだろうか。
オレは隣の東雲を盗み見そうになってしまった。
いやいや、まずは1人で考えてからにするべきだろ。分からないからってすぐ人に頼るようじゃ、まるでダメっ……!
が。
「涯くん」
あのさ……と控えめにオレの名を呼ぶ東雲に、オレは振り向かずにはいられなかった。
「これ解けた……?」
「いや、まだ……」
「私も。難しくて、全然分かんない」
そう言ってノートを見せる彼女。とりあえず問題に取り掛かったものの、あまりそこから切り込めてはいないようだ。
オレは東雲より一歩先を行っていたので、オレもノートを見せる。
「たぶん、最初はこうやってやるんじゃないか……そこから先は、まだ進めてないけど」
「ああ、そっか。ちょっと見せてね」
身を乗り出して、オレのノートに顔を近づける東雲。オレは思わず息を飲む。
東雲は気がついていないかもしれないが、これ、まあまあ至近距離だぞ……。それに、髪の毛からなんか良い匂いが漂ってくる。五感から攻めるなんて、反則だ。
「ありが、」
東雲が礼を言おうと顔を上げる。
その瞬間、目と目が合った。
東雲も驚いたようで、大きな目をさらに真ん丸くして動きを止めている。
か、かわいいけど、近いっ……。
まるで時が止まったかのように思えたその一瞬の間、オレたちは見つめ合っていた。
「……と」
“ありがと”、を言い切ることで再び動き出した、2人の時間。
気がつけば、オレの胸はドキドキと高鳴っている。もう数学どころの話じゃない。
慌てたせいか、問題に戻ろうとして腕で消しゴムを落としてしまい、また焦る。
ど、どこ行った?
オレの動体視力は人より良いはず。こんなことは今までなかったのに。おかしい。異常だ。
オレがきょろきょろ床を見回していると、東雲が腕を伸ばして何かを取った。
少し期待しながら彼女の手のひらを見ると——とっても柔らかそうだ——、オレの消しゴムがそこにちょこんと乗っていた。
東雲が手のひらに乗せるだけで、オレの消しゴムまでかわいく見えてくる。
「あったよ、消しゴム」
「あ……ありがとう」
手を差し出すと、東雲はもう片方の手をオレの手の下に添えて、消しゴムをオレの手のひらに落とした。
「はい。……あっ」
手と手が触れ合い、彼女の肌の柔らかさを直に感じとる。東雲の方もそれに気がついたらしく、オレの骨ばった手を一瞬見つめてからノートへと目をそらした。
オレの顔、赤くないと良いんだけど。