無頼な恋
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こうして、三国志を媒介に、オレはなんとか東雲と意思疎通することが可能になった。まあ、男に話すみたいに自然に話せればもっと良いんだけど。
「でも、これ読んでる人に今まで会ったことなかったから、嬉しい」
「あ、ああ……オレも。東雲が初めて」
いつの間にか授業が始まっていたが、オレと東雲はヒソヒソと小声で話し続けた。こんなに女子と話したことは、今まで一度もない。
が、
「じゃあ、問5を……東雲!」
「……えっ」
雑談中に、東雲が当てられてしまった。
オレと話していたから、もちろん東雲は解けていない。これはオレの責任か。
「ん? 復習問題だぞ」
そんな意地悪を言って焦らせる教師にガンを飛ばした後、その問5とやらを急いで見てみると、まあ確かに簡単な問題ではあった。しかし、東雲は突然のことに焦ってしまって、その場で立ったまま冷や汗をかいている。
「ぁ、えっと」
わかりません、と東雲が答える前に、オレはこそっと囁いた。
「y=9x+10」
東雲の動きがぴたっと止まる。
どうやら聞こえたようだ。
あとはオレを信じてくれれば良い。
彼女はおそるおそる、口を開いた。
「わ、わいイコール、きゅーエックス、たす、じゅー」
「そう。正解」
教師が黒板に答えを書き、解説をし始める。東雲はほっとした顔で席についた。
ああ良かった、とオレも安堵する。もう少しで東雲に恥をかかせるところだった。
「涯くん、ありがと」
ほっとしていたところを不意打ちで名前を呼ばれ、オレは驚いた。涯……って。
あまり話したことがなかったのに、どうしてオレを下の名前で呼ぶんだ⁈
「あ、ごめん」
東雲は照れくさそうに笑う。
まるで心を読まれているかのようだ。
「このクラス、もう1人工藤くんがいるからさ。でも、ちょっと馴れ馴れしかったかも……」
「そういうことか……」
オレの名前を呼んだのは、もう少し、何か……別の意味があって、というわけではなかった。が、それにしてもこれは幸運だ。もう1人工藤がいるからこそ、オレは下の名前も覚えてもらえていたんだから。
「別に、涯でいい」
「ほんと? よかった」
よかったのは、オレの方だ。
ちなみに、東雲はそのあと、
「じゃあ、わたしのことも……」
と口走ったようだが、オレが首を傾げたのを見て、「やっぱり、なんでもない」と手を振ってしまった。
彼女、まだオレのことがこわいのかもしれない……。
「でも、これ読んでる人に今まで会ったことなかったから、嬉しい」
「あ、ああ……オレも。東雲が初めて」
いつの間にか授業が始まっていたが、オレと東雲はヒソヒソと小声で話し続けた。こんなに女子と話したことは、今まで一度もない。
が、
「じゃあ、問5を……東雲!」
「……えっ」
雑談中に、東雲が当てられてしまった。
オレと話していたから、もちろん東雲は解けていない。これはオレの責任か。
「ん? 復習問題だぞ」
そんな意地悪を言って焦らせる教師にガンを飛ばした後、その問5とやらを急いで見てみると、まあ確かに簡単な問題ではあった。しかし、東雲は突然のことに焦ってしまって、その場で立ったまま冷や汗をかいている。
「ぁ、えっと」
わかりません、と東雲が答える前に、オレはこそっと囁いた。
「y=9x+10」
東雲の動きがぴたっと止まる。
どうやら聞こえたようだ。
あとはオレを信じてくれれば良い。
彼女はおそるおそる、口を開いた。
「わ、わいイコール、きゅーエックス、たす、じゅー」
「そう。正解」
教師が黒板に答えを書き、解説をし始める。東雲はほっとした顔で席についた。
ああ良かった、とオレも安堵する。もう少しで東雲に恥をかかせるところだった。
「涯くん、ありがと」
ほっとしていたところを不意打ちで名前を呼ばれ、オレは驚いた。涯……って。
あまり話したことがなかったのに、どうしてオレを下の名前で呼ぶんだ⁈
「あ、ごめん」
東雲は照れくさそうに笑う。
まるで心を読まれているかのようだ。
「このクラス、もう1人工藤くんがいるからさ。でも、ちょっと馴れ馴れしかったかも……」
「そういうことか……」
オレの名前を呼んだのは、もう少し、何か……別の意味があって、というわけではなかった。が、それにしてもこれは幸運だ。もう1人工藤がいるからこそ、オレは下の名前も覚えてもらえていたんだから。
「別に、涯でいい」
「ほんと? よかった」
よかったのは、オレの方だ。
ちなみに、東雲はそのあと、
「じゃあ、わたしのことも……」
と口走ったようだが、オレが首を傾げたのを見て、「やっぱり、なんでもない」と手を振ってしまった。
彼女、まだオレのことがこわいのかもしれない……。