「ん！」

目が覚めると、赤木さんが目の前で寝ていた。

「ひゃ」

嘘みたい。

でも、昨日のことを思い出しても、赤木さんと一線を越えた訳ではなさそうだし、まだ私たちは、健全な関係ということだよね。
もちろん、赤木さんは私のことをなんとも思っていないだろうけど。

私は、赤木さんの顔をそっと見つめた。
くうくうと寝息を立てているものの、そんな姿でさえも、とても格好良くて。もう、どうしてこんなに私のタイプなんですか。この人は。

そもそも私、布団で寝てたはずなのに、ベッドの上にいるってことは、赤木さんが運んでくれたってこと？ ……寝顔見られてたなんて、恥ずかしい。

それより、今のうちに朝風呂に入っておこう。
赤木さんの起きない内に。

＊＊＊

そして、身体を綺麗にして、赤木さんの元に戻ると、彼は、どこにもいなくなっていた。
まるで、初めからそんな人いなかったみたいに、消えてしまった。

残念な気持ちと、やっぱり、みたいな気持ちが交差する。彼はあまりにも自由人だ。

これでもう、終わりなの？
赤木さんは、本当に宿が欲しかっただけ。
そりゃ、私みたいな女には興味ないよね。
分かっていても、少しさみしい。

赤木さんの残していった吸い殻をじっと見る。
また、会えると良いんだけど。