大きな柳の木の下で
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Epilogue
舞美の一日が終わろうとしている。
ほとんどの客が帰ったし、今日は閉店か。
片付けをしようとして舞美は目を伏せた。
いや、本当なら、この時間は……。
舞美が物思いに更けようとした時。
どこかで、にゃあと猫の鳴き声がした。
きょろきょろと店を見回すと、入り口から、白猫がしゃなりと入ってきたようだった。
「……白」
ちょうど、彼と出会ったのはこんな風だったか。
あれから一度も姿を見ていない。
ああ、彼は麻雀に殺されてしまったのか。
もしかすると、この猫は、彼の生まれ変わりだったり。案外、そうかもしれない。
舞美は無性に悲しくなって、その猫にそろりと近づき、拒絶されないことを確認すると、そっと抱いて涙を零した。
「アカギさん……!」
どうして皆、勝手に逝ってしまうのか。
行き場のない怒りと悲しみを猫に込める。
帰ってくると、そう言ったではないか。
風のように消えてしまうものだから。
「——なにしてんの」
アカギのその声を、聞きたかった。今はもう、それを聞くことさえ……。
——いや、幻聴にしては鮮明だ。
ふと顔を上げると、そこには白髪の青年が立っていた。あの日と変わらない、彼が。
「あ、アカギさんっ……⁉︎」
白猫を手放し、よろよろと立ち上がると、舞美はアカギの元へ駆けた。
「ほんもの……」
アカギの頰に手を当て、存在を確認する。
冷たい体温が、あたたかい。
本物に決まっているだろう、と言いかけたアカギは、平山幸雄を思い浮かべて、その言葉を飲み込んだ。
舞美は、遅かっただの、何をしていたのかだの、言いたい文句がたくさん思い浮かんだ。しかし、そんなことは後。
ここは舞美の店だった。
舞美は、アカギに柔らかく笑いかけた。
「いらっしゃいませ」
アカギは、そんな舞美の髪飾りに触れて、言った。
「ただいま、舞美さん。」
柳の花言葉…愛の悲しみ,独身主義,悲哀,従順
——そして、自由。
「おかえりなさい。」
今度こそ、もう離れない。
大きな柳 の木の下で〈完〉
舞美の一日が終わろうとしている。
ほとんどの客が帰ったし、今日は閉店か。
片付けをしようとして舞美は目を伏せた。
いや、本当なら、この時間は……。
舞美が物思いに更けようとした時。
どこかで、にゃあと猫の鳴き声がした。
きょろきょろと店を見回すと、入り口から、白猫がしゃなりと入ってきたようだった。
「……白」
ちょうど、彼と出会ったのはこんな風だったか。
あれから一度も姿を見ていない。
ああ、彼は麻雀に殺されてしまったのか。
もしかすると、この猫は、彼の生まれ変わりだったり。案外、そうかもしれない。
舞美は無性に悲しくなって、その猫にそろりと近づき、拒絶されないことを確認すると、そっと抱いて涙を零した。
「アカギさん……!」
どうして皆、勝手に逝ってしまうのか。
行き場のない怒りと悲しみを猫に込める。
帰ってくると、そう言ったではないか。
風のように消えてしまうものだから。
「——なにしてんの」
アカギのその声を、聞きたかった。今はもう、それを聞くことさえ……。
——いや、幻聴にしては鮮明だ。
ふと顔を上げると、そこには白髪の青年が立っていた。あの日と変わらない、彼が。
「あ、アカギさんっ……⁉︎」
白猫を手放し、よろよろと立ち上がると、舞美はアカギの元へ駆けた。
「ほんもの……」
アカギの頰に手を当て、存在を確認する。
冷たい体温が、あたたかい。
本物に決まっているだろう、と言いかけたアカギは、平山幸雄を思い浮かべて、その言葉を飲み込んだ。
舞美は、遅かっただの、何をしていたのかだの、言いたい文句がたくさん思い浮かんだ。しかし、そんなことは後。
ここは舞美の店だった。
舞美は、アカギに柔らかく笑いかけた。
「いらっしゃいませ」
アカギは、そんな舞美の髪飾りに触れて、言った。
「ただいま、舞美さん。」
柳の花言葉…愛の悲しみ,独身主義,悲哀,従順
——そして、自由。
「おかえりなさい。」
今度こそ、もう離れない。
大きな
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