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狂気、爛漫。
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カツン。
女物の靴独特の音を響かせ、その妖 ——天使の皮を被った悪魔は、人間界に降り立った。
彼女は足を止め、口元を緩ませる。
着いたのはとある雀荘であった。
さて、此処ではどんな事が起こるのかしら。
何か面白い事でもあれば良いのだけれど。
肩に掛かった髪をぱさりと払い、世にも珍しいプラチナブロンドを輝かせると、躊躇うことなくその場へ踏み込んでいく。この髪色は母親の血によるもので、彼女のトレードマークとも言えた。
再び踵の下でヒールが心地の良い音を立て始めるのを聞いて、少女はゆっくりと口角を上げる。
特別大した雀荘ではないが、それでもここまで来るのに一苦労はした。
まったく。手を焼かせるのよね、と先ほどまでの情景を思い出し息を吐く。
いくらあの父のお申し付けと言えど、そこまで束縛することないじゃない。私だってたまには1人で外に出たいの。
それにしても。
彼らが単純で助かった。
桃が食べたいの、なんて言ってみせるだけで、「すぐに準備します」って私から目を離すんだから。まさか逃げ出すとは思わなかったんでしょう。白服の彼らには、私が大好物の桃を食べずに屋敷を出るなんてこと、予想できないだろうから。
……まあ、少し惜しいことをしたとは思うけれど。
いいえ、なんてことない。帰宅したらまたあの桃のコンポートを頼めば良いだけのことだわ。
それより、今は。
この雀荘探索をしなくては。
「ごきげんよう」
声を上げ、優雅な動きでさらに奥へ入る。
たまたまこちらを振り返った男は、それっきり、視線を外さないまま動きを止めた。
彼のように固まった男は他にもいる。
こうなることは必然だった。そこにいるだけでその場の目線を独り占めするのが、この女の生まれながらにして手にした特権だったから。
彼女は、常人とは何もかもがかけ離れている。
ぱっちりとした、水晶の如く大きな目。
それを縁取る烟るような長い睫毛さえも気高さを称えている。
しかし顔立ちにはあどけなさが残っており、それがまたどうにも危険に思える。
「さて、どうしましょうかしらね」
普段なら、この年齢の女は雀荘から追い出されることだろう。しかし、雀荘の店主は彼女を一目を見、すぐにこの “お嬢様” には逆らわない方が吉であると判断したようだ。
明らかに一般人とは違う容貌。
雀荘にチャイナドレス風ワンピースを着てくるなど、前代未聞だ。あの有名な朱色のものではなく、上品な珊瑚色に染められている。繊細な白牡丹の刺繍を見れば、身につけているものが高価なものであるというのは自明だった。
そんな中、彼女は雀荘の中を見渡し——そしてある人物を見て、微かに目を見開いた。
そして息を呑んだ。
彼女は紛れもなく、驚いていた。
今まで、自分は他人を驚かす方、あるいは翻弄する側だったはずなのだ。それなのにまさか、他人にこんな形で驚かされることになるとは思わなかった。
とにかく、目を奪われた。
魅了する側のはずの彼女が、烏合の衆の、たった一個人に目を向けた初めての瞬間である。
舞美が釘付けになった相手、その男は、ゆっくりとこちらへ視線を合わせてきた。
女物の靴独特の音を響かせ、その
彼女は足を止め、口元を緩ませる。
着いたのはとある雀荘であった。
さて、此処ではどんな事が起こるのかしら。
何か面白い事でもあれば良いのだけれど。
肩に掛かった髪をぱさりと払い、世にも珍しいプラチナブロンドを輝かせると、躊躇うことなくその場へ踏み込んでいく。この髪色は母親の血によるもので、彼女のトレードマークとも言えた。
再び踵の下でヒールが心地の良い音を立て始めるのを聞いて、少女はゆっくりと口角を上げる。
特別大した雀荘ではないが、それでもここまで来るのに一苦労はした。
まったく。手を焼かせるのよね、と先ほどまでの情景を思い出し息を吐く。
いくらあの父のお申し付けと言えど、そこまで束縛することないじゃない。私だってたまには1人で外に出たいの。
それにしても。
彼らが単純で助かった。
桃が食べたいの、なんて言ってみせるだけで、「すぐに準備します」って私から目を離すんだから。まさか逃げ出すとは思わなかったんでしょう。白服の彼らには、私が大好物の桃を食べずに屋敷を出るなんてこと、予想できないだろうから。
……まあ、少し惜しいことをしたとは思うけれど。
いいえ、なんてことない。帰宅したらまたあの桃のコンポートを頼めば良いだけのことだわ。
それより、今は。
この雀荘探索をしなくては。
「ごきげんよう」
声を上げ、優雅な動きでさらに奥へ入る。
たまたまこちらを振り返った男は、それっきり、視線を外さないまま動きを止めた。
彼のように固まった男は他にもいる。
こうなることは必然だった。そこにいるだけでその場の目線を独り占めするのが、この女の生まれながらにして手にした特権だったから。
彼女は、常人とは何もかもがかけ離れている。
ぱっちりとした、水晶の如く大きな目。
それを縁取る烟るような長い睫毛さえも気高さを称えている。
しかし顔立ちにはあどけなさが残っており、それがまたどうにも危険に思える。
「さて、どうしましょうかしらね」
普段なら、この年齢の女は雀荘から追い出されることだろう。しかし、雀荘の店主は彼女を一目を見、すぐにこの “お嬢様” には逆らわない方が吉であると判断したようだ。
明らかに一般人とは違う容貌。
雀荘にチャイナドレス風ワンピースを着てくるなど、前代未聞だ。あの有名な朱色のものではなく、上品な珊瑚色に染められている。繊細な白牡丹の刺繍を見れば、身につけているものが高価なものであるというのは自明だった。
そんな中、彼女は雀荘の中を見渡し——そしてある人物を見て、微かに目を見開いた。
そして息を呑んだ。
彼女は紛れもなく、驚いていた。
今まで、自分は他人を驚かす方、あるいは翻弄する側だったはずなのだ。それなのにまさか、他人にこんな形で驚かされることになるとは思わなかった。
とにかく、目を奪われた。
魅了する側のはずの彼女が、烏合の衆の、たった一個人に目を向けた初めての瞬間である。
舞美が釘付けになった相手、その男は、ゆっくりとこちらへ視線を合わせてきた。
