「うちで、良ければ——」


＊＊＊

これが最初の、彼との出会いだった。

結局、この日だけの付き合いのようなもの。
もちろん深い関係にはならなかった。
結局、私はただ、お風呂場と寝室を用意しただけ。
別に、何か起こると期待してた訳じゃないけど……。

というのも、翌日目を覚ますと彼はもういなかったから。……何故か数日後、ポストに大金が入っていたんだけど、十中八九彼だと思う。

「はぁ」

また会えないかな、と私は窓の外と睨めっこをして暇を潰す。雨が降っているからと、試しに外に出てもなんの成果もない。そもそも、あの人のことは名前しか知らないのに。

モヤモヤしながら、「赤木しげる」を思い浮かべる私。今、あなたは何をしているの？
別の女の人のところへ泊めてもらっているのかな。

って。

こんなんじゃ私……まるで、恋してるみたいだ。