10.嫉妬
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私はその傷跡に手を伸ばした。大きな切り傷みたいだ。まるで刀で斬られたよう。
好奇心を抑えられず、私がそこに触れると、アカギはぴくりと身体を動かした。
「ご、ごめんなさい」
触られたくない場所だったかもしれない。うかつだった、急に古傷に触るなんて。私は自分の軽率さを悔やんだ。
「いいよ、別に」
案外、アカギは寛容だった。私は胸を撫で下ろし、思い切って傷の由来を聞いてみた。
「これね。割と最近なんだぜ」
「へぇ……」
「ヤーさんの開いてた賭場で命を張った時の」
「命を? どうしてヤクザと?」
「クク……奴ら、丁の目が出ているサイを、半だと言い張ったのさ」
「なるほど」
私は悟った。
「あなた、勝ちすぎたのね」
「まぁ、そういうこと。それが気に入らなかったんでしょ。全額を乗せた最後の勝負で、あろうことか、倉田組は博打の目を捻じ曲げようとしやがった」
「お得意の脅迫か」
「うん。首に刀を当てられたよ」
「え! それで、どうしたの?」
「オレはただ、出た目を言った。丁だ、と」
「……そうだと思った。でも、流石。それで、斬られたの?」
「うん。それでもオレは丁だと言い続けた」
「よく生きて帰ってこれたわね……」
「ちょうど知り合いがオレに野暮用だった。その人が、サイの目を消したんだ。オレはその後病院に運ばれたけどね」
「そうだったの。とにかく無事で良かった」
私が言うと、アカギは顔を横にして私を見た。
「オレが無事で良かった?」
「……うん。だって私、あなたみたいな人を他に知らないの。アカギがいなきゃ、つまらない」
「そう。ま、そういう意味じゃオレもあんたが無事で良かったよ」
「ありがとう」
私はアカギの傷をそっと撫でた。アカギが自分の意志を曲げなかった証。本物の博打打ちだからこそ負った怪我。ここから紅い血が流れ出たのかと思うと、この傷さえ美しい。
「そんなに気に入った?」
「……うん」
私は照れを隠すようにその肩を揉んだ。
「東雲ぐらいだよ。その傷を見て嬉しそうなのは」
「え、嬉しそうに見える?」
私は少し考えてから言った。
「でも、確かに嬉しいかも。怪我というのは良くないかもしれないけど……、でもこれは、アカギがアカギである証拠だから」
それを聞いたアカギは少し驚いていた。
「……やっぱり、東雲は他のやつとは違う。オレがずっと探してたのは、あんたかもしれない」
好奇心を抑えられず、私がそこに触れると、アカギはぴくりと身体を動かした。
「ご、ごめんなさい」
触られたくない場所だったかもしれない。うかつだった、急に古傷に触るなんて。私は自分の軽率さを悔やんだ。
「いいよ、別に」
案外、アカギは寛容だった。私は胸を撫で下ろし、思い切って傷の由来を聞いてみた。
「これね。割と最近なんだぜ」
「へぇ……」
「ヤーさんの開いてた賭場で命を張った時の」
「命を? どうしてヤクザと?」
「クク……奴ら、丁の目が出ているサイを、半だと言い張ったのさ」
「なるほど」
私は悟った。
「あなた、勝ちすぎたのね」
「まぁ、そういうこと。それが気に入らなかったんでしょ。全額を乗せた最後の勝負で、あろうことか、倉田組は博打の目を捻じ曲げようとしやがった」
「お得意の脅迫か」
「うん。首に刀を当てられたよ」
「え! それで、どうしたの?」
「オレはただ、出た目を言った。丁だ、と」
「……そうだと思った。でも、流石。それで、斬られたの?」
「うん。それでもオレは丁だと言い続けた」
「よく生きて帰ってこれたわね……」
「ちょうど知り合いがオレに野暮用だった。その人が、サイの目を消したんだ。オレはその後病院に運ばれたけどね」
「そうだったの。とにかく無事で良かった」
私が言うと、アカギは顔を横にして私を見た。
「オレが無事で良かった?」
「……うん。だって私、あなたみたいな人を他に知らないの。アカギがいなきゃ、つまらない」
「そう。ま、そういう意味じゃオレもあんたが無事で良かったよ」
「ありがとう」
私はアカギの傷をそっと撫でた。アカギが自分の意志を曲げなかった証。本物の博打打ちだからこそ負った怪我。ここから紅い血が流れ出たのかと思うと、この傷さえ美しい。
「そんなに気に入った?」
「……うん」
私は照れを隠すようにその肩を揉んだ。
「東雲ぐらいだよ。その傷を見て嬉しそうなのは」
「え、嬉しそうに見える?」
私は少し考えてから言った。
「でも、確かに嬉しいかも。怪我というのは良くないかもしれないけど……、でもこれは、アカギがアカギである証拠だから」
それを聞いたアカギは少し驚いていた。
「……やっぱり、東雲は他のやつとは違う。オレがずっと探してたのは、あんたかもしれない」