1.出会い
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
これは石川にとって予想外の発言だった。
「でもお前、さっき『何それ。』って。」
「言った」
「無理してるんだろ?」
「まさか。私は、何それ最高、って思っただけだもん」
「……本気か?」
「当たり前。私だって彼と勝負したいの。まぁ、私の予想では初っ端から腕を賭けてこい、なんてアカギは言わないだろうけど」
「まぁ、一理あるが……。」
石川には舞美がアカギを打ち負かすことなどないと感じていた。
彼はアカギの闘牌をその目に焼き付けている。目の前の娘があの天才に敵うはずなどない。組長はアカギが女に対してどう出るのか楽しみにしているかもしれないが、例え相手が女でも、勝負相手となれば容赦はしないはずだ。腕を賭けなくとも、借金まみれになってしまう。
そう考えると、東雲に勝負を促すのは得策でないように思えた。
「じゃあ、許容額は……」
「そんなものないって言ってるでしょ」
「しかし、」
「私の心配をしてるの? 勝手に負けるなんて決めつけないで。それに、もし借金にまみれても平気だから。今までと同じように荒稼ぎするだけ。恐がることなんてないよ」
一方舞美は、この状況に感謝していた。
さっきの雀荘で、赤木しげると打つのは今じゃない、と感じたあれは正しかったのだ。
「私、意見を変えるつもりはないからね。だから組長さんにそう報告してよ。」
「本当に良いんだな?」
「うん。」
石川は、もうどうにでもなれ、という気持ちがありながら、やはりアカギと東雲の勝負を楽しみにしている自分がいることに気付いた。
案外、アカギは苦戦するかもしれないな、などと空想を膨らます。あとはアカギと連絡が取れれば、この空想は現実のものとなるのだ。
確かに、組長がこの勝負を望む理由も分かる。
「分かった。」
とうとう、石川は承諾した。
いや、元々石川が持ってきた話なのだが。
「では、勝負が成立し、場所や日取りが決まればまた連絡する。お前のことだから、また夜に賭場を歩いていたら見つかるだろう」
「多分。」
「ああ。引き留めて悪かったな」
「全然。こんな良い話を持ってきてくれてありがとう。」
「……逃げるなよ?」
「当たり前」
「聞いてみただけだよ。じゃあな」
そう言って石川は建物の影に入り、見えなくなった。舞美も、また月の下を歩きだす。
川田組には感謝しなきゃな、と思い、無意識に口元が上がる。ようやく、あの赤木しげると打てるのだ。
「楽しみ」
静かに、だが確実に舞美とアカギの運命は交わり始める。
足元に広がる舞美の影には、9つに裂けた尾が生えていた。
1.出会い〈完〉
「でもお前、さっき『何それ。』って。」
「言った」
「無理してるんだろ?」
「まさか。私は、何それ最高、って思っただけだもん」
「……本気か?」
「当たり前。私だって彼と勝負したいの。まぁ、私の予想では初っ端から腕を賭けてこい、なんてアカギは言わないだろうけど」
「まぁ、一理あるが……。」
石川には舞美がアカギを打ち負かすことなどないと感じていた。
彼はアカギの闘牌をその目に焼き付けている。目の前の娘があの天才に敵うはずなどない。組長はアカギが女に対してどう出るのか楽しみにしているかもしれないが、例え相手が女でも、勝負相手となれば容赦はしないはずだ。腕を賭けなくとも、借金まみれになってしまう。
そう考えると、東雲に勝負を促すのは得策でないように思えた。
「じゃあ、許容額は……」
「そんなものないって言ってるでしょ」
「しかし、」
「私の心配をしてるの? 勝手に負けるなんて決めつけないで。それに、もし借金にまみれても平気だから。今までと同じように荒稼ぎするだけ。恐がることなんてないよ」
一方舞美は、この状況に感謝していた。
さっきの雀荘で、赤木しげると打つのは今じゃない、と感じたあれは正しかったのだ。
「私、意見を変えるつもりはないからね。だから組長さんにそう報告してよ。」
「本当に良いんだな?」
「うん。」
石川は、もうどうにでもなれ、という気持ちがありながら、やはりアカギと東雲の勝負を楽しみにしている自分がいることに気付いた。
案外、アカギは苦戦するかもしれないな、などと空想を膨らます。あとはアカギと連絡が取れれば、この空想は現実のものとなるのだ。
確かに、組長がこの勝負を望む理由も分かる。
「分かった。」
とうとう、石川は承諾した。
いや、元々石川が持ってきた話なのだが。
「では、勝負が成立し、場所や日取りが決まればまた連絡する。お前のことだから、また夜に賭場を歩いていたら見つかるだろう」
「多分。」
「ああ。引き留めて悪かったな」
「全然。こんな良い話を持ってきてくれてありがとう。」
「……逃げるなよ?」
「当たり前」
「聞いてみただけだよ。じゃあな」
そう言って石川は建物の影に入り、見えなくなった。舞美も、また月の下を歩きだす。
川田組には感謝しなきゃな、と思い、無意識に口元が上がる。ようやく、あの赤木しげると打てるのだ。
「楽しみ」
静かに、だが確実に舞美とアカギの運命は交わり始める。
足元に広がる舞美の影には、9つに裂けた尾が生えていた。
1.出会い〈完〉