朝帰り、というものだろうか。
アカギは、早朝に帰ってきたかと思うと、何も言わず倒れるように眠った。

私はその物音で目が覚めた。賭場に行っていたのだろうか。……だったら、私を連れて行ってくれても良いのにな。それとも、女は真剣勝負の邪魔だったとか？

私は寝ているアカギを起こさぬよう、彼を観察した。大金を持って帰ってきたようなわけでもないし、怪我もしていないようだ。

綺麗な顔。
……ああ、ダメダメ。この人を見ていると、変な気を起こしそう。

私が彼の顔から目を逸らそうとすると、別のことに気がついた。
首につけた跡が、２つに増えている。
え？
でも、私が付けた跡は、１つだった。
出て行くまでは、１つだったはず。

どうして？

——どうして、他の女のところに。

帰ってきてすぐに眠ったのも、私を連れて行かなかったことも、全部合点がいく。そして、この新しい跡と、女物の独特な匂い。
答えは１つしか考えられない。


私は、思わず家を飛び出した。
自分の感情に戸惑いながら。


朝ご飯を作らなかったのは、これが初めてのこと。