9.一組の
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私はなんとか平常心を取り戻すため、目の前の対局に集中した。まずは、アカギの打牌からだ。その間、私はアカギの膝のうえで大人しくしている。我ながら、借りてきた猫のようだ。
五巡打った後、私に交代となる。とは言え、アカギもまだ破天荒な打ち方をしているわけではない。私もそれに合わせて、ごく普通の打ち回しをする。そしてどちらかというと、対局相手に集中する。
でも、やっぱり私たちの敵ではない。他の3人が通しをしたところで、私たちを上回るわけではないのだ。3人の中でトップを取りたければ、誰か1人を押し上げる必要がある。私たちは、単にそいつを潰すだけ。
それに、鳴かせ方で大体手牌が読めるのだから、こっちに不利というわけでもない。何故なら、こちらにも2人いて、互いに考察をし、互いの打ち方で相手の考えを汲み取れるのだから。
だから私は、麻雀のことよりも、やはり、アカギのことを意識してしまうのだった。
「ポン」
相手の鳴きに対応して、アカギが仕掛けた。
彼の声がすぐ隣から直に耳へ聞こえるもんだから、私はとろけてしまいそうになる。
そして、相手の捨てた牌を拾う際に、アカギが少し身を乗り出した。心地いい重さが背中にのしかかる。私を膝に乗せているのだから、必然的に密着する形になっているのだ。
あ、私の背中にアカギのお腹がくっついて、まるで本当に後ろから抱きつかれているみたい。
「ち、近い」
「嫌?」
「……嫌とかじゃないけど」
「ならいいでしょ。仕方ないんだから」
仕方ない。つまり、これは単に麻雀のためだけの姿勢ということか。はぁ、何か損した気分。
いやいや、何よ、これくらい。こんなに揺らいでちゃ、アカギとの勝負にも負けちゃうよ。
私はじっと雀卓を見た。すると、アカギが手で、つん と私のお腹を突いた。
何?
と、聞こうとしたが、上家の捨てた牌を見てすぐにピンときた。鳴けってことね。なるほど、ここを鳴けば、相手から逆にロン牌を吐き出させやすい盤面になるかも。見方によれば。
「チー」
つまり引っかけるには、こっちを切れば良いってことね。
私はアカギの思惑に沿うように牌を切った。
すると、
「正解」
と、耳元で囁かれた。
私は熱くなった。
「おい、何をこそこそ喋ってる」
「別に。ただ、褒めただけ」
対局相手はそれを聞いて、舌打ちした。
私が思っていたような初心者ではなくてイラついているようだ。しかし、少し考えてみれば、このアカギの、私への褒め言葉も、相手を討ち取る罠なのだ。
一見普通はしないこの “鳴き” を、何故かアカギが褒めている。その情報が、相手を別の思考に導き、求めていた牌を捨てさせる。
それに、相手からすれば、初心者でないことが分かっても、私の実力が見えてこない。それも不安要素として確定してくる。
アカギは心理戦でも優位に立つ。だからこそ、私たちが勝つことは簡単だった。
しかし、気のせいだろうか。
普段より、アカギの鳴きが多かった気がする……
五巡打った後、私に交代となる。とは言え、アカギもまだ破天荒な打ち方をしているわけではない。私もそれに合わせて、ごく普通の打ち回しをする。そしてどちらかというと、対局相手に集中する。
でも、やっぱり私たちの敵ではない。他の3人が通しをしたところで、私たちを上回るわけではないのだ。3人の中でトップを取りたければ、誰か1人を押し上げる必要がある。私たちは、単にそいつを潰すだけ。
それに、鳴かせ方で大体手牌が読めるのだから、こっちに不利というわけでもない。何故なら、こちらにも2人いて、互いに考察をし、互いの打ち方で相手の考えを汲み取れるのだから。
だから私は、麻雀のことよりも、やはり、アカギのことを意識してしまうのだった。
「ポン」
相手の鳴きに対応して、アカギが仕掛けた。
彼の声がすぐ隣から直に耳へ聞こえるもんだから、私はとろけてしまいそうになる。
そして、相手の捨てた牌を拾う際に、アカギが少し身を乗り出した。心地いい重さが背中にのしかかる。私を膝に乗せているのだから、必然的に密着する形になっているのだ。
あ、私の背中にアカギのお腹がくっついて、まるで本当に後ろから抱きつかれているみたい。
「ち、近い」
「嫌?」
「……嫌とかじゃないけど」
「ならいいでしょ。仕方ないんだから」
仕方ない。つまり、これは単に麻雀のためだけの姿勢ということか。はぁ、何か損した気分。
いやいや、何よ、これくらい。こんなに揺らいでちゃ、アカギとの勝負にも負けちゃうよ。
私はじっと雀卓を見た。すると、アカギが手で、つん と私のお腹を突いた。
何?
と、聞こうとしたが、上家の捨てた牌を見てすぐにピンときた。鳴けってことね。なるほど、ここを鳴けば、相手から逆にロン牌を吐き出させやすい盤面になるかも。見方によれば。
「チー」
つまり引っかけるには、こっちを切れば良いってことね。
私はアカギの思惑に沿うように牌を切った。
すると、
「正解」
と、耳元で囁かれた。
私は熱くなった。
「おい、何をこそこそ喋ってる」
「別に。ただ、褒めただけ」
対局相手はそれを聞いて、舌打ちした。
私が思っていたような初心者ではなくてイラついているようだ。しかし、少し考えてみれば、このアカギの、私への褒め言葉も、相手を討ち取る罠なのだ。
一見普通はしないこの “鳴き” を、何故かアカギが褒めている。その情報が、相手を別の思考に導き、求めていた牌を捨てさせる。
それに、相手からすれば、初心者でないことが分かっても、私の実力が見えてこない。それも不安要素として確定してくる。
アカギは心理戦でも優位に立つ。だからこそ、私たちが勝つことは簡単だった。
しかし、気のせいだろうか。
普段より、アカギの鳴きが多かった気がする……