9.一組の
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食べて飲んで、しかしどちらも酔ってはいない。私はそんなに飲んでいないから当然だが、アカギについては、流石と言える。これだけ飲んで酔わないとは。
「そろそろ出ようか」
満腹になった私はこくりと頷く。アカギはまだ飲めそうだし、食べられそうに見えるけど、もう十分みたいだ。
「先、出てて」
言われた通りに店を出ると、アカギが慣れた手つきで金を出し、釣りは要らない、といった風に支払いを済ませているのが外から見えた。
店を出たアカギが私の隣に立つ。
「ご馳走様でした」
「いいよ、そんなこと」
アカギは会計を気にする素ぶりもなく言った。
「で、他に行きたい場所ある?」
私は顎に手を当てて考えた。うーん、そこまで行きたい場所というのはない。賭場はこんな昼間に開いていないし……。
「無いんなら、オレは散歩でもするけど」
「じゃあ、ご一緒しても? 私も散歩好きだから」
「もちろん」
アカギは私の歩みに合わせて歩き出した。
この辺は歩いたことがないから、楽しい。
しばらく家に向かってテクテクと進むと、アカギが周りを見渡してから、
「ちょっと、煙草買ってくる」
と煙草売り場へ行ってしまった。
その場で私が待っていると、
「あのっ」
と、聞き覚えのある声がした。
振り向くと、
「やっぱり東雲さんだ」
見慣れた顔が。
「治さん⁈」
「お久しぶりですね」
「ねぇ、ほんとに」
勝負の日以来だ。
「今も、アカギさんと一緒にいるんですか」
「ええと、まぁ、そうです」
「そ、そっかあ」
治さんは頭をかき、少し後ろを気にする素ぶりをしてから、意を決したように、私に尋ねた。
「アカギさんと住んでて……その、色々あったりしないんですかね」
「というと?」
「例えば、その……好きになっちゃったりってことは?」
「え、好きに……?」
私は動揺しないように表情を抑えてから、ふるふると首を振った。
「いや、まだ、そういうのはないかなぁ」
「そ、そうですか!」
「うん、負けるわけにもいかないし……」
「え?」
「ああ、こっちの話よ。ちょっと勝負していて」
「へええ」
治さんに説明をすると、目を見開いていた。こういうところも、変わらない。
しばらく立ち話をしていると、
「あ、じゃあそろそろ行きますね」
と、治さんは何か思い出したように言った。
「東雲さん。その、もし良ければ、」
「ん?」
「……なんでもないです。じゃあまた」
「え、ああ。またね」
治さんは、来た方向へ帰っていった。
何か歯切れの悪い感じだったな。治さんはとっくに私への興味を失くしたと思っていたけれど、そうでもないのかな? 私がアカギのことを好きかどうか聞いてくるなんて。……焦るよ。
少しして、治さんがいなくなった方向からアカギが戻ってきた。煙草を一本咥えて。
「今、治さんに会わなかった?」
「ん。会わなかったけど。いたの?」
「うん、たった今まで話してた」
「へえ。何か言ってた?」
「ううん、別に」
「そろそろ出ようか」
満腹になった私はこくりと頷く。アカギはまだ飲めそうだし、食べられそうに見えるけど、もう十分みたいだ。
「先、出てて」
言われた通りに店を出ると、アカギが慣れた手つきで金を出し、釣りは要らない、といった風に支払いを済ませているのが外から見えた。
店を出たアカギが私の隣に立つ。
「ご馳走様でした」
「いいよ、そんなこと」
アカギは会計を気にする素ぶりもなく言った。
「で、他に行きたい場所ある?」
私は顎に手を当てて考えた。うーん、そこまで行きたい場所というのはない。賭場はこんな昼間に開いていないし……。
「無いんなら、オレは散歩でもするけど」
「じゃあ、ご一緒しても? 私も散歩好きだから」
「もちろん」
アカギは私の歩みに合わせて歩き出した。
この辺は歩いたことがないから、楽しい。
しばらく家に向かってテクテクと進むと、アカギが周りを見渡してから、
「ちょっと、煙草買ってくる」
と煙草売り場へ行ってしまった。
その場で私が待っていると、
「あのっ」
と、聞き覚えのある声がした。
振り向くと、
「やっぱり東雲さんだ」
見慣れた顔が。
「治さん⁈」
「お久しぶりですね」
「ねぇ、ほんとに」
勝負の日以来だ。
「今も、アカギさんと一緒にいるんですか」
「ええと、まぁ、そうです」
「そ、そっかあ」
治さんは頭をかき、少し後ろを気にする素ぶりをしてから、意を決したように、私に尋ねた。
「アカギさんと住んでて……その、色々あったりしないんですかね」
「というと?」
「例えば、その……好きになっちゃったりってことは?」
「え、好きに……?」
私は動揺しないように表情を抑えてから、ふるふると首を振った。
「いや、まだ、そういうのはないかなぁ」
「そ、そうですか!」
「うん、負けるわけにもいかないし……」
「え?」
「ああ、こっちの話よ。ちょっと勝負していて」
「へええ」
治さんに説明をすると、目を見開いていた。こういうところも、変わらない。
しばらく立ち話をしていると、
「あ、じゃあそろそろ行きますね」
と、治さんは何か思い出したように言った。
「東雲さん。その、もし良ければ、」
「ん?」
「……なんでもないです。じゃあまた」
「え、ああ。またね」
治さんは、来た方向へ帰っていった。
何か歯切れの悪い感じだったな。治さんはとっくに私への興味を失くしたと思っていたけれど、そうでもないのかな? 私がアカギのことを好きかどうか聞いてくるなんて。……焦るよ。
少しして、治さんがいなくなった方向からアカギが戻ってきた。煙草を一本咥えて。
「今、治さんに会わなかった?」
「ん。会わなかったけど。いたの?」
「うん、たった今まで話してた」
「へえ。何か言ってた?」
「ううん、別に」