9.一組の
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映画が始まってしばらくして、私はしまった、と思った。
失敗した。
——映画選びに。
私は悔やんだ。内容はなんでも良いからと、どんな映画かの確認もしなかったことを。
そりゃ、時間ぴったりに上映されればそれを観に行ってしまうよ。私は悪くないんだけど、でも……
後悔の念が沸いてくるけれど、もう始まってしまっているし、どうしようもない。
なんというか、その映画には……いくつか濡れ場があったのだ。要するに、ベッドシーン。そういう展開が多い映画だったってこと。
もちろん、これは私の計算外。
(当時、無修正の成人向け映画が公開されていることは、珍しくなかった)
さて、どうしよう。アカギは隣にいる。
知らんぷりして狸寝入りしてしまえれば、どんなに楽か。でも、今更そんな演技は出来ないし、何より気になって目をつむれない。私にできるのは、なんとかポーカーフェイスを装って画面を見つめ続けることだけ。
「あんっ! あん!」
ああもう!
わざとらしい喘ぎ声が正面から聞こえてくる。
気まずいやら恥ずかしいやらで、顔が熱くなる。隣にいるアカギも、眠らず起きているようだし。もしかして、この映画に興奮してるなんてそんなこと……ないよね?
無意識にアカギのズボンを横目で見て、そんなトコロを見ている自分に気付き、また顔を染めた私。彼の顔をちらりと窺 うと、その視線に気がついたのか、アカギは顔をこちらに向けた。
私は慌てて画面に視線を戻す。
ど、どうしよう。
顔が熱い。
「まだ足りないわ、もっとして」
はぁ。早く終われ。流石に自重しなさいよ、男の方も。もう、十分でしょう?
一応、九尾狐と呼ばれ崇められていた頃は、清廉で美しく、それでいて色気のある妖しい女を演出していた。そんな私から見ても、これは流石にやりすぎ。
なす術なく、結局私たちは黙って最後まで見てしまった。
—————————————————————
ようやく上映が終わり、私たちは無言で外に出た。ひと段落ついたところで、私が口を開く。
「あの映画の話のオチ、実は中々気に入ったの。付き合ってくれてありがとう」
濡れ場については一言も言及しない、理想的感想を述べる。
「アカギには退屈させちゃったかもね」
「そうでもないよ」
「本当? それは良かった」
私は微笑んだ。
「ああいう映画が好みだったとはね」
「え」
直後、固まる私の笑顔。
「クク……東雲も中々、やるじゃない」
「あ、あれは予想外だから!」
「またまた」
喚いても、アカギは不敵に笑うだけで、取り合ってくれない。
「もう」
「それにしても、あんたの反応には楽しませてもらったよ」
私の心臓が縮こまる。
「なんのことかしら……」
アカギがクククと笑っている。
「見逃さないよ、オレは。あんたが一瞬だけ向けた視線。 “オレの” を見たでしょ」
私がアカギの下半身に目を向けた時のことだ。
やっぱりバレていた。
「欲しくなったんじゃないの」
「っ……!」
私は声を荒げた。
「それ以上言ったら引っ叩くわよ!」
アカギは喉の奥で笑い、流し目で私を見た。
「冗談」
失敗した。
——映画選びに。
私は悔やんだ。内容はなんでも良いからと、どんな映画かの確認もしなかったことを。
そりゃ、時間ぴったりに上映されればそれを観に行ってしまうよ。私は悪くないんだけど、でも……
後悔の念が沸いてくるけれど、もう始まってしまっているし、どうしようもない。
なんというか、その映画には……いくつか濡れ場があったのだ。要するに、ベッドシーン。そういう展開が多い映画だったってこと。
もちろん、これは私の計算外。
(当時、無修正の成人向け映画が公開されていることは、珍しくなかった)
さて、どうしよう。アカギは隣にいる。
知らんぷりして狸寝入りしてしまえれば、どんなに楽か。でも、今更そんな演技は出来ないし、何より気になって目をつむれない。私にできるのは、なんとかポーカーフェイスを装って画面を見つめ続けることだけ。
「あんっ! あん!」
ああもう!
わざとらしい喘ぎ声が正面から聞こえてくる。
気まずいやら恥ずかしいやらで、顔が熱くなる。隣にいるアカギも、眠らず起きているようだし。もしかして、この映画に興奮してるなんてそんなこと……ないよね?
無意識にアカギのズボンを横目で見て、そんなトコロを見ている自分に気付き、また顔を染めた私。彼の顔をちらりと
私は慌てて画面に視線を戻す。
ど、どうしよう。
顔が熱い。
「まだ足りないわ、もっとして」
はぁ。早く終われ。流石に自重しなさいよ、男の方も。もう、十分でしょう?
一応、九尾狐と呼ばれ崇められていた頃は、清廉で美しく、それでいて色気のある妖しい女を演出していた。そんな私から見ても、これは流石にやりすぎ。
なす術なく、結局私たちは黙って最後まで見てしまった。
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ようやく上映が終わり、私たちは無言で外に出た。ひと段落ついたところで、私が口を開く。
「あの映画の話のオチ、実は中々気に入ったの。付き合ってくれてありがとう」
濡れ場については一言も言及しない、理想的感想を述べる。
「アカギには退屈させちゃったかもね」
「そうでもないよ」
「本当? それは良かった」
私は微笑んだ。
「ああいう映画が好みだったとはね」
「え」
直後、固まる私の笑顔。
「クク……東雲も中々、やるじゃない」
「あ、あれは予想外だから!」
「またまた」
喚いても、アカギは不敵に笑うだけで、取り合ってくれない。
「もう」
「それにしても、あんたの反応には楽しませてもらったよ」
私の心臓が縮こまる。
「なんのことかしら……」
アカギがクククと笑っている。
「見逃さないよ、オレは。あんたが一瞬だけ向けた視線。 “オレの” を見たでしょ」
私がアカギの下半身に目を向けた時のことだ。
やっぱりバレていた。
「欲しくなったんじゃないの」
「っ……!」
私は声を荒げた。
「それ以上言ったら引っ叩くわよ!」
アカギは喉の奥で笑い、流し目で私を見た。
「冗談」