「何を企んでるの？」

私は眉をひそめて尋ねた。

「何も。ただ、喜ばせてみようかと思って」
「どうして私が喜ぶのよ」

私が怒り気味に言うと、アカギは不思議そうに私を見た。

「だって……あんた、オレに惚れてるみたいだから」

時が止まる。

「……え？」
「分かりやすくとぼけるなよ」

私は動揺しつつも、肩をすくめてみせた。

「私は、どうしてそんなことを自信たっぷりに言えるのかが不思議でたまらないだけ」

アカギはへぇ、と言った。

「あんた、気付いてないんだ」
「なに？」
「それだよ。オレに向ける視線」
「……ええと」

私は唇を舐めた。

「ほら、そうやってオレを見る。あんたのその視線は、傍（はた）から見たら、恋人なんかに向けるそれだぜ」

私の顔は熱を帯びた。
その原因は、頭に血がのぼったからだと信じたい。決して、照れているわけではなく。

「よくもまあ。一回こっきり私との勝負に勝てたからって、そこまで調子に乗らないでよ。私が好きなのは、あなたとの勝負」
「勝負ねえ」
「そう」

私は頷いた。アカギは、首をこきり、と鳴らした。

「じゃあ、もうひと勝負してやってもいいけど」
「え？」

その言葉に、思わず目を輝かせて彼の目を見てしまう。

「勝負？」
「そう言ってるでしょ」

でも、と私は口を濁らせた。

「私には、もう賭けるものがない」
「構わない。賭けるのは互いのプライドだけで。特に、あんたのプライドは高いし」
「……分かった」

プライドを賭けた勝負なんて、本気になれるか分からない。大金ってわけでも、命がかかってるってわけでもないんだから。
勿論、負けたくないんだけどね。
アカギは何をするつもりなんだろう。

「それで、内容は？」
「言ってみれば、オレと東雲、どっちが正しかったのか、を競うだけだ」
「つまり？」

アカギは、悪戯な笑みを浮かべた。

「あんたがオレに惚れてるのか、違うのか。それで勝負するってこと」
「は」

私がアカギに惚れてるかどうかで勝負……？
待って、全然読めない。どういうこと？