1.出会い
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東雲舞美が出ていった雀荘は、彼女の予想通り、男達は “九尾狐”の話で盛り上がっていた。
それほどまでに舞美は彼らの心を鷲掴みにしたのだ。
ちょっとしたカリスマ性とも言えるだろうか。
しかし、先ほど対峙した、この赤木しげるに敵うかは分からない。孤高の天才、赤木しげるは、片手をポケットに入れたまま、煙を吐いていた。
「見たか? さっきの女」
興奮した男がアカギに話しかける。
「見ましたよ」
「聞いて驚けよ、あいつはあの、九尾狐なんだ」
「九尾狐?」
本来、九尾狐とは、9本の尾を持つ狐の妖怪の名称である。人を喰らうとか、絶世の美女に化けるとか、そんな話があったかと、アカギは思いをめぐらせる。
確かにさっきの女は、美女と分類されるような顔つきだった。年齢はあまり変わらないくらいか。
男は、彼女の異名を知らないアカギにその説明をした。
「ほら、色んな賭場を荒らしてる女博徒。あんたも聞いたことくらいあるだろ? 組の代打ちにも呼ばれたこともあるんだってよ」
「ふーん……」
「名前は東雲舞美だってさ。やっぱ、若い女は良いよな。かわいい顔してただろ。」
「そうですね」
アカギはさらりとそう言った。
舞美と目を合わせた際、何か自分に似たものを彼女の内に感じていた。そもそも雀荘で女に会ったのはこれが初めてだった。
組の経営する賭場では、たまにその道の女が出入りしていることもある。
しかし、彼女らは博打を打つわけではない。
丁半賭博で客を寄せるために、胴元として壺を振っている姿をたまに見るくらいだ。今までアカギの相手と言えば、全て男。ギャンブルとは男の世界、女など立ち入る隙もない、はずだった。舞美が現れたことで、それは覆された。
そもそも、女は非力であるために、常に危険が伴う。アカギは喧嘩の方も強いためその点は心配ない。しかし舞美には身を守る術がないのだ。それでも今まで生き残ってきたのだから、どこかと繋がりを持っているのだろう。
あるいは、この名前が彼女を守っているのか、とアカギは思った。
わざわざ九尾という悪名を利用し、ヤクザと繋がっているのを暗に示す。実際繋がっているかどうかは問題じゃない。つまりはブラフの可能性だってあるということだ。
とにかく、名前で自分自身を守れる。となれば、今日ここに来たのも名前を広めるためだったんだろう。ここにいる輩は全員、利用されているも同然だ。もちろん、彼ら自身もその名前を恐れて手を出せないし、利用されていることにも気が付かない。いや、気が付いたところで、何が出来るかと問われれば、何も出来ないだろう。
「ズル賢い狐。」
——そんな女は嫌いじゃない。
それほどまでに舞美は彼らの心を鷲掴みにしたのだ。
ちょっとしたカリスマ性とも言えるだろうか。
しかし、先ほど対峙した、この赤木しげるに敵うかは分からない。孤高の天才、赤木しげるは、片手をポケットに入れたまま、煙を吐いていた。
「見たか? さっきの女」
興奮した男がアカギに話しかける。
「見ましたよ」
「聞いて驚けよ、あいつはあの、九尾狐なんだ」
「九尾狐?」
本来、九尾狐とは、9本の尾を持つ狐の妖怪の名称である。人を喰らうとか、絶世の美女に化けるとか、そんな話があったかと、アカギは思いをめぐらせる。
確かにさっきの女は、美女と分類されるような顔つきだった。年齢はあまり変わらないくらいか。
男は、彼女の異名を知らないアカギにその説明をした。
「ほら、色んな賭場を荒らしてる女博徒。あんたも聞いたことくらいあるだろ? 組の代打ちにも呼ばれたこともあるんだってよ」
「ふーん……」
「名前は東雲舞美だってさ。やっぱ、若い女は良いよな。かわいい顔してただろ。」
「そうですね」
アカギはさらりとそう言った。
舞美と目を合わせた際、何か自分に似たものを彼女の内に感じていた。そもそも雀荘で女に会ったのはこれが初めてだった。
組の経営する賭場では、たまにその道の女が出入りしていることもある。
しかし、彼女らは博打を打つわけではない。
丁半賭博で客を寄せるために、胴元として壺を振っている姿をたまに見るくらいだ。今までアカギの相手と言えば、全て男。ギャンブルとは男の世界、女など立ち入る隙もない、はずだった。舞美が現れたことで、それは覆された。
そもそも、女は非力であるために、常に危険が伴う。アカギは喧嘩の方も強いためその点は心配ない。しかし舞美には身を守る術がないのだ。それでも今まで生き残ってきたのだから、どこかと繋がりを持っているのだろう。
あるいは、この名前が彼女を守っているのか、とアカギは思った。
わざわざ九尾という悪名を利用し、ヤクザと繋がっているのを暗に示す。実際繋がっているかどうかは問題じゃない。つまりはブラフの可能性だってあるということだ。
とにかく、名前で自分自身を守れる。となれば、今日ここに来たのも名前を広めるためだったんだろう。ここにいる輩は全員、利用されているも同然だ。もちろん、彼ら自身もその名前を恐れて手を出せないし、利用されていることにも気が付かない。いや、気が付いたところで、何が出来るかと問われれば、何も出来ないだろう。
「ズル賢い狐。」
——そんな女は嫌いじゃない。