「なかなか可愛い顔してるねえ」
「とりあえず、一発やっちまおうか？」
「まぁ待てよ、起こしてからの方が反応も見れるし、面白いだろ」
「それもそうだな！」

声？ 人の、声？
私は耳をすませた。

……じゃりじゃり。
だれかが、歩いてきた？

——だれ？

「おい、起きろよ」

頰をぺちぺちと叩かれる。

「ん……？」
「おら、起きろ」
「え……」

目を開けると、知らない男たちが私の周りを囲んでいた。

ここは？

私が身体を動かそうとすると、ギシリ、と何かが私の動きを止めた。

「え、」

なに？

見ると、私の身体はロープで柱みたいなものに磔（はりつけ）にされていた。

「は……？」

ズキン、と頭が痛む。
そうだった、私、後ろから急に殴られて……。

感覚からすると、どうやら、血は出ていないみたいだ。死ななくて、良かった。
私はうまく気絶したみたい。

いや、そんなことは問題じゃない。

「だれ？」

目の前の状況に、心当たりがないのだ。私がかつて金をむしり取った輩でもないし、特に知っている顔もない。これは、私への私怨ってわけではなさそうだ。
じゃあ、なんで私がこんなことに？

「誰？ ……だってよー！」
「まぁ、そうなるよな」
「可哀想にな、あんたも」

なぜか口々に騒ぎ、楽しそうにする男たち。
何がそんなに面白いのか。……不気味だ。

私は顎をぐっと持ち上げられた。
なんなの、一体。

「私、お金なんて持ってないよ」
「んなことは分かってらぁ」
「それが目的じゃないさ」

金じゃない。じゃあ、

「……女だから？」
「フハッ、それもあるな！」

１人が笑うと、仲間も笑い出した。
この中に助けてくれる人はいないみたい。
もちろん、周りにも。

「まぁ、本当の目的はお前じゃないのさ」
「どういうこと？」
「にしてもこいつ、結構気が強いよなー」
「泣いて震えたりしないもんかねぇ」

いや、ギリギリだ。
泣きそうだし、そろそろ足が震えそう。

「逆にこういう女の方が興奮するよな」
「屈服させるまでやるとか？」

男たちはギャハハ、と下品な笑い方をする。

でも、私には少し希望があった。本当の目的は、別にあるらしい。だったら、私が必要ってわけじゃない。普通に解放してくれるかも。
もしかして、代打ちの依頼だったり、勝負についてのことだったり、しないかな。

「で、目的は？」

私は彼らの答えを聞き、自分の考えが甘かったことを知る。

「もう割れてんだよねー」
「え？」








「……お前、赤木しげるの女らしいじゃん」