その日、アカギが帰りそうな気配がしたので、その場所から離れて、家路に着いた。


その時に少しでも、後ろを振り返れば気付けたかもしれないのに。
でも、駄目だった。
私は、早く家に帰らなきゃという気持ちで一杯だった。周りのことなんて、何も見えてはいなかった。


ひゅん、と風を切る音がした。

急に、頭を殴られたような衝撃を受ける。

「っ……！」

あまりの痛みに声も出ない。
視界がチカチカして、風景がぼやけ始める。
固い地面に身体が横になってしまったらしい。
そして、なんとなく分かった。

ああ、襲われたんだ。
…………なんで？

朦朧とした意識の中、複数人の男の声が聞こえた。何を言っているか、分かんないよ……。

「たす、けて……」

絞り出したか細い声は、誰にも届かない。

「アカ、ギ……」

助けて、アカギ。
私が最後に考えたのは、それだけだった。

そして私はとうとう、意識を手放し、暗闇に沈んでいった。