5.売買
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「これ、東雲が作ったんだ」
夕飯……と言っても、既に夜中だが、アカギはそれを見て、そう言った。
「ま、まぁね」
「食べて良いの」
「お粗末なものですが……」
「いただくよ」
アカギはその場に胡座をかいて座り、もぐもぐと食べ始めた。緊張する。
すぐに美味しい、だとか言わないあたりが、アカギらしい。無言で食べ進めていく。
綺麗な箸づかいだ。私も様々な場所での所作1つ1つに気を配っているつもりだが、アカギの動きにはわざとらしさがなく、自然な美しさが感じられる。
ただ、箸を見ているとそれはアカギの口元へ運ばれるので、自分が何か イケナイものを見てしまっているような気がして、目を逸らす。
でも、途中で手を止めないということは、不味くはないのか。
食べ終わったアカギはお茶を飲んだ。酒も買ってくるべきだったかな、と少し反省。でも、
「まさかこんな風に飯まで振る舞ってくれるとはね。美味いよ」
と、お褒めの言葉をいただいた!
「本当? それは良かった」
「ご馳走様」
ああ、ほんとに良かった。美味い、だって。
ほっと安堵の溜息が漏れる。
人のために家事をしたのは初めてだったから。
「ずっとオレを待ってたの?」
「……待ってた」
誤魔化しても仕方ないので、ぷいっと不機嫌そうに言った。でも実のところ、私は今とても機嫌が良い。
「なかなか可愛いところもあるんだな」
「馬鹿にしないでよ」
「別にしてない。……東雲、もう少し待ってなよ」
「え?」
「風呂に入る」
あ。
「そう言えば、お風呂も沸かしておいたけど、もう冷めてるかも。また温めてね」
「……とことん気の利く女だな」
「別に。暇だったの」
私が言うと、アカギはそうですか、と流した。そして、まだ寝ないよな、と釘を刺された。
私はアカギが帰宅してからというもの、目が覚めてしまっていたので、承諾した。
バタンと扉が閉められ、アカギが向こうの浴室へ行く。
また静まり返る空間。
私は姿勢を正したまま、そこに座っていた。
ん? いや、待て。違う。
その空間は、静まり返ってなどいなかった。
と言うのも、向こうから、アカギがシャワーを浴びている音が聞こえてきたのだ。その通り。感覚が麻痺していたのだろうか。
まさに今、あの赤木しげるが風呂に入っている!
……だから何よ。
私は自分自身を落ち着かせた。
大したことじゃない。別にアカギがどんな格好をしているかなんて私に関係ないし、筋肉がどのくらい付いているのかとか、なんだかいやらしいなんて考える必要は全くない。全く。
むしろ、そういうのは今まで私の役目だった。場面によっては男どもに愛想を振りまいたり、色気を出したりしてちやほやされてきた。一応、私にもそういった魅力はあるはずなのだから、ひるむ必要はない。
そう頭では分かっていても、なんだか心がざわついた。ので、私は昔からの頼れる友人、もとい恋人である麻雀牌を指先でいじってなんとか正気を保っていた。
夕飯……と言っても、既に夜中だが、アカギはそれを見て、そう言った。
「ま、まぁね」
「食べて良いの」
「お粗末なものですが……」
「いただくよ」
アカギはその場に胡座をかいて座り、もぐもぐと食べ始めた。緊張する。
すぐに美味しい、だとか言わないあたりが、アカギらしい。無言で食べ進めていく。
綺麗な箸づかいだ。私も様々な場所での所作1つ1つに気を配っているつもりだが、アカギの動きにはわざとらしさがなく、自然な美しさが感じられる。
ただ、箸を見ているとそれはアカギの口元へ運ばれるので、自分が何か イケナイものを見てしまっているような気がして、目を逸らす。
でも、途中で手を止めないということは、不味くはないのか。
食べ終わったアカギはお茶を飲んだ。酒も買ってくるべきだったかな、と少し反省。でも、
「まさかこんな風に飯まで振る舞ってくれるとはね。美味いよ」
と、お褒めの言葉をいただいた!
「本当? それは良かった」
「ご馳走様」
ああ、ほんとに良かった。美味い、だって。
ほっと安堵の溜息が漏れる。
人のために家事をしたのは初めてだったから。
「ずっとオレを待ってたの?」
「……待ってた」
誤魔化しても仕方ないので、ぷいっと不機嫌そうに言った。でも実のところ、私は今とても機嫌が良い。
「なかなか可愛いところもあるんだな」
「馬鹿にしないでよ」
「別にしてない。……東雲、もう少し待ってなよ」
「え?」
「風呂に入る」
あ。
「そう言えば、お風呂も沸かしておいたけど、もう冷めてるかも。また温めてね」
「……とことん気の利く女だな」
「別に。暇だったの」
私が言うと、アカギはそうですか、と流した。そして、まだ寝ないよな、と釘を刺された。
私はアカギが帰宅してからというもの、目が覚めてしまっていたので、承諾した。
バタンと扉が閉められ、アカギが向こうの浴室へ行く。
また静まり返る空間。
私は姿勢を正したまま、そこに座っていた。
ん? いや、待て。違う。
その空間は、静まり返ってなどいなかった。
と言うのも、向こうから、アカギがシャワーを浴びている音が聞こえてきたのだ。その通り。感覚が麻痺していたのだろうか。
まさに今、あの赤木しげるが風呂に入っている!
……だから何よ。
私は自分自身を落ち着かせた。
大したことじゃない。別にアカギがどんな格好をしているかなんて私に関係ないし、筋肉がどのくらい付いているのかとか、なんだかいやらしいなんて考える必要は全くない。全く。
むしろ、そういうのは今まで私の役目だった。場面によっては男どもに愛想を振りまいたり、色気を出したりしてちやほやされてきた。一応、私にもそういった魅力はあるはずなのだから、ひるむ必要はない。
そう頭では分かっていても、なんだか心がざわついた。ので、私は昔からの頼れる友人、もとい恋人である麻雀牌を指先でいじってなんとか正気を保っていた。