5.売買
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随分と眠った、ような気がする。
私は半身をむくりと起こした。
「起きたか」
「あ」
その声にびくりとする。そうだった。私、アカギの部屋にいるんだった。
寝起きの顔を見られた恥ずかしさもあり、私は顔を伏せる。どう反応すれば良いか分からない。
「とりあえず、あんたのなら買い揃えた」
既にアカギは外出して、買い物を済ませてきたらしい。私のものだと思われる日用品が袋の中にあった。こんなのを買っているアカギなんて、全然想像できないけど。
私はとりあえず、お礼を言った。
これは、私と一緒に暮らすっていうことだよね。
「今朝も言ったけど、今日はここを出ていくから」
私はこくりと頷いた。
「あんたはここに残りな」
「え?」
残る?
アカギは、私を買ってくれたんじゃないの?
てっきり、一緒にいれるものだと思い込んでいた。私の早とちりだったのだろうか。
自分の勝手な妄想に、私は頭を抱えた。確かにそんな言葉、彼から一度も聞いていない。
すると、アカギは眉をひそめた。
「あんたが望むんなら残らなくても良いけど」
「へっ?」
本音を言うと、付いていきたかった。けど、それを言うと変な女に思われるかもしれないし、だからって残ることもしたくなかった。勝手に付いていっても良いものだと思ってたけど、そうじゃなかったみたい……。
「ど、どうすれば良い?」
「勝手にしなよ。東雲がどうしたいか、でしょ。残りたいなら残れば」
昨日の優しさはどこへやら、少しそっけない。そんな扱いを男からされたことがないので、私も戸惑った。言葉を濁して、なんとか付いて行くことはできないだろうか。
そして、私は思いついた。
「あなたが私を買ったんだから、昨日の今日で捨てるなんて失礼じゃない?」
アカギは不思議そうにこちらを見た。
「……オレからあんたを解放してやるって言ってるんだけど?」
うっ。
「でも、私には金も無いし」
「あんたなら生きていけるでしょ。この家もやるって言ってるんだし」
手強い。本当は、私を買いたくなんてなかったんじゃないの? もしかして、迷惑?
私が黙っていると、アカギが溜息をついた。
「東雲のために言ってるんだけど。オレに付いてくるとロクな目に遭わないから」
「いや、そうだろうけど……」
「勝負している時の強さはどこへ行ったんだよ。その感じだと、オレに付いてきたいみたいだね」
「え」
「言いたいことははっきり言え。オレの前では偽らないで」
偽る……。確かに、私は今まで自分の本当の意思を示したことが無かった。あったとしても、勝負の中でだけ。それが唯一の楽しみであり、私にとってのコミュニケーション方法そのものだったから。
「私が……もし、付いていきたいって言ったら、連れて行ってくれるの」
「そう言えばね。」
なら、そう言えば良い。
私はごくりと喉を鳴らした。
そして、初めて芽生えた、勝負以外の自分の欲望を口にする。口がからからになりそうな緊張。ようやく絞り出した声は、今までになく か細かったが、しっかりと自分の意思を貫いた。
「い、行きたい」
私は半身をむくりと起こした。
「起きたか」
「あ」
その声にびくりとする。そうだった。私、アカギの部屋にいるんだった。
寝起きの顔を見られた恥ずかしさもあり、私は顔を伏せる。どう反応すれば良いか分からない。
「とりあえず、あんたのなら買い揃えた」
既にアカギは外出して、買い物を済ませてきたらしい。私のものだと思われる日用品が袋の中にあった。こんなのを買っているアカギなんて、全然想像できないけど。
私はとりあえず、お礼を言った。
これは、私と一緒に暮らすっていうことだよね。
「今朝も言ったけど、今日はここを出ていくから」
私はこくりと頷いた。
「あんたはここに残りな」
「え?」
残る?
アカギは、私を買ってくれたんじゃないの?
てっきり、一緒にいれるものだと思い込んでいた。私の早とちりだったのだろうか。
自分の勝手な妄想に、私は頭を抱えた。確かにそんな言葉、彼から一度も聞いていない。
すると、アカギは眉をひそめた。
「あんたが望むんなら残らなくても良いけど」
「へっ?」
本音を言うと、付いていきたかった。けど、それを言うと変な女に思われるかもしれないし、だからって残ることもしたくなかった。勝手に付いていっても良いものだと思ってたけど、そうじゃなかったみたい……。
「ど、どうすれば良い?」
「勝手にしなよ。東雲がどうしたいか、でしょ。残りたいなら残れば」
昨日の優しさはどこへやら、少しそっけない。そんな扱いを男からされたことがないので、私も戸惑った。言葉を濁して、なんとか付いて行くことはできないだろうか。
そして、私は思いついた。
「あなたが私を買ったんだから、昨日の今日で捨てるなんて失礼じゃない?」
アカギは不思議そうにこちらを見た。
「……オレからあんたを解放してやるって言ってるんだけど?」
うっ。
「でも、私には金も無いし」
「あんたなら生きていけるでしょ。この家もやるって言ってるんだし」
手強い。本当は、私を買いたくなんてなかったんじゃないの? もしかして、迷惑?
私が黙っていると、アカギが溜息をついた。
「東雲のために言ってるんだけど。オレに付いてくるとロクな目に遭わないから」
「いや、そうだろうけど……」
「勝負している時の強さはどこへ行ったんだよ。その感じだと、オレに付いてきたいみたいだね」
「え」
「言いたいことははっきり言え。オレの前では偽らないで」
偽る……。確かに、私は今まで自分の本当の意思を示したことが無かった。あったとしても、勝負の中でだけ。それが唯一の楽しみであり、私にとってのコミュニケーション方法そのものだったから。
「私が……もし、付いていきたいって言ったら、連れて行ってくれるの」
「そう言えばね。」
なら、そう言えば良い。
私はごくりと喉を鳴らした。
そして、初めて芽生えた、勝負以外の自分の欲望を口にする。口がからからになりそうな緊張。ようやく絞り出した声は、今までになく か細かったが、しっかりと自分の意思を貫いた。
「い、行きたい」