4.最終局面
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「これが約束の4000万です」
どこからか黒服たちが布に包んだ札束を持ってきた。4000万って、あんなにあるのか。
私はあれくらいを返さなきゃいけない。
「東雲はこの書類に名前を」
その点も抜かりないってわけね。
私は一切れの紙を見つめた。
これに名前を書いてしまったら、私はもう二度と陽の光を見れなくなる。
「東雲さんっ……‼︎」
治さんが目に涙をいっぱい溜めてこちらを見ている。私は何故か心が痛くなった。私が初めて作ったかもしれない、友達、みたいな人。
でも、私が堕ちても、あなたは赤木しげると共に歩めるんでしょ。……羨ましいよ、治さん。
あ、ダメ。泣かないの、私。
楽しかったでしょ。間違いなく最高の夜だった。
良かったじゃん、憧れの赤木しげると打てて……。
もう、泣くな、馬鹿。
涙目になりつつも、誠意を示そうと姿勢を正してペンを取った。私の名前を書かないと。できるだけ綺麗な文字で書きたい。最後だから。
とうとう覚悟を決めて、ペンの先を紙に押し付けた時。
「まぁ、待ちなよ」
後ろからポン、と肩を叩かれ、やっと握れたペンがするりと抜かれた。
「ちょっと」
振り返ると、私を見下ろしているアカギがいた。
「聞きたいことがいくつかある」
聞きたいこと? はて、何のことかと頭を捻る。彼の考えることは分からない。
「東雲、オレを憎んでないの」
ああ、そんなことか。
「憎んでないよ、とりあえず今はね。この後私が堕ちて、結果的にあなたを逆恨みしちゃうかもしれないけど。私が勝負したかったんだから、そこに後悔はないし、あなたを憎むのはお門違いでしょ」
「……そんなやつは、あんたが初めてだ」
「当たり前でしょ。他のやつと一緒にしないでよ。分かったなら、それを返してもらえる?」
私は手を伸ばしたけれど、返してくれる気配は一向にない。
「ねえ」
「あんた、自分に価値を付けるならいくらだと思う?」
……言ってる意味が分からない。
私がヤクザに閉じ込められて、売春婦として働かされることを分かってて、意地悪でそんな質問してるんなら、本当に嫌な人だ。
私は今、強がっているだけなのに。
でも、そんな風には感じなかった。嫌味や皮肉ではなく、単純な疑問のようだ。
私は首を傾げて、思いついた値段を言った。
「4000万だったけど、負けたから3000万くらい、かな」
そう言うと、アカギはククっと楽しそうに笑った。からかわれているのだろうか。
私がムッとしていると、アカギは跪 いて、私の顎を人差し指でなぞった。
「かうよ」
「ひっ」
指の動きがくすぐったくて、変な声が出る。
「な、なに?」
尋ねると、アカギは答えた。
「3000万–––––その値段で、あんたを買おう」
4.最終局面 〈完〉
どこからか黒服たちが布に包んだ札束を持ってきた。4000万って、あんなにあるのか。
私はあれくらいを返さなきゃいけない。
「東雲はこの書類に名前を」
その点も抜かりないってわけね。
私は一切れの紙を見つめた。
これに名前を書いてしまったら、私はもう二度と陽の光を見れなくなる。
「東雲さんっ……‼︎」
治さんが目に涙をいっぱい溜めてこちらを見ている。私は何故か心が痛くなった。私が初めて作ったかもしれない、友達、みたいな人。
でも、私が堕ちても、あなたは赤木しげると共に歩めるんでしょ。……羨ましいよ、治さん。
あ、ダメ。泣かないの、私。
楽しかったでしょ。間違いなく最高の夜だった。
良かったじゃん、憧れの赤木しげると打てて……。
もう、泣くな、馬鹿。
涙目になりつつも、誠意を示そうと姿勢を正してペンを取った。私の名前を書かないと。できるだけ綺麗な文字で書きたい。最後だから。
とうとう覚悟を決めて、ペンの先を紙に押し付けた時。
「まぁ、待ちなよ」
後ろからポン、と肩を叩かれ、やっと握れたペンがするりと抜かれた。
「ちょっと」
振り返ると、私を見下ろしているアカギがいた。
「聞きたいことがいくつかある」
聞きたいこと? はて、何のことかと頭を捻る。彼の考えることは分からない。
「東雲、オレを憎んでないの」
ああ、そんなことか。
「憎んでないよ、とりあえず今はね。この後私が堕ちて、結果的にあなたを逆恨みしちゃうかもしれないけど。私が勝負したかったんだから、そこに後悔はないし、あなたを憎むのはお門違いでしょ」
「……そんなやつは、あんたが初めてだ」
「当たり前でしょ。他のやつと一緒にしないでよ。分かったなら、それを返してもらえる?」
私は手を伸ばしたけれど、返してくれる気配は一向にない。
「ねえ」
「あんた、自分に価値を付けるならいくらだと思う?」
……言ってる意味が分からない。
私がヤクザに閉じ込められて、売春婦として働かされることを分かってて、意地悪でそんな質問してるんなら、本当に嫌な人だ。
私は今、強がっているだけなのに。
でも、そんな風には感じなかった。嫌味や皮肉ではなく、単純な疑問のようだ。
私は首を傾げて、思いついた値段を言った。
「4000万だったけど、負けたから3000万くらい、かな」
そう言うと、アカギはククっと楽しそうに笑った。からかわれているのだろうか。
私がムッとしていると、アカギは
「かうよ」
「ひっ」
指の動きがくすぐったくて、変な声が出る。
「な、なに?」
尋ねると、アカギは答えた。
「3000万–––––その値段で、あんたを買おう」
4.