1.出会い
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東雲舞美。と、そう名乗った。
それを聞いた途端、1人の男が勢いよく立ち上がる。
「なんだと⁈」
「どうかしました?」
なんだ、どうしたんだとざわめく声に反応して彼は言った。
「ほら、巷で有名なあの女博徒!」
「は?」
「お前、それってのは……」
ざわざわと動揺が伝染する。
「まさか、あの“九尾狐”か?」
「もしかして、この子が?」
「あぁ、ほぼ間違いない。狐の正体がこんな小娘だったとは」
男は心底驚いているようだった。
「そこら中の賭場でそこにいたやつらの金を巻き上げるっていう女か。そんなもの、都市伝説だと思ってた」
「ある女のせいで借金まみれになったっていうチンピラの話を聞いたことがある」
「どこかの組が囲ってるとも聞いたな」
「ああ、とにかく迂闊に手を出さない方が良い」
「ちっ、だからか、あの余裕な態度は」
舞美はほくそ笑んだ。
私の名はもうここまで広まっていたんだ、と。だったら私がここで今姿を見せたことで、とりあえず今夜の目的は果たされたことになるな。
「お前、本当に九尾、なのか?」
舞美は舌を出した。
「ふふ、バレちゃった?」
溜息をついてから、手で狐の形を作る。
「……コンコン、なんてね」
それはその場を沸かせるのに充分だった。
「……こりゃ確かに、化け狐だ」
「だが、九尾にしては俺達から奪った金額が低すぎる。そもそもなんでここに?」
「ただ、牌が恋しくなっただけ。私の恋人はずっとこれだから」
「そ、それだけ?」
「別に、あなたたちを潰そうなんて思ってもないから、安心して良いよ」
「そ、それは何よりだ」
「なぁ、あれってのは本当なのか?」
「あれ、って?」
矢継ぎ早に話しかけられる。彼らは、既に九尾のファンもどきになっていた。
「ほら、その腕を買われて組の代打ちをしたって話だよ。あれはお前のことなんだよな?」
「まぁ、少しだけだけど。ほら、女だから、あまり私を使うと舐められるらしいし……」
「おお……!」
舞美は代打ちをした日を思い出した。
既に懐かしい。あの日からだったかな、九尾狐などと呼ばれるようになったのは。
その日は、既に数枚場に出ている九筒や九索のシャボ待ち、単騎待ちを多くしていた。
それは舞美の単なる気まぐれだったが、相手が断么に走りやすい癖を持っていたのも影響し、多く九で振り込ませた。オーラスでは小三元/混老頭/混一色、九萬地獄単騎待ちで見事ツモ和了りした。
そこで “キューの女”と呼ばれ、勝負中は化けること、そしてその男をたぶらかすような容姿から、“九尾狐”という名が浸透したのだ。
負けた相手がどうなったのかは、彼女の知ったことではない。
「それにしても良い女だよな」
「あぁ。だが迂闊に手出しは出来ねえよ」
「食おうと思った時にゃ、こっちが食われてるだろうぜ」
「違いねぇな」
彼らには下心もあるのだろうが、厄介なことには巻き込まれたくないので、舞美には手を出せないでいた。そんな勇気は誰も持っていないだろう。私の身体はそんなに安くないし。
「それより、どう。私と対局したいって人は?」
そう問いかけると、少し静まった。
考えている者もいるようだ。
さっきのレートは低かったから、記念に打とうとしているのかもしれない。
そこで、ああ、でも。と付け加える。
「ここからは最低でも10万は賭けてもらうよ」
「10万っ?」
現在の貨幣価値にするとおよそ100万である。やはり、誰も名乗り出ようとはしなかった。
「まぁ、いないか」
予想通りだった。
そのつもりで問いかけたのだから、これで良い。
「では、今夜はもう充分楽しめたし、私は帰ることにするね」
「あ、あぁ……」
「でも、残念だ。せっかく九尾ちゃんに会えたってのによ」
「まぁ、俺らには狐を狩ることも出来ねぇし」
本当に名残惜しそうに見える。
「私、この雀荘は嫌いじゃないよ。他の場所と違って、血生臭くないし」
「今までどんな所にいたんだこの娘……」
「まぁ、想像に任せる。気に入ったから、たまに遊びに来るかも」
「ほ、本当かよ」
「コイツがここに来ることで変な輩に目を付けられないだろうな」
「充分にあり得るぜ」
「その時はごめんね」
それを聞いた途端、1人の男が勢いよく立ち上がる。
「なんだと⁈」
「どうかしました?」
なんだ、どうしたんだとざわめく声に反応して彼は言った。
「ほら、巷で有名なあの女博徒!」
「は?」
「お前、それってのは……」
ざわざわと動揺が伝染する。
「まさか、あの“九尾狐”か?」
「もしかして、この子が?」
「あぁ、ほぼ間違いない。狐の正体がこんな小娘だったとは」
男は心底驚いているようだった。
「そこら中の賭場でそこにいたやつらの金を巻き上げるっていう女か。そんなもの、都市伝説だと思ってた」
「ある女のせいで借金まみれになったっていうチンピラの話を聞いたことがある」
「どこかの組が囲ってるとも聞いたな」
「ああ、とにかく迂闊に手を出さない方が良い」
「ちっ、だからか、あの余裕な態度は」
舞美はほくそ笑んだ。
私の名はもうここまで広まっていたんだ、と。だったら私がここで今姿を見せたことで、とりあえず今夜の目的は果たされたことになるな。
「お前、本当に九尾、なのか?」
舞美は舌を出した。
「ふふ、バレちゃった?」
溜息をついてから、手で狐の形を作る。
「……コンコン、なんてね」
それはその場を沸かせるのに充分だった。
「……こりゃ確かに、化け狐だ」
「だが、九尾にしては俺達から奪った金額が低すぎる。そもそもなんでここに?」
「ただ、牌が恋しくなっただけ。私の恋人はずっとこれだから」
「そ、それだけ?」
「別に、あなたたちを潰そうなんて思ってもないから、安心して良いよ」
「そ、それは何よりだ」
「なぁ、あれってのは本当なのか?」
「あれ、って?」
矢継ぎ早に話しかけられる。彼らは、既に九尾のファンもどきになっていた。
「ほら、その腕を買われて組の代打ちをしたって話だよ。あれはお前のことなんだよな?」
「まぁ、少しだけだけど。ほら、女だから、あまり私を使うと舐められるらしいし……」
「おお……!」
舞美は代打ちをした日を思い出した。
既に懐かしい。あの日からだったかな、九尾狐などと呼ばれるようになったのは。
その日は、既に数枚場に出ている九筒や九索のシャボ待ち、単騎待ちを多くしていた。
それは舞美の単なる気まぐれだったが、相手が断么に走りやすい癖を持っていたのも影響し、多く九で振り込ませた。オーラスでは小三元/混老頭/混一色、九萬地獄単騎待ちで見事ツモ和了りした。
そこで “キューの女”と呼ばれ、勝負中は化けること、そしてその男をたぶらかすような容姿から、“九尾狐”という名が浸透したのだ。
負けた相手がどうなったのかは、彼女の知ったことではない。
「それにしても良い女だよな」
「あぁ。だが迂闊に手出しは出来ねえよ」
「食おうと思った時にゃ、こっちが食われてるだろうぜ」
「違いねぇな」
彼らには下心もあるのだろうが、厄介なことには巻き込まれたくないので、舞美には手を出せないでいた。そんな勇気は誰も持っていないだろう。私の身体はそんなに安くないし。
「それより、どう。私と対局したいって人は?」
そう問いかけると、少し静まった。
考えている者もいるようだ。
さっきのレートは低かったから、記念に打とうとしているのかもしれない。
そこで、ああ、でも。と付け加える。
「ここからは最低でも10万は賭けてもらうよ」
「10万っ?」
現在の貨幣価値にするとおよそ100万である。やはり、誰も名乗り出ようとはしなかった。
「まぁ、いないか」
予想通りだった。
そのつもりで問いかけたのだから、これで良い。
「では、今夜はもう充分楽しめたし、私は帰ることにするね」
「あ、あぁ……」
「でも、残念だ。せっかく九尾ちゃんに会えたってのによ」
「まぁ、俺らには狐を狩ることも出来ねぇし」
本当に名残惜しそうに見える。
「私、この雀荘は嫌いじゃないよ。他の場所と違って、血生臭くないし」
「今までどんな所にいたんだこの娘……」
「まぁ、想像に任せる。気に入ったから、たまに遊びに来るかも」
「ほ、本当かよ」
「コイツがここに来ることで変な輩に目を付けられないだろうな」
「充分にあり得るぜ」
「その時はごめんね」