4.最終局面
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「もう分かったでしょ、あんたの作戦はオレに通用しないって」
「……そこまで分かってたなんて」
「ど、どういうこと……?」
治さんが首をかしげた。周りの人も分かってないらしい。当たり前だ。
「分かってしまえば簡単な仕掛け。普通、読みが違っていればほとんどが自分を疑うが、オレは違った。自分は間違えていないという判断の下、実際の手牌と読みの違いとを比べ、辻褄の合う事実を考えた。1回目では、それはただの疑惑だった。が、2回目、東雲のツモでそれが確信に変わった。つまり、東雲は2つ同時に別の麻雀を打っていた」
アカギの言ったことは全て正しかった。
普通なら、まず “自分が間違えていないという判断の下” にいることさえできないはずなのに、彼にはそれができたんだ。
彼は本当の意味で、自分だけを信じている。
私は下唇を噛んだ。
「さっきからこの女を見ていると、どうも自分を偽ることが得意らしい。この作戦も、見破られなければ、ほぼ無敵の技。しかし、それが分かってしまった者には逆に自分の手牌を晒しているのも同じ」
「なるほど、設定を作っていることさえ分かれば、本物の手牌もすぐに見えてくる」
「そして、“もう1つの麻雀”に囚われ、捨てざるを得ない牌が途中で出てくる。そこまで分かれば、その牌で待っていれば必ず、東雲に振り込ませることができる」
「……」
私は何も言えず黙ってしまった。
「さっきオレが裸単騎だった時、本当に裸だったのは東雲、この化け狐だった」
「東雲の化けの皮が剝がれたのか……」
その通りだよ、組長。
さっきの作戦は無残に散った。でも、作戦が分かったからと言って、全ての人が私から直撃を取れるわけじゃない。今みたいに簡単に言うけど、普通の人ならたとえそれが分かったところで、対処できるはずもないのだ。
例えば、好きな牌で待つことなんて容易にはできないし、相手の手牌を2つ推測するのも、相当頭の切れるやつじゃないと無理だ。これは、アカギだからこそ私を討ち取ることができたんだ。
「これでアカギが3500万、東雲は1300万……これは勝負をオリたくてもオリられない金額だな。差額は2200万か」
「……っ」
正直、かなりきつい。
泣き出しそうなくらいだ。
それなのに、私というのはよく分からない生き物で、この状況を楽しんでいる。私が負けそうになるなんて、本当に久しぶり。
やっぱり、赤木しげるが私の最高の相手なんだ。
組長の計らいで、一旦ここでお茶休憩を入れた。
治さんは私以上に泣き出しそうだった。
「東雲さん、もうやめましょう。皆さんに謝って、終わりにしましょうよ。ね、アカギさんも許してくれるでしょ?」
「治さん……。勝負をオリるには1500万必要なんですよ。それに私、オリる気ないですし」
「ええっ! ア、アカギさん、何とかしてくださいよ」
アカギは一服していたが、私を見て、一言言った。
「良いよ……今オリるなら1500万は免除する」
「や、やった! 東雲さん、オリましょう」
「まさか。オリないよ」
「な、なんで……」
私の気持ちは変わらない。
「クク……。治、諦めな」
「でもでも、4000万なんて普通、返せませんよ? ……命で払うことになるかも」
「それは最初から、覚悟してますから」
ここでオリて生き永らえたところで、私は自己嫌悪に陥って自殺してしまうかもしれない。赤木しげると会って勝負したいと思った時から、それを目標に生きてきた。こんなすごい勝負の後は、雀荘でもう小さな金を稼ぐ気も失せてしまう。
それに、オリたらきっと、二度と赤木しげるには会えない。それは私にとって、もっと辛いことだった。
アカギは私の様子を見て、口を開いた。
「命だけで4200万払えると思ってるんなら、考え直した方が良い」
「……え?」
「……そこまで分かってたなんて」
「ど、どういうこと……?」
治さんが首をかしげた。周りの人も分かってないらしい。当たり前だ。
「分かってしまえば簡単な仕掛け。普通、読みが違っていればほとんどが自分を疑うが、オレは違った。自分は間違えていないという判断の下、実際の手牌と読みの違いとを比べ、辻褄の合う事実を考えた。1回目では、それはただの疑惑だった。が、2回目、東雲のツモでそれが確信に変わった。つまり、東雲は2つ同時に別の麻雀を打っていた」
アカギの言ったことは全て正しかった。
普通なら、まず “自分が間違えていないという判断の下” にいることさえできないはずなのに、彼にはそれができたんだ。
彼は本当の意味で、自分だけを信じている。
私は下唇を噛んだ。
「さっきからこの女を見ていると、どうも自分を偽ることが得意らしい。この作戦も、見破られなければ、ほぼ無敵の技。しかし、それが分かってしまった者には逆に自分の手牌を晒しているのも同じ」
「なるほど、設定を作っていることさえ分かれば、本物の手牌もすぐに見えてくる」
「そして、“もう1つの麻雀”に囚われ、捨てざるを得ない牌が途中で出てくる。そこまで分かれば、その牌で待っていれば必ず、東雲に振り込ませることができる」
「……」
私は何も言えず黙ってしまった。
「さっきオレが裸単騎だった時、本当に裸だったのは東雲、この化け狐だった」
「東雲の化けの皮が剝がれたのか……」
その通りだよ、組長。
さっきの作戦は無残に散った。でも、作戦が分かったからと言って、全ての人が私から直撃を取れるわけじゃない。今みたいに簡単に言うけど、普通の人ならたとえそれが分かったところで、対処できるはずもないのだ。
例えば、好きな牌で待つことなんて容易にはできないし、相手の手牌を2つ推測するのも、相当頭の切れるやつじゃないと無理だ。これは、アカギだからこそ私を討ち取ることができたんだ。
「これでアカギが3500万、東雲は1300万……これは勝負をオリたくてもオリられない金額だな。差額は2200万か」
「……っ」
正直、かなりきつい。
泣き出しそうなくらいだ。
それなのに、私というのはよく分からない生き物で、この状況を楽しんでいる。私が負けそうになるなんて、本当に久しぶり。
やっぱり、赤木しげるが私の最高の相手なんだ。
組長の計らいで、一旦ここでお茶休憩を入れた。
治さんは私以上に泣き出しそうだった。
「東雲さん、もうやめましょう。皆さんに謝って、終わりにしましょうよ。ね、アカギさんも許してくれるでしょ?」
「治さん……。勝負をオリるには1500万必要なんですよ。それに私、オリる気ないですし」
「ええっ! ア、アカギさん、何とかしてくださいよ」
アカギは一服していたが、私を見て、一言言った。
「良いよ……今オリるなら1500万は免除する」
「や、やった! 東雲さん、オリましょう」
「まさか。オリないよ」
「な、なんで……」
私の気持ちは変わらない。
「クク……。治、諦めな」
「でもでも、4000万なんて普通、返せませんよ? ……命で払うことになるかも」
「それは最初から、覚悟してますから」
ここでオリて生き永らえたところで、私は自己嫌悪に陥って自殺してしまうかもしれない。赤木しげると会って勝負したいと思った時から、それを目標に生きてきた。こんなすごい勝負の後は、雀荘でもう小さな金を稼ぐ気も失せてしまう。
それに、オリたらきっと、二度と赤木しげるには会えない。それは私にとって、もっと辛いことだった。
アカギは私の様子を見て、口を開いた。
「命だけで4200万払えると思ってるんなら、考え直した方が良い」
「……え?」