3.対峙
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私は開始早々、自分自身を2つ作った。
実際の手牌と、設定上の手牌。何より難しいのは、最終的に2つの手牌が同じになってしまうのを防ぐことと、私の本当の待ちを炙り出すように仕組むこと。
これはきっと、私にしか出来ない。昔から繕ってきた。私なら化けられる、誰よりも上手に。
初めはそれをするような手牌でもなく、流していた。しかし、機は熟した。私は配牌を見てチャンスだと思うと、作戦を開始した。
今私の頭の中には数字と記号が入り混じっている。そして最高の設定を作り、それを装って別の手を作る。似ている手に思えるかもしれないが、本質的な面からすると全く違う手。
史上最高に頭を使っている気がする。捨て牌だけじゃない、どこからどう切るか、その時の目線はどこに置くか。そういった1つ1つの所業が全て私の渾身の演技・ブラフ・そして勝負そのものなのだ。身体中の血が沸き立つ。
そしてそれは上手くいった。やはり、アカギは私の捨て方から所作から何まで分析していたようで、私の設定上の手牌の安牌をバシバシ切っていく。しかし、それを討ち取るのが私。
「それだよ、ロン」
「……!」
嵌った。いや、嵌めた。この私が、赤木しげるを。そして高得点を手にし、次局へ進む。
「アカギから直撃を取ったぞ……!」
周りも興奮しているようだ。
「……フフ」
今回初めて、アカギは自分の読みを外した。いや、実を言うと外れてはいないのだが。私がわざわざ遠回りな方法でアカギのみを狙ったのだ。例えるなら、手牌の影武者、囮作戦。
普通の人なら、この外しが精神的なショックを起こし、次からの打ちがバラバラになったりするものだが、やはりそこは赤木しげる、そんな素振りは一切見せない。
しかし、今は私の攻め時。後々、何か細工をしているとはバレるだろうが、本当の手牌の危険牌をそのまま察知されることは難しいだろう。これぞ、本来の麻雀。いくら天才だからって、全てを読まれてたまるか。
「あんたとの麻雀、面白いよ。……久々だ」
「っ……! それは良かった。私もなの」
面白い。心の底からそう思う。
アカギにもそう思えてもらったことは、正直言って光栄だった。心の中でどこか、自分よりアカギの方が格上だと思ってしまっていたのだ。でも、勝負の間は、対等な関係。私がアカギさん、と呼ぶことなく、アカギと呼ぶように。
気付けば、この夜がもっと続いて欲しいとさえ思い始めていた。
3.対峙〈完〉
実際の手牌と、設定上の手牌。何より難しいのは、最終的に2つの手牌が同じになってしまうのを防ぐことと、私の本当の待ちを炙り出すように仕組むこと。
これはきっと、私にしか出来ない。昔から繕ってきた。私なら化けられる、誰よりも上手に。
初めはそれをするような手牌でもなく、流していた。しかし、機は熟した。私は配牌を見てチャンスだと思うと、作戦を開始した。
今私の頭の中には数字と記号が入り混じっている。そして最高の設定を作り、それを装って別の手を作る。似ている手に思えるかもしれないが、本質的な面からすると全く違う手。
史上最高に頭を使っている気がする。捨て牌だけじゃない、どこからどう切るか、その時の目線はどこに置くか。そういった1つ1つの所業が全て私の渾身の演技・ブラフ・そして勝負そのものなのだ。身体中の血が沸き立つ。
そしてそれは上手くいった。やはり、アカギは私の捨て方から所作から何まで分析していたようで、私の設定上の手牌の安牌をバシバシ切っていく。しかし、それを討ち取るのが私。
「それだよ、ロン」
「……!」
嵌った。いや、嵌めた。この私が、赤木しげるを。そして高得点を手にし、次局へ進む。
「アカギから直撃を取ったぞ……!」
周りも興奮しているようだ。
「……フフ」
今回初めて、アカギは自分の読みを外した。いや、実を言うと外れてはいないのだが。私がわざわざ遠回りな方法でアカギのみを狙ったのだ。例えるなら、手牌の影武者、囮作戦。
普通の人なら、この外しが精神的なショックを起こし、次からの打ちがバラバラになったりするものだが、やはりそこは赤木しげる、そんな素振りは一切見せない。
しかし、今は私の攻め時。後々、何か細工をしているとはバレるだろうが、本当の手牌の危険牌をそのまま察知されることは難しいだろう。これぞ、本来の麻雀。いくら天才だからって、全てを読まれてたまるか。
「あんたとの麻雀、面白いよ。……久々だ」
「っ……! それは良かった。私もなの」
面白い。心の底からそう思う。
アカギにもそう思えてもらったことは、正直言って光栄だった。心の中でどこか、自分よりアカギの方が格上だと思ってしまっていたのだ。でも、勝負の間は、対等な関係。私がアカギさん、と呼ぶことなく、アカギと呼ぶように。
気付けば、この夜がもっと続いて欲しいとさえ思い始めていた。
3.対峙〈完〉