3.対峙
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次局、アカギは打ち方を変えた。私の動きを読んでなのか、捨てた牌をどんどん鳴かれ、場を荒らされる。他家もそれに感化されたのか、鳴き麻雀になり、ツモ順がコロコロ変わる。
ここで私だけが鳴かなかった。というかそのメリットがなく、場に取り残される形となった。私は自分から運が離れていくのを感じた。
他家に振り込んで流すという手もあるが、今は点数も低く、1000万を賭けているのだから、さっきまでのアカギのように振る舞うことも出来ない。どこにも振り込みたくないし、鳴かせて和了に近づけたくもない、という意思が働いてか、手打ちの牌を出した途端に、ああ聞きたくなかった、アカギのロンという声がこだまする。
「ようやく揺れたか」
アカギが自信ありげに呟いた。
「今のはプレゼントだから」
強がりを言ったが、揺れたのは事実だ。
いや、揺らされた。
このくらい、普段なら何ともない。
が、何かに自分が呑まれていくように思えた。
直感的に、1000万は取られると思った。
そしてその予感は否が応にも現実となり、アカギのトップで勝負を終える。
結果、アカギ1000万・私900万ということになった。
「これでアカギの逆転か」
「だがまだ差は100万だ、どう転ぶかは分からない」
「……アカギさん、東雲さん」
外野の声には耳を貸さない。背筋を伸ばしたまま、次の牌をめくると、一索。
次の賭け金はなんと最低額、100万。少しがっかりである。
それを見たアカギは、煙草に火をつけた。
言うまでもなく、オリている。100万なんて要りません、って?
じゃあ私も併 せてあげる。
そう思って、次の勝負ではオリ続けた。
しかし、聴牌の形を崩すほどじゃない。打ち回せてしまう。
すると、アカギが私に振り込んだ。わざとだ。和了れ、ということか。拒否したところで双方にメリットはない。
とりあえず和了るものの、どこか納得いかない。考えてみれば、私はアカギに従っているようなものだ。
「案外、狐って素直なんだな」
「絶対に懐きはしないけどね」
「クク……今度試してみるか」
横目で見られながらそう言い、煙を吐き出す彼の一連の動きに、図らずも目を奪われる。
悔しいことに、見れば見るほど男前なのだ。
何を意識しているのだろう、と思う。
命の奪い合いの最中だというのに。
ほんとやめて。
牌を混ぜる時に一瞬手が触れ合うのとか、離れてしまうとか。
ああ、違う。私の恋人は麻雀牌なんだった。
きっと、私はこの勝負に興奮してしまって、勘違いしているだけだ。当たり前。
……当たり前でしょ。
私がそんなことを考えている間、アカギは私を黙って見ていた。
ここで私だけが鳴かなかった。というかそのメリットがなく、場に取り残される形となった。私は自分から運が離れていくのを感じた。
他家に振り込んで流すという手もあるが、今は点数も低く、1000万を賭けているのだから、さっきまでのアカギのように振る舞うことも出来ない。どこにも振り込みたくないし、鳴かせて和了に近づけたくもない、という意思が働いてか、手打ちの牌を出した途端に、ああ聞きたくなかった、アカギのロンという声がこだまする。
「ようやく揺れたか」
アカギが自信ありげに呟いた。
「今のはプレゼントだから」
強がりを言ったが、揺れたのは事実だ。
いや、揺らされた。
このくらい、普段なら何ともない。
が、何かに自分が呑まれていくように思えた。
直感的に、1000万は取られると思った。
そしてその予感は否が応にも現実となり、アカギのトップで勝負を終える。
結果、アカギ1000万・私900万ということになった。
「これでアカギの逆転か」
「だがまだ差は100万だ、どう転ぶかは分からない」
「……アカギさん、東雲さん」
外野の声には耳を貸さない。背筋を伸ばしたまま、次の牌をめくると、一索。
次の賭け金はなんと最低額、100万。少しがっかりである。
それを見たアカギは、煙草に火をつけた。
言うまでもなく、オリている。100万なんて要りません、って?
じゃあ私も
そう思って、次の勝負ではオリ続けた。
しかし、聴牌の形を崩すほどじゃない。打ち回せてしまう。
すると、アカギが私に振り込んだ。わざとだ。和了れ、ということか。拒否したところで双方にメリットはない。
とりあえず和了るものの、どこか納得いかない。考えてみれば、私はアカギに従っているようなものだ。
「案外、狐って素直なんだな」
「絶対に懐きはしないけどね」
「クク……今度試してみるか」
横目で見られながらそう言い、煙を吐き出す彼の一連の動きに、図らずも目を奪われる。
悔しいことに、見れば見るほど男前なのだ。
何を意識しているのだろう、と思う。
命の奪い合いの最中だというのに。
ほんとやめて。
牌を混ぜる時に一瞬手が触れ合うのとか、離れてしまうとか。
ああ、違う。私の恋人は麻雀牌なんだった。
きっと、私はこの勝負に興奮してしまって、勘違いしているだけだ。当たり前。
……当たり前でしょ。
私がそんなことを考えている間、アカギは私を黙って見ていた。