2戦目、次はどう出るか分からないので堅く打っていたが、アカギの態度が特に変わった様子はなかった。まだ私の打ち方を見ているというの？ それなら、私はあまり癖を出さず打てていることになる。
何より、アカギのリーチが入る時は、たまたま私の配牌が悪く、ベタオリしてしまっていた。そのリーチは私の反応を見るためのものだろうが、幸いにも運が味方して、余分な情報は出さなかった。

アカギがその調子なので、私は必然的に他家から点を稼ぎ、トップになる。これじゃつまらないと思いつつも、まだ彼を嵌める策も思いつかない。そして、私は500万を手にした。これで900万。

障害もなく1000万近い金を手に入れた。逆に怖い。

「何を考えているの？ すごく気になる」
「今のところ、あんたは何の恐怖も感じてないんだな、と思ってね。その真っ直ぐな打ち方は嫌いじゃないけど、それはあんたの本当の打ちじゃない」
「ふふ、その言葉、オウム返ししましょうか」
「クク……手厳しいね」

アカギは、そう言って眼光を見せると、次の賭け金を決めるための牌を素早く表にした。

「中……倍プッシュ、1000万だ」

くらりとしそうになる。アカギのオーラに圧倒されたからか、その金額が私の求めていたものだったからか。
字牌だからさっきの500万の倍の賭け金ということだ。

とにかく、様子見をしていても始まらないので、私はさっきまでと同じように打った。
が、数巡目、

「ロン」

私への直撃だった。3900。リーチもかけず、鳴かず。元々配牌が良かったんだろう、もっと高めも狙えたはず。しかし、わざわざ真っ直ぐ打っていた私を狙ってきた。
点数は痛くもかゆくもないが、これは赤木しげるが動き始めたことを明確に表していた。1000万という大勝負となって、ようやく。
それだけの金を賭けているのだ、私はこの半荘、“見”に回るためだけに、下手にオリることは出来ない。
いざ、真っ向勝負。

そして今度はアカギのリーチ。
今までの傾向から見て、こう打てば、まずは命を繋げるというのは発見した。が、それさえも罠だったらと考えると怖い。
それでも私はわざと危険牌を打った。いや、周りから見ると危険牌に見えるだろうが、これは相手が“赤木しげる”であると考えると安全牌だとも呼べる。彼がこの状況で、両面待ちをするとは思えないからだ。これはただの勘だが、単騎待ち、またはシャボ待ちだろう。今しているのはギャンブルなのだ。私は私の理を通す。

アカギの瞳をちらりと見ると、やるね、と言われた。どこまで思考が読まれているのだろうか。結局、アカギのシャボ待ちに下家が引っかかった。この局、私からの直撃は取れないと察したのだろう。私は認められたみたいで少し嬉しかった。

しかし、そんな気持ちは次の局でいとも容易くひっくり返されることとなる。