20.狐日和[終]
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賭場で勝負を始めていくばくか経った。
私たちは連戦連勝……、いや、全ての勝負に勝っているわけではないが、勝つべき時に必ず勝つような方式で着々と勝ちを重ねていった。
しかし、私はしばらくして御手洗いに行きたくなった。ここを取り仕切っているヤクザにその旨を話し、少し席を外すことにした。
一息ついてからその場所に戻ると、アカギが荷物を持って出口の方に歩いていた。
「あれ? もう終わり?」
「……あー、」
アカギは私を見てから口角を上げた。
「逃げるよ」
「えっ?」
意味も分からずアカギについていく。そそくさと屋敷を出ると、後ろの方から怒号が聞こえてきた。
どうやら、彼らは私たちを血まなこで探し始めたらしい。私たちは歩みを早めて宿に向かった。
「勝ち逃げ?」
「まあ、そんなとこ」
アカギは笑った。
「あんたを人質に取ったから、返して欲しけりゃ金を置いていけとか言いやがったのさ」
「えぇ?」
私は別に、人質に取られてない。
ただ御手洗いに向かっただけで……。
ああ、なるほど。私の姿が見えないことを利用してアカギを拘束しようとしたのね。
本当なら私が御手洗いから出た時、実際に私を人質に取るつもりだったと思うんだけど。あちら側の伝達ミスかなんなのか、私は人質には取られず無事だったってわけね。多分。
「ちょうど目を盗んで部屋から抜け出し、あんたを見つけようとしたら……。フフ、案外その辺でケロッとしてたもんだからさ。もうこのまま逃げちまうのが良いな」
「うん」
……あ、後ろからヤクザたちの声がする。やつらがこっちに近づいてきている。
「走れるか」
尋ねられて、私は自信なさげに頷いた。
「行くよ」
アカギはためらうことなく私の手を引いて走り、追っ手から離れた。
速く、もっと速く走らなきゃ。
「はっ、はっ」
それなのに私は、アカギと街中で手を繋いだのは初めてだなぁ、なんてうかれてしまって、もう、この鬼ごっこが一生続けば良いのになんて考えてしまっていた。
「はぁっ、……はぁ」
なんとか宿までたどり着くが、息が切れて……あー、もう走れない。アカギは取っておいた部屋に私を押し込んでから、クククと笑った。
「なに、笑ってんの、よっ」
なんて言いつつ、私もあははと声を上げて笑った。爽快感に溢れていて、なんだかとっても良い気分。
アカギは私を見てから一息ついた。
「オレは、舞美が無事ならそれで良いんだぜ」
思わず、耳を疑った。
「え……?」
「……どうしたの、東雲。素っ頓狂な顔して」
「え、今なんて言った?」
アカギは、いつものように煙草に火をつけた。
「……さぁね」
私たちは連戦連勝……、いや、全ての勝負に勝っているわけではないが、勝つべき時に必ず勝つような方式で着々と勝ちを重ねていった。
しかし、私はしばらくして御手洗いに行きたくなった。ここを取り仕切っているヤクザにその旨を話し、少し席を外すことにした。
一息ついてからその場所に戻ると、アカギが荷物を持って出口の方に歩いていた。
「あれ? もう終わり?」
「……あー、」
アカギは私を見てから口角を上げた。
「逃げるよ」
「えっ?」
意味も分からずアカギについていく。そそくさと屋敷を出ると、後ろの方から怒号が聞こえてきた。
どうやら、彼らは私たちを血まなこで探し始めたらしい。私たちは歩みを早めて宿に向かった。
「勝ち逃げ?」
「まあ、そんなとこ」
アカギは笑った。
「あんたを人質に取ったから、返して欲しけりゃ金を置いていけとか言いやがったのさ」
「えぇ?」
私は別に、人質に取られてない。
ただ御手洗いに向かっただけで……。
ああ、なるほど。私の姿が見えないことを利用してアカギを拘束しようとしたのね。
本当なら私が御手洗いから出た時、実際に私を人質に取るつもりだったと思うんだけど。あちら側の伝達ミスかなんなのか、私は人質には取られず無事だったってわけね。多分。
「ちょうど目を盗んで部屋から抜け出し、あんたを見つけようとしたら……。フフ、案外その辺でケロッとしてたもんだからさ。もうこのまま逃げちまうのが良いな」
「うん」
……あ、後ろからヤクザたちの声がする。やつらがこっちに近づいてきている。
「走れるか」
尋ねられて、私は自信なさげに頷いた。
「行くよ」
アカギはためらうことなく私の手を引いて走り、追っ手から離れた。
速く、もっと速く走らなきゃ。
「はっ、はっ」
それなのに私は、アカギと街中で手を繋いだのは初めてだなぁ、なんてうかれてしまって、もう、この鬼ごっこが一生続けば良いのになんて考えてしまっていた。
「はぁっ、……はぁ」
なんとか宿までたどり着くが、息が切れて……あー、もう走れない。アカギは取っておいた部屋に私を押し込んでから、クククと笑った。
「なに、笑ってんの、よっ」
なんて言いつつ、私もあははと声を上げて笑った。爽快感に溢れていて、なんだかとっても良い気分。
アカギは私を見てから一息ついた。
「オレは、舞美が無事ならそれで良いんだぜ」
思わず、耳を疑った。
「え……?」
「……どうしたの、東雲。素っ頓狂な顔して」
「え、今なんて言った?」
アカギは、いつものように煙草に火をつけた。
「……さぁね」