「なんで？」

急にアカギが消えた。彼の荷物と共に。
帰ってこない。アカギは消えてしまった。
私は絶望に打ちひしがれた。
せっかく、手に入れたと思ったのに。

「アカギ……」

もう、彼との勝負は決したのか。

私は、飽きられた。
やっぱり、彼にはついていけないのか。

私には、もう彼を探す気などなくて、悲しむこともしたくなくて、結局、勝負の世界にまた足を踏み入れることになる。やっぱり、これだ。もうアカギには会えないだろう。私の恋人は一生麻雀牌なんだ。今まで大して他人に興味を持たなかっただけに、赤木しげるは私の中に多くを遺して去っていった。

何がいけなかったのか分からないけれど、まぁ、結局、大した理由なんて無いんでしょう？
もう二度と、あなたみたいな人には会えない気がする。

だって、もう、アカギが消えてから1週間経つ。彼はもうここに帰ってこないんだ。

私は、それでも開き直って、この辺りの賭場を当たったり、雀荘に出向いたり、要は、ただの九尾狐に戻ろうとした。
今までと同じことをすれば良いだけなの。

そもそも、アカギに寄り添うことができるわけないんだって。
良くても、私は狐。言ってみれば妖怪でしょ。
それに対して、あの人は悪魔。妖怪なんてチンケなものとは比べ物にならない。

でも、私も彼も、この人の世では生きづらい。その点において、私たちは似た者同士だった。他の人みたいな生き方はできなくて、何か普通とかけ離れたこと、つまり、刺激を求めていた。

他の人とは深く関わらなかったし、そうしようと思わなかった。でも、そんな私が、ようやく受け入れた相手が、あなただったのに。
よりによって白い悪魔。あの堕天使に惚れちゃうなんて。

忘れられない。
今だって、目の前の相手と麻雀を打っていても、赤木しげるのことを考えてしまう。

赤木しげるとの勝負が一番、刺激に満ち溢れていたのに……

私は、さっさと勝負を終わらせて、またあのアパートに戻った。