15.矜持
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「それで、私はあなたと勝負できたというわけよ」
私はふうとため息をついた。
「以上」
アカギはふうん、と言った。
「あの時、チキンランの連中に絡まれたから銃を使ったんだけど……あんたがそいつらに会ってたとはね」
「そうだったのね。本当は、あなたのこと、ずっと前から知っていたの」
でも、あの頃の私は若かったから、必死になって探そうとは思わなかった。あなたは消えてしまっていたし、私も彼のことは忘れようと思った。実際、忘れかけた。
でも、彼はこの世界に、再び舞い降りてきた。
「だから——こうして、アカギと丁半ができるというのも、素晴らしいことよね」
私はサイコロを取り出してにやりと笑った。
「オレもあんたの存在は知ってたよ」
アカギは、サイコロを手で弄んだ。
「変わった女がいる、とだけ。その時は東雲なんて名前は知らなかった」
「そうなの」
存在だけでも耳に入っていたのなら、私がアカギを見つけようとしてした行動は、間違ってなかったんだ。
「もう半年くらいか。あんたと、あの日初めて出逢ってから」
「雀荘で会った時でしょ? 実はその時、本当はとても勝負したかったの。目の前の男が赤木しげるだってほぼ確信してた」
「へえ。でも、あんたはそのまま消えたじゃない」
「だって、こんなところで勝負しちゃ、勿体ないと思ったから。絶対後でまた逢えるって、自分の直感を信じたの」
その判断が正しかったことは、今になってとてもよく分かる。もしそこで安い勝負なんてしていたら、私は適当に毟られて、二度とアカギは私の前に姿を現さなかっただろう。
私が身の破滅を賭けることもなかったし、アカギが私を買うこともなかった。
「てことは、」
アカギは笑った。
「あんたは、その頃からオレに惚れてたわけだ」
「バカ言わないで」
私は、アカギの手からサイコロを奪った。
「そうじゃないことを証明するために、私はこれを振るんでしょ」
「そしてそれを当てるのがオレ」
アカギは、顎に手を当てた。
「でも、例えばオレがそれを外したところで、あんたが惚れてない証明にはならない」
「そうだけど、でも、勝負の決まり的に、それは仕方のないことでしょ?」
「フフ……。まぁ、それもそうだ。オレはあんたに認めさせるけどね。どんな手を使ってでも」
私は頷いて、「やってみなさいよ」と挑発した。
15.矜持〈完〉
私はふうとため息をついた。
「以上」
アカギはふうん、と言った。
「あの時、チキンランの連中に絡まれたから銃を使ったんだけど……あんたがそいつらに会ってたとはね」
「そうだったのね。本当は、あなたのこと、ずっと前から知っていたの」
でも、あの頃の私は若かったから、必死になって探そうとは思わなかった。あなたは消えてしまっていたし、私も彼のことは忘れようと思った。実際、忘れかけた。
でも、彼はこの世界に、再び舞い降りてきた。
「だから——こうして、アカギと丁半ができるというのも、素晴らしいことよね」
私はサイコロを取り出してにやりと笑った。
「オレもあんたの存在は知ってたよ」
アカギは、サイコロを手で弄んだ。
「変わった女がいる、とだけ。その時は東雲なんて名前は知らなかった」
「そうなの」
存在だけでも耳に入っていたのなら、私がアカギを見つけようとしてした行動は、間違ってなかったんだ。
「もう半年くらいか。あんたと、あの日初めて出逢ってから」
「雀荘で会った時でしょ? 実はその時、本当はとても勝負したかったの。目の前の男が赤木しげるだってほぼ確信してた」
「へえ。でも、あんたはそのまま消えたじゃない」
「だって、こんなところで勝負しちゃ、勿体ないと思ったから。絶対後でまた逢えるって、自分の直感を信じたの」
その判断が正しかったことは、今になってとてもよく分かる。もしそこで安い勝負なんてしていたら、私は適当に毟られて、二度とアカギは私の前に姿を現さなかっただろう。
私が身の破滅を賭けることもなかったし、アカギが私を買うこともなかった。
「てことは、」
アカギは笑った。
「あんたは、その頃からオレに惚れてたわけだ」
「バカ言わないで」
私は、アカギの手からサイコロを奪った。
「そうじゃないことを証明するために、私はこれを振るんでしょ」
「そしてそれを当てるのがオレ」
アカギは、顎に手を当てた。
「でも、例えばオレがそれを外したところで、あんたが惚れてない証明にはならない」
「そうだけど、でも、勝負の決まり的に、それは仕方のないことでしょ?」
「フフ……。まぁ、それもそうだ。オレはあんたに認めさせるけどね。どんな手を使ってでも」
私は頷いて、「やってみなさいよ」と挑発した。
15.矜持〈完〉