15.矜持
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治さんの後ろにはそのアカギがいる。
だから、私は慎重に言葉を返すことに決めた。
「好きって、どうしてそう思うの?」
「えー、あんな人と一緒に住んでたら普通、好きになりますよ?」
「そうですかねぇ。確かに、他にはいないような人だけど」
「あの人は……本物の天才ですからね」
治さんは少し哀しげに頷いた。
私は、アカギに聞こえるように挑発的に言った。
「アカギだって私と住んでるんだから、逆に、アカギが私に恋心を抱いてもそんなにおかしくないんじゃない?」
「あー! ……それ、無いように見えて、実はあったりしそうですよね」
治さんは、そこまで話してから、ふと、我に返ったようだ。
そして、何を思ったか、後ろの席を見た。
治さんは、すぐ後ろの白髪の客に気がついた。
「えっ⁈ ……あ、アカギ、さん?」
呼びかけると、その男は煙草を灰皿に置いて、ゆっくりと振り向いた。
「正解」
そこにいたのは、眼を細めて笑う、赤木しげる。
「ええぇ⁉︎ なんっ?」
アカギはにやりとした。
「ど、どうしてここが分かったんですか! 僕、例の喫茶店としか伝えてないのに」
「悪いな、治。たまたまさ」
「たまたまって……、喫茶店なんて他にもたくさんあるのに……」
治さんは、絶望的な顔をしたが、ふと、彼がどういう人間かを思い出したようで、観念したような表情になった。
「流石、アカギさんです」
「本当にね」
私は同調した。
「ていうか、いつからですか……! 東雲さんも、気付いてたなら教えてくださいよー」
「ごめんね」
「もうっ!」
アカギは、煙草を吸ってから、治さんに話しかけた。
「で、どう? オレから東雲は奪えそう?」
「う……。今振られちゃったの、アカギさんも聞いてましたよねえ! 意地悪なんだから」
治さんが怒ると、アカギはフフ、と笑った。
「そいつ、オレに惚れてるみたいだからさ」
「は、はぁ?」
今度は、私が怒る番だった。
「誰が、誰が惚れてるって? それはアカギでしょう! わざわざ聞き耳立ててたってことは」
「いいや、興味ねぇな。あんたが誰を好いてるかなんて。」
「……嘘をつくのが下手になったのね」
「ハ、言うじゃない。治から言い寄られて、何か自信でもついたの」
「ちょ、ちょっとアカギさん……!」
アカギはなんだか楽しそうだった。
「な、治、言っただろ。この女を落とすには正攻法じゃ駄目って」
「えぇ……。じゃあ、アカギさんは落とせる算段でもあるんですか」
「まぁね。こう見えて、あとはこの女に認めさせれば良いだけなんだ。その感情の名前をね」
「ど、どうやって? この状況を見ると、無理そうですけど?」
「それは言えねぇな。……が、簡単なこと。いずれ分かるさ。なぁ、東雲」
治さんが唖然としていると、アカギは、
「帰るぞ」
と言った。
「あ、うん……」
あれだけアカギに噛み付いていた私は、うって変わって従順になり、ささっと立ちあがって、治さんに挨拶をした。
「もう行っちゃうんですね」
「うん……、でも、また治さんと話したいです」
「はぁ、本当に、東雲さんに嫌われなくてよかった。それだけが怖かったです」
「嫌わないですよ。嬉しかったですし」
私は笑った。つられて、治さんも微笑む。
「今日はありがとう。お先に」
「……いえ。僕の方こそ」
「じゃあ」
外に出ると、アカギが私を見下ろして、言った。
「あんたも、そろそろ決着をつけたいと思わない?」
だから、私は慎重に言葉を返すことに決めた。
「好きって、どうしてそう思うの?」
「えー、あんな人と一緒に住んでたら普通、好きになりますよ?」
「そうですかねぇ。確かに、他にはいないような人だけど」
「あの人は……本物の天才ですからね」
治さんは少し哀しげに頷いた。
私は、アカギに聞こえるように挑発的に言った。
「アカギだって私と住んでるんだから、逆に、アカギが私に恋心を抱いてもそんなにおかしくないんじゃない?」
「あー! ……それ、無いように見えて、実はあったりしそうですよね」
治さんは、そこまで話してから、ふと、我に返ったようだ。
そして、何を思ったか、後ろの席を見た。
治さんは、すぐ後ろの白髪の客に気がついた。
「えっ⁈ ……あ、アカギ、さん?」
呼びかけると、その男は煙草を灰皿に置いて、ゆっくりと振り向いた。
「正解」
そこにいたのは、眼を細めて笑う、赤木しげる。
「ええぇ⁉︎ なんっ?」
アカギはにやりとした。
「ど、どうしてここが分かったんですか! 僕、例の喫茶店としか伝えてないのに」
「悪いな、治。たまたまさ」
「たまたまって……、喫茶店なんて他にもたくさんあるのに……」
治さんは、絶望的な顔をしたが、ふと、彼がどういう人間かを思い出したようで、観念したような表情になった。
「流石、アカギさんです」
「本当にね」
私は同調した。
「ていうか、いつからですか……! 東雲さんも、気付いてたなら教えてくださいよー」
「ごめんね」
「もうっ!」
アカギは、煙草を吸ってから、治さんに話しかけた。
「で、どう? オレから東雲は奪えそう?」
「う……。今振られちゃったの、アカギさんも聞いてましたよねえ! 意地悪なんだから」
治さんが怒ると、アカギはフフ、と笑った。
「そいつ、オレに惚れてるみたいだからさ」
「は、はぁ?」
今度は、私が怒る番だった。
「誰が、誰が惚れてるって? それはアカギでしょう! わざわざ聞き耳立ててたってことは」
「いいや、興味ねぇな。あんたが誰を好いてるかなんて。」
「……嘘をつくのが下手になったのね」
「ハ、言うじゃない。治から言い寄られて、何か自信でもついたの」
「ちょ、ちょっとアカギさん……!」
アカギはなんだか楽しそうだった。
「な、治、言っただろ。この女を落とすには正攻法じゃ駄目って」
「えぇ……。じゃあ、アカギさんは落とせる算段でもあるんですか」
「まぁね。こう見えて、あとはこの女に認めさせれば良いだけなんだ。その感情の名前をね」
「ど、どうやって? この状況を見ると、無理そうですけど?」
「それは言えねぇな。……が、簡単なこと。いずれ分かるさ。なぁ、東雲」
治さんが唖然としていると、アカギは、
「帰るぞ」
と言った。
「あ、うん……」
あれだけアカギに噛み付いていた私は、うって変わって従順になり、ささっと立ちあがって、治さんに挨拶をした。
「もう行っちゃうんですね」
「うん……、でも、また治さんと話したいです」
「はぁ、本当に、東雲さんに嫌われなくてよかった。それだけが怖かったです」
「嫌わないですよ。嬉しかったですし」
私は笑った。つられて、治さんも微笑む。
「今日はありがとう。お先に」
「……いえ。僕の方こそ」
「じゃあ」
外に出ると、アカギが私を見下ろして、言った。
「あんたも、そろそろ決着をつけたいと思わない?」