「良いなって言うのは……？」

私は恐る恐る聞いた。

「だから、東雲さんが気になってるんです……、ひとりの女性として……！」

治さんは、そこまで言ってから、「ここまで言うなんて」などと顔を赤に染めていた。

ああ、とうとう、はっきりと言ってしまわれた。私が言わせたというのもあるけれど、でも、友達として、とかでは無かったんだ。
私は、後ろのアカギが気になったけれど、とりあえず断る方向で話を進めた。

「治さんのことは好きだけど……ごめんなさい。でも、ありがとう」
「え！ っと、」

治さんは一瞬目を見開いたが、すぐに元の表情に戻った。

「でも、やっぱりそうですよね。そうだと思った」

あまりにあっさりと告白とその答えが終わり、私は拍子抜けした。

「え？」
「いや……僕じゃ無理だって思ってました」
「じゃあ、どうして？」
「なんでしょう……。とりあえず、この気持ちを知って欲しかったんですかね？ それで振ってもらえないと、僕はずっと片思いすることになりますし」
「え、でも、悲しくないんですか？」
「そりゃあ、悲しいですけど、」

治さんは俯いて言った。
確かに、いつも通り振舞ってはいるが、心の奥はやはり悲しんでいる。

「それでも東雲さんがちゃんと振ってくれたので良かったです。忘れられるかは置いておいて……後悔は、ないですよ」
「そういうもんなんですか？」

私には恋愛は良く分からない。ただ、アカギと一緒にいたいというだけ。

「それより、東雲さん。建前なしで、僕を振った理由教えてくださいよ」
「えぇ？」
「次に向けて直しますから。顔ですか、このそばかすですか。それともなんですか」

治さんって、こんな人だったっけ？
どうやら、色々吹っ切れているようだ。
私は、くすっと笑った。

「顔は、整ってると思いますよ。かわいい感じがするし。そばかすも、かわいい」
「えぇ。かわいいって、なんですかソレ。あ、だから恋愛対象に見られないとかですかね」
「うーん。どうかな……、引ったくり捕まえてくれた時は格好良いとも思ったし、そういう訳でもないと思いますよ？ 治さんは魅力的だから、そういうのは大丈夫ですって」
「そ、そうですか？ 照れますね……もう振られちゃったけど。じゃあ、やっぱり、あれですよね」
「え？」
「やっぱり東雲さん、アカギさんのこと、好きなんですよね？」
「えっ？」

私は、冷や汗をかいた。