15.矜持
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翌朝、私は喫茶店に赴いた。
外に出るとき、アカギはまだ家にいた。この後、昼寝をするとか、煙草を吸うとかするんだろう。
そこへ行くと、既に治さんがテーブルについていた。
「あ! こんにちは」
「こんにちは」
私はにこやかに挨拶した。
「例の喫茶店、でちゃんと来てくれたんですね」
「ええ。すぐにここのことだって分かりましたよ」
「良かった。嬉しいです」
私たちは、昼食を頼んだ。
「最近、どうですか? アカギさんとの生活」
「あー……、うん。色々あるけど、人と住むのも楽しいかもって思えてきました。それがアカギだからかどうかは分からないですけど」
「へぇ、楽しいんですねぇ……」
治さんは珈琲を一口飲んだ。
私は、治さんの気持ちを知っているからこそ、しっかり断らなければならないんだと決意した。やっぱり、アカギとの駆け引きに治さんを利用するなんて最低なこと、するわけにはいかない。
もう、治さんにアカギが好きだと言ってしまおうか。それなら、治さんも諦めてくれるはず。
あ、でも、待って。もし、治さんがそのことをアカギに言ってしまえば、私は惚れたことを自白したことになり、アカギに負ける。
危ない、これはあまり得策ではないな。
そう考えながら、世間話を数分した。
すると急に、治さんに先手を取られた。
治さんは顔を染めながら、私に質問した。
「あの……東雲さんって、好きな人、います?」
その瞬間、私は治さんの背後にとんでもないものを見たような気がした。
「……え、なんですか?」
治さんに、もう一度尋ねる。
「好きな人。もしかして、アカギさんとか?」
「あー、えっと」
私の意識は、新しく入ってきた客に向けられた。治さんの背中側の扉から入ってきて、その出入り口に一番近い席に座った、男。
治さんの背中合わせになる場所にいる。
私からは、彼の顔を見ることはできない。
しかし、この会話が聞こえる距離に、彼はいた。
間違いない、赤木しげるだ。
どうして? さっき、家にいたのに。
とりあえず、私は治さんに、「そうなの、アカギが好きなの」と言える状況ではなくなった。
「それは、恋愛をしているかという意味?」
「はあ……。まあ、そういうことですね」
「私は、していないけれど」
そんなことより、アカギが気になって仕方ない。どういうこと?
アカギはこの喫茶店を知らないはず。
それとも、アカギと治さんは共謀者で、私が「アカギが好き」というのを聞きにきたとか?
……いや、それにしては、計画が下手くそ過ぎる。もしそうするつもりなら、私は治さんの位置に座らせられなくちゃならない。
アカギがこの店に入ってくるのがこんなに簡単に見えてしまうのでは、計画も何もないし。
そう、アカギがこんな欠陥だらけの計画を立てるわけがないのだ。
つまり、アカギがここにいるのは全くの偶然。
アカギも沼田玩具で働いていた時期があったらしいし、その時にここを知ったのかもしれない。
治さんは、私がアカギのことで頭がいっぱいになっているのを微塵も知らない。
きっと、後ろにいることさえ、知らないだろう。
証拠に、治さんは言い放った。
「実は僕、東雲さんのこと、良いなと思ってるんですっ……!」
外に出るとき、アカギはまだ家にいた。この後、昼寝をするとか、煙草を吸うとかするんだろう。
そこへ行くと、既に治さんがテーブルについていた。
「あ! こんにちは」
「こんにちは」
私はにこやかに挨拶した。
「例の喫茶店、でちゃんと来てくれたんですね」
「ええ。すぐにここのことだって分かりましたよ」
「良かった。嬉しいです」
私たちは、昼食を頼んだ。
「最近、どうですか? アカギさんとの生活」
「あー……、うん。色々あるけど、人と住むのも楽しいかもって思えてきました。それがアカギだからかどうかは分からないですけど」
「へぇ、楽しいんですねぇ……」
治さんは珈琲を一口飲んだ。
私は、治さんの気持ちを知っているからこそ、しっかり断らなければならないんだと決意した。やっぱり、アカギとの駆け引きに治さんを利用するなんて最低なこと、するわけにはいかない。
もう、治さんにアカギが好きだと言ってしまおうか。それなら、治さんも諦めてくれるはず。
あ、でも、待って。もし、治さんがそのことをアカギに言ってしまえば、私は惚れたことを自白したことになり、アカギに負ける。
危ない、これはあまり得策ではないな。
そう考えながら、世間話を数分した。
すると急に、治さんに先手を取られた。
治さんは顔を染めながら、私に質問した。
「あの……東雲さんって、好きな人、います?」
その瞬間、私は治さんの背後にとんでもないものを見たような気がした。
「……え、なんですか?」
治さんに、もう一度尋ねる。
「好きな人。もしかして、アカギさんとか?」
「あー、えっと」
私の意識は、新しく入ってきた客に向けられた。治さんの背中側の扉から入ってきて、その出入り口に一番近い席に座った、男。
治さんの背中合わせになる場所にいる。
私からは、彼の顔を見ることはできない。
しかし、この会話が聞こえる距離に、彼はいた。
間違いない、赤木しげるだ。
どうして? さっき、家にいたのに。
とりあえず、私は治さんに、「そうなの、アカギが好きなの」と言える状況ではなくなった。
「それは、恋愛をしているかという意味?」
「はあ……。まあ、そういうことですね」
「私は、していないけれど」
そんなことより、アカギが気になって仕方ない。どういうこと?
アカギはこの喫茶店を知らないはず。
それとも、アカギと治さんは共謀者で、私が「アカギが好き」というのを聞きにきたとか?
……いや、それにしては、計画が下手くそ過ぎる。もしそうするつもりなら、私は治さんの位置に座らせられなくちゃならない。
アカギがこの店に入ってくるのがこんなに簡単に見えてしまうのでは、計画も何もないし。
そう、アカギがこんな欠陥だらけの計画を立てるわけがないのだ。
つまり、アカギがここにいるのは全くの偶然。
アカギも沼田玩具で働いていた時期があったらしいし、その時にここを知ったのかもしれない。
治さんは、私がアカギのことで頭がいっぱいになっているのを微塵も知らない。
きっと、後ろにいることさえ、知らないだろう。
証拠に、治さんは言い放った。
「実は僕、東雲さんのこと、良いなと思ってるんですっ……!」