15.矜持
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の夜、彼はちゃんと帰ってきた。
「あ……。ご飯、できてるよ。要る?」
「うん、食うよ」
「うん」
久しぶりに共につくこの家の食卓。
私は、ちらちらとアカギの顔色を伺った。
「そんなに気になる?」
「あっ」
バレた。
「ま、そうだよな……」
アカギは昼のことを言ってるんだろう。
気まずい雰囲気になりたくなくて、私は笑い飛ばした。
「何が? 天下のアカギ様が、何を心配してるの?」
昼の事件のことを思い出さないように振る舞う。
もちろん、あんなことを忘れることなんて、できないけれど。
「いや、あんたを怖がらせたかと思って」
「え?」
もしかして、さっき、廊下でアカギが大変なことになった時、私が怖がっていたと思ってるの?
「ま、今はあんたに対して何も思うことはないから、心配していいよ」
アカギは私のために言ったみたいだけど、そんなことを言われると、傷つく。何も思うことはないなんて、普通、一緒に住んでる人に言うかしら。
……アカギなら、言うか。
彼は普通じゃないんだった。
「あなたのことを怖がってたわけじゃないよ」
言うと、アカギは首を捻ってから、そう、と呟いた。そして、ならいい、と付け加えた。
「オレは色んな奴から恐れられてたみたいだけど、東雲に怖がられてると思ったら、良い気分にはなれなかった」
続けて、なんでだろうね、と言い、味噌汁を啜るアカギ。
それって、私に惚れてるんじゃないの? と言いかけて、そんなわけないと思い直す。だって、アカギは私に何も思うことは無いんだから。
「もしかして、私と対等でいたいとか?」
「対等、か」
アカギは動きを止めた。
「ま、それに近いかもね」
え! 嬉しい。アカギと、対等だなんて。
適当にそれらしいことを言ってみたのに、当たってたってことよね。
これなら本当に、アカギに好かれる機会があるかもしれない……。
「そういや、」
浮かれ気味な私に、アカギは言った。
「おまえ……治のこと、どう思う」
「え、治さん?」
予想外の話題に、私は目を見開く。
治さんをどう思うか、ですって?
「ええと……引ったくりを追いかけて、鞄を返してくれたのが初対面だったの。その時は、こんな好青年っているんだなって思った。それから何度か話したけれど、良い印象、かな」
あ、そうそう、と私は微笑んだ。
「治さん、アカギのこと尊敬してるって言ってた。あなたみたいになりたいんだって」
伝えると、アカギはふっと笑った。
「あいつ、まだそんなこと言ってんのか」
「仕方ないよ。あなた、格好良いから」
「そりゃ、どうも」
さらりとアカギを褒めるけれど、あまり効果はないみたい。
「ところで、どうしてそんなことを?」
尋ねると、アカギは言った。
「いや……、治、東雲に惚れてるみたいだから」
「あ……。ご飯、できてるよ。要る?」
「うん、食うよ」
「うん」
久しぶりに共につくこの家の食卓。
私は、ちらちらとアカギの顔色を伺った。
「そんなに気になる?」
「あっ」
バレた。
「ま、そうだよな……」
アカギは昼のことを言ってるんだろう。
気まずい雰囲気になりたくなくて、私は笑い飛ばした。
「何が? 天下のアカギ様が、何を心配してるの?」
昼の事件のことを思い出さないように振る舞う。
もちろん、あんなことを忘れることなんて、できないけれど。
「いや、あんたを怖がらせたかと思って」
「え?」
もしかして、さっき、廊下でアカギが大変なことになった時、私が怖がっていたと思ってるの?
「ま、今はあんたに対して何も思うことはないから、心配していいよ」
アカギは私のために言ったみたいだけど、そんなことを言われると、傷つく。何も思うことはないなんて、普通、一緒に住んでる人に言うかしら。
……アカギなら、言うか。
彼は普通じゃないんだった。
「あなたのことを怖がってたわけじゃないよ」
言うと、アカギは首を捻ってから、そう、と呟いた。そして、ならいい、と付け加えた。
「オレは色んな奴から恐れられてたみたいだけど、東雲に怖がられてると思ったら、良い気分にはなれなかった」
続けて、なんでだろうね、と言い、味噌汁を啜るアカギ。
それって、私に惚れてるんじゃないの? と言いかけて、そんなわけないと思い直す。だって、アカギは私に何も思うことは無いんだから。
「もしかして、私と対等でいたいとか?」
「対等、か」
アカギは動きを止めた。
「ま、それに近いかもね」
え! 嬉しい。アカギと、対等だなんて。
適当にそれらしいことを言ってみたのに、当たってたってことよね。
これなら本当に、アカギに好かれる機会があるかもしれない……。
「そういや、」
浮かれ気味な私に、アカギは言った。
「おまえ……治のこと、どう思う」
「え、治さん?」
予想外の話題に、私は目を見開く。
治さんをどう思うか、ですって?
「ええと……引ったくりを追いかけて、鞄を返してくれたのが初対面だったの。その時は、こんな好青年っているんだなって思った。それから何度か話したけれど、良い印象、かな」
あ、そうそう、と私は微笑んだ。
「治さん、アカギのこと尊敬してるって言ってた。あなたみたいになりたいんだって」
伝えると、アカギはふっと笑った。
「あいつ、まだそんなこと言ってんのか」
「仕方ないよ。あなた、格好良いから」
「そりゃ、どうも」
さらりとアカギを褒めるけれど、あまり効果はないみたい。
「ところで、どうしてそんなことを?」
尋ねると、アカギは言った。
「いや……、治、東雲に惚れてるみたいだから」