14.ひとり*
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私は、なにか言ったの、と聞き返したけれど、アカギは適当にはぐらかした挙句、「ちょっと出る」と言って、玄関に向かってしまった。こちらには見向きもしない。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
急な態度の変化に心配になり、息や服装を整え、バタバタと慌ててアカギの後を追う。すると、アカギは玄関へ続く廊下で、急に立ち止まった。
「わ、」
背中にぶつかりそうになり、両腕を彼の背へ伸ばして衝突を避ける。
「ねえ、どうしたの?」
問いかけると、アカギはくるりと振り向いて、私の手首を掴んだ。
「東雲、」
そのアカギの眼差しの鋭さに、私は戸惑いを隠せない。
「え、なによ……?」
アカギは無言のまま、私の動きを止めた。
狭い廊下の中でそんなことをするものだから、私は壁に背を付ける形でアカギと相対する。
私の顔が熱くなるのも無理はない。
「な、なにったら?」
「あんたさ……」
フッと私に近づくアカギは、どこか危険な香りがした。どこか必死な表情だけれど、それを表に出さないようにしているのが分かる。
「……アカギ?」
余裕をかましているのか、なんなのか分からないけれど、やはりいつもと違う。
こんな状況で、心臓がもたないけれど、何か違和感を感じた。
アカギは私の顔をずっと見つめている。
まるで何かを迷っているかのよう。
「具合、悪いの?」
身を案じて、彼の方へ近づこうとすると、アカギはふいっと顔を背け、手を離した。
「くるな」
「え、」
そう言って、玄関の方にまた向かう。
なんで、と口をついて出た言葉が小さく消えていく。
今度は、私が腕を掴む番だった。
「でも、あなたが先に近づいたじゃない」
「……離しなよ」
私は、何故自分が拒絶されているか分からず、ショックを受けた。
でも、この腕を離したら、アカギは行ってしまう。が、本当に私が嫌なら、私を振りほどけば良い。
しかしアカギはそうしない。
「何か、ヘンよ。どうしたっていうの」
「なんでもないから。ほら、離して」
「イヤ」
私が言うと、アカギはようやく顔をこっちに向けた。
「ふ、あんた、本当に、オレがどういう状態か、分からない……?」
「え……?」
「あんなもの、見せられたんだぜ?」
途切れ途切れの言葉。荒い息。上気した顔。
切なげな表情に、私を見るその眼——
「アカギ?」
「あんたの、所為 だ。こんなの、あんただけだから」
「は、」
「制御、できねえんだ」
私は絶句した。
「だから、東雲……離して。」
アカギは続けた。
「このままじゃ、オレ、あんたのこと——」
——襲っちまう。
その表情が、あまりにも物欲しげだったので、私はますます熱を帯びた。
それなのに、驚いて手を離してしまったのは、私が弱いからだろうか。
「……悪い、」
アカギはそれから、私の方を見ないようにして出て行った。
“オレ、あんたのこと、襲っちまう”。
アカギの言った言葉が、もう一度脳内で響く。
私は、この感情の行き先を見つけられず、部屋にあった座布団を殴りつけた。
14.ひとり〈完〉
「ちょ、ちょっと待ってよ」
急な態度の変化に心配になり、息や服装を整え、バタバタと慌ててアカギの後を追う。すると、アカギは玄関へ続く廊下で、急に立ち止まった。
「わ、」
背中にぶつかりそうになり、両腕を彼の背へ伸ばして衝突を避ける。
「ねえ、どうしたの?」
問いかけると、アカギはくるりと振り向いて、私の手首を掴んだ。
「東雲、」
そのアカギの眼差しの鋭さに、私は戸惑いを隠せない。
「え、なによ……?」
アカギは無言のまま、私の動きを止めた。
狭い廊下の中でそんなことをするものだから、私は壁に背を付ける形でアカギと相対する。
私の顔が熱くなるのも無理はない。
「な、なにったら?」
「あんたさ……」
フッと私に近づくアカギは、どこか危険な香りがした。どこか必死な表情だけれど、それを表に出さないようにしているのが分かる。
「……アカギ?」
余裕をかましているのか、なんなのか分からないけれど、やはりいつもと違う。
こんな状況で、心臓がもたないけれど、何か違和感を感じた。
アカギは私の顔をずっと見つめている。
まるで何かを迷っているかのよう。
「具合、悪いの?」
身を案じて、彼の方へ近づこうとすると、アカギはふいっと顔を背け、手を離した。
「くるな」
「え、」
そう言って、玄関の方にまた向かう。
なんで、と口をついて出た言葉が小さく消えていく。
今度は、私が腕を掴む番だった。
「でも、あなたが先に近づいたじゃない」
「……離しなよ」
私は、何故自分が拒絶されているか分からず、ショックを受けた。
でも、この腕を離したら、アカギは行ってしまう。が、本当に私が嫌なら、私を振りほどけば良い。
しかしアカギはそうしない。
「何か、ヘンよ。どうしたっていうの」
「なんでもないから。ほら、離して」
「イヤ」
私が言うと、アカギはようやく顔をこっちに向けた。
「ふ、あんた、本当に、オレがどういう状態か、分からない……?」
「え……?」
「あんなもの、見せられたんだぜ?」
途切れ途切れの言葉。荒い息。上気した顔。
切なげな表情に、私を見るその眼——
「アカギ?」
「あんたの、
「は、」
「制御、できねえんだ」
私は絶句した。
「だから、東雲……離して。」
アカギは続けた。
「このままじゃ、オレ、あんたのこと——」
——襲っちまう。
その表情が、あまりにも物欲しげだったので、私はますます熱を帯びた。
それなのに、驚いて手を離してしまったのは、私が弱いからだろうか。
「……悪い、」
アカギはそれから、私の方を見ないようにして出て行った。
“オレ、あんたのこと、襲っちまう”。
アカギの言った言葉が、もう一度脳内で響く。
私は、この感情の行き先を見つけられず、部屋にあった座布団を殴りつけた。
14.ひとり〈完〉