2.雀斑
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治さんは一瞬固まっていたが、ふるふると頭を振った。
「僕なんかとは比べ物にならないくらい、その人はすごいんですよ。あの、東雲さんには言えないようなすごいこともしてて。僕はその人の生き方に憧れてます。……でも、そんな風に言ってもらえて、正直嬉しいです」
照れ臭そうに言うと、治さんは私を見た。
「助けた人が東雲さんで良かった」
私は目を細めて意地悪そうに言った。
「へぇ、治さんってそういうこと言ったりするんですねぇ。ちょっと意外」
「あ、いや、今のは、その、そうじゃなくてっ」
少しからかうだけで予想通りの反応を見せてくれるので、微笑ましく思えてしまう。
歳は同じくらいか、私の方が下かもしれないっていうのに。
「大丈夫ですよ、口説かれてるなんて思ってないから。……そんなに焦らなくても」
「僕ってやっぱり、カモられやすいのかな」
分かりやすくしょんぼりしている。先輩とやらがこの人を標的に定めるのもよく分かる。
「ふふ、ごめんなさいってば」
「絶対、わざとじゃないですかっ」
私は久しぶりに勝負事以外で笑った。
こういう人間もいるんだ。人といれば感じることが沢山ある。大抵の人間はつまらない。でもたまに違う人もいる。こういうのも悪くない。
悪くないけど、けど、やっぱりあの熱とは違う。全然違う。
私が欲しいのは、こっちじゃない。
でも、嫌いじゃないっていうのは本当。
治さんが時計を見て、静かに言った。
「あ、もうこんな時間か」
「もしかして、短く感じました?」
「はい、とっても」
「それは良かった。私もなんです」
既に冷えてしまった、最後の珈琲をコクリと喉に通す。サンドイッチも完食したし、もう出なくちゃ。私が会計をしようとすると、治さんに抵抗されたけど、強引に払った。
連れ立って外に出る。
「じゃあ、そろそろ、ですかね」
「はい……ごちそう様でした」
「こちらこそ」
「……また会えますかね?」
治さんがこちらを不安そうに覗き込む。
「またすぐに会ったりして」
「そうだと良いなあ。なんか、せっかく東雲さんに会えたから、もったいなくて」
「え?」
彼は自分で言って照れたらしく、白々しく咳払いをして無かったことにした。
「じゃ、じゃあ、そろそろ工場に戻らなくちゃ」
私はこくりと頷き、見送った。
「では、また今度」
また今度、という言葉に驚いた顔をして、治さんもはにかみながら答えた。
「は、はい。また今度」
「うん」
治さんは手を振って向こうへ行ってしまった。玩具工場で寮生活って、とっても窮屈そう。私なら絶対出来ないな、と溜息をつく。
私は歩いている途中、家に食材が無かったことを思い出し、買い物をしてから家に帰った。久しぶりに自炊しようかなぁ、なんて考えながら。
「僕なんかとは比べ物にならないくらい、その人はすごいんですよ。あの、東雲さんには言えないようなすごいこともしてて。僕はその人の生き方に憧れてます。……でも、そんな風に言ってもらえて、正直嬉しいです」
照れ臭そうに言うと、治さんは私を見た。
「助けた人が東雲さんで良かった」
私は目を細めて意地悪そうに言った。
「へぇ、治さんってそういうこと言ったりするんですねぇ。ちょっと意外」
「あ、いや、今のは、その、そうじゃなくてっ」
少しからかうだけで予想通りの反応を見せてくれるので、微笑ましく思えてしまう。
歳は同じくらいか、私の方が下かもしれないっていうのに。
「大丈夫ですよ、口説かれてるなんて思ってないから。……そんなに焦らなくても」
「僕ってやっぱり、カモられやすいのかな」
分かりやすくしょんぼりしている。先輩とやらがこの人を標的に定めるのもよく分かる。
「ふふ、ごめんなさいってば」
「絶対、わざとじゃないですかっ」
私は久しぶりに勝負事以外で笑った。
こういう人間もいるんだ。人といれば感じることが沢山ある。大抵の人間はつまらない。でもたまに違う人もいる。こういうのも悪くない。
悪くないけど、けど、やっぱりあの熱とは違う。全然違う。
私が欲しいのは、こっちじゃない。
でも、嫌いじゃないっていうのは本当。
治さんが時計を見て、静かに言った。
「あ、もうこんな時間か」
「もしかして、短く感じました?」
「はい、とっても」
「それは良かった。私もなんです」
既に冷えてしまった、最後の珈琲をコクリと喉に通す。サンドイッチも完食したし、もう出なくちゃ。私が会計をしようとすると、治さんに抵抗されたけど、強引に払った。
連れ立って外に出る。
「じゃあ、そろそろ、ですかね」
「はい……ごちそう様でした」
「こちらこそ」
「……また会えますかね?」
治さんがこちらを不安そうに覗き込む。
「またすぐに会ったりして」
「そうだと良いなあ。なんか、せっかく東雲さんに会えたから、もったいなくて」
「え?」
彼は自分で言って照れたらしく、白々しく咳払いをして無かったことにした。
「じゃ、じゃあ、そろそろ工場に戻らなくちゃ」
私はこくりと頷き、見送った。
「では、また今度」
また今度、という言葉に驚いた顔をして、治さんもはにかみながら答えた。
「は、はい。また今度」
「うん」
治さんは手を振って向こうへ行ってしまった。玩具工場で寮生活って、とっても窮屈そう。私なら絶対出来ないな、と溜息をつく。
私は歩いている途中、家に食材が無かったことを思い出し、買い物をしてから家に帰った。久しぶりに自炊しようかなぁ、なんて考えながら。