13.熱帯
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「もう少し、このまま」
また、ぎゅ、と身体が押し付けられる。私の身体がひんやりしているって、本当なの?
私はこんなにも熱いのに……
そこで私は、
「アカギ、あなたって、私に、」
——惚れてないわよね?
と、尋ねようとした。
そんな私を、アカギは耳元で、「駄目」と制した。
「そう聞かれたら、オレはあんたを離さなきゃいけなくなる」
やめて、期待しちゃうじゃない……!
心臓がうるさくなるのを感じながら、私はそのまま黙ってアカギに肌を貸していた。
気がつくと、アカギはうとうとしだした。それならそのまま寝かせようと思って、ゆっくりアカギを布団に倒す。
私はそんなアカギを見て、考えにふけった。
例えば——、もし仮に私がここで、眠っているアカギに口付けをしたら、どうなるのだろう。
アカギにバレたら、きっと私の負けに終わる。
だから、私にはできない。こんな隙だらけでも。狸寝入りっていうことがあるかもしれないし、たぶん、途中で起きてしまうから。
私たち以外の他の男女は、一々こんなことに躊躇しないんだろうと思うと、羨ましい。が、別に私たちは恋人ってわけじゃないから、そこを比較対象にするのは筋違いだ。
アカギが普通の人なら、私は彼に魅力を感じなかったかもしれないし。
逆に言えば、アカギも、私の“九つの尾”に惹かれたはず。つまり、私が普通の女じゃないところに。
……もちろん私は人間だし、実際には尻尾なんか生えていないけれど。
でも、勝負事となると、相手はまるで私が人間じゃないように表現したりする。
「この女狐!」ってね。
だから私は、この尻尾をもがれないようにしなきゃ。じゃないと、アカギの隣に居られない。
負けたら、もがれる。だから負けちゃ駄目。
アカギは私の“尾”を美しいと思ったから、私を買って、救ってくれた。彼は私に勝ったのに、私の九尾をもがなかった。
それどころか、私を取り返してくれた。
でも、他のやつらに負けたら、間違いなく、私の九尾は持っていかれる。私の狐は、無くなる。そんなことは許されない。許さない。
そんな風にして守ってきた私の大事な尻尾を、自分で無くすような真似はできない。
だから、私はアカギに惚れたことを認めることはできない。私に限って、ただ負けを認め、「好きです」と言えば終わる話じゃないんだ。
だって、その瞬間に私は九尾狐じゃなくなって、アカギに捨てられてしまうから。
そこまで考えたところで、私は思い出した。
そうだ、アカギは私を「狐」とは呼ばない。
彼はいつも、「東雲舞美」と、そう呼んでくれる———
13.熱帯〈完〉
また、ぎゅ、と身体が押し付けられる。私の身体がひんやりしているって、本当なの?
私はこんなにも熱いのに……
そこで私は、
「アカギ、あなたって、私に、」
——惚れてないわよね?
と、尋ねようとした。
そんな私を、アカギは耳元で、「駄目」と制した。
「そう聞かれたら、オレはあんたを離さなきゃいけなくなる」
やめて、期待しちゃうじゃない……!
心臓がうるさくなるのを感じながら、私はそのまま黙ってアカギに肌を貸していた。
気がつくと、アカギはうとうとしだした。それならそのまま寝かせようと思って、ゆっくりアカギを布団に倒す。
私はそんなアカギを見て、考えにふけった。
例えば——、もし仮に私がここで、眠っているアカギに口付けをしたら、どうなるのだろう。
アカギにバレたら、きっと私の負けに終わる。
だから、私にはできない。こんな隙だらけでも。狸寝入りっていうことがあるかもしれないし、たぶん、途中で起きてしまうから。
私たち以外の他の男女は、一々こんなことに躊躇しないんだろうと思うと、羨ましい。が、別に私たちは恋人ってわけじゃないから、そこを比較対象にするのは筋違いだ。
アカギが普通の人なら、私は彼に魅力を感じなかったかもしれないし。
逆に言えば、アカギも、私の“九つの尾”に惹かれたはず。つまり、私が普通の女じゃないところに。
……もちろん私は人間だし、実際には尻尾なんか生えていないけれど。
でも、勝負事となると、相手はまるで私が人間じゃないように表現したりする。
「この女狐!」ってね。
だから私は、この尻尾をもがれないようにしなきゃ。じゃないと、アカギの隣に居られない。
負けたら、もがれる。だから負けちゃ駄目。
アカギは私の“尾”を美しいと思ったから、私を買って、救ってくれた。彼は私に勝ったのに、私の九尾をもがなかった。
それどころか、私を取り返してくれた。
でも、他のやつらに負けたら、間違いなく、私の九尾は持っていかれる。私の狐は、無くなる。そんなことは許されない。許さない。
そんな風にして守ってきた私の大事な尻尾を、自分で無くすような真似はできない。
だから、私はアカギに惚れたことを認めることはできない。私に限って、ただ負けを認め、「好きです」と言えば終わる話じゃないんだ。
だって、その瞬間に私は九尾狐じゃなくなって、アカギに捨てられてしまうから。
そこまで考えたところで、私は思い出した。
そうだ、アカギは私を「狐」とは呼ばない。
彼はいつも、「東雲舞美」と、そう呼んでくれる———
13.熱帯〈完〉