13.熱帯
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翌朝、私たちは金を使い切って家に帰った。
その間、アカギの私への態度はいつもと同じで、昨夜はまるで何もなかったかのようだった。
あれから数日が過ぎたが、私とアカギが交わったのはあれっきりで、求めてくるような素振りもない。
丁半の時期が来ても、それは勝負でなくて、何かの儀式のようだった。もちろん、相手がアカギだからこそ、儀式みたいになってしまうのだけれど。
私がサイコロを振り、アカギが即答し、中を確認して、それからサイコロを戻す。これで、終わり。
アカギは決して間違えないから。まるで何かの能力を持っているかのように。
そんなこんなで、あまり普段と変わらない生活が続いているように見えた。もちろん、アカギは賭場に行ったりヤクザと絡んだり、相変わらず破天荒な人生を送っているようだったが。
私とアカギの間で変わったことと言えば、こんなことがあった。
ある日、アカギが帰ってくるのを待っていると、雨が降り出したことに気がついた。私は外に出した洗濯物を急いで取り入れた。
アカギは傘を持っているのかな……。
しばらくして、アカギの帰りを知らせるノックがした。念のために鍵をかけるようにしたのは、私を賭けた勝負をしてからのこと。
「おかえりなさ……」
ドアを開けると、複数の傷を負ったずぶ濡れの赤木しげるが私をぼんやりと見ていた。
「どうしたの⁈」
急いで中に招き入れると、どさり、と、アカギが閉まったドアに背をつけるようにして座り込んだ。そうとう、酷い状態なのかも。
「アカギ!」
そばに寄ると、アカギは何故か笑っている。気でも触れたのか……、あ、いや、この人は元々狂気に身を任せるような人間だけれど。
「ヘマ踏んじまったな」
「本当にね。心配かけさせないで」
「安心しなよ。全員、酷い状態にしてきたから」
「そんなことを心配してるんじゃないのよっ」
私はアカギに手を貸した。
「立てる?」
「フフ、あんたの手を煩わせることになるとはね」
アカギはよろりと立ち上がって歩き、部屋の壁に寄りかかるようにして座った。
「手当しないと。それに、ずぶ濡れ。傘は?」
「さぁな」
「さぁなじゃなくて」
私はタオルを持ってきて、アカギの前にしゃがんだ。そして、頭をわしわしと拭いた。アカギは黙ってされるがままにしている。なんか、犬みたいでかわいい……なんて。
「懐かしいな」
アカギが言った。
「何が?」
「いや、なんでもない。こっちの話」
「こんな状況が前にもあったのね」
「まぁね……」
そこで、アカギは、「ん」と、何かに気付いた様子で顔を上げ、またぼんやりと私を見た。
「あんた……良い匂いがする」
そして、アカギはゆっくり目を閉じてうつむいた。
「なによ」
私はびっくりして動きを止めたが、アカギの寝ている内にと、簡単な手当をし始めた。
普段なら言われないことを言われるだけで、こんなにも胸が熱くなるんだから、恋っていうのは本当に、面倒で切ないものだ。
その間、アカギの私への態度はいつもと同じで、昨夜はまるで何もなかったかのようだった。
あれから数日が過ぎたが、私とアカギが交わったのはあれっきりで、求めてくるような素振りもない。
丁半の時期が来ても、それは勝負でなくて、何かの儀式のようだった。もちろん、相手がアカギだからこそ、儀式みたいになってしまうのだけれど。
私がサイコロを振り、アカギが即答し、中を確認して、それからサイコロを戻す。これで、終わり。
アカギは決して間違えないから。まるで何かの能力を持っているかのように。
そんなこんなで、あまり普段と変わらない生活が続いているように見えた。もちろん、アカギは賭場に行ったりヤクザと絡んだり、相変わらず破天荒な人生を送っているようだったが。
私とアカギの間で変わったことと言えば、こんなことがあった。
ある日、アカギが帰ってくるのを待っていると、雨が降り出したことに気がついた。私は外に出した洗濯物を急いで取り入れた。
アカギは傘を持っているのかな……。
しばらくして、アカギの帰りを知らせるノックがした。念のために鍵をかけるようにしたのは、私を賭けた勝負をしてからのこと。
「おかえりなさ……」
ドアを開けると、複数の傷を負ったずぶ濡れの赤木しげるが私をぼんやりと見ていた。
「どうしたの⁈」
急いで中に招き入れると、どさり、と、アカギが閉まったドアに背をつけるようにして座り込んだ。そうとう、酷い状態なのかも。
「アカギ!」
そばに寄ると、アカギは何故か笑っている。気でも触れたのか……、あ、いや、この人は元々狂気に身を任せるような人間だけれど。
「ヘマ踏んじまったな」
「本当にね。心配かけさせないで」
「安心しなよ。全員、酷い状態にしてきたから」
「そんなことを心配してるんじゃないのよっ」
私はアカギに手を貸した。
「立てる?」
「フフ、あんたの手を煩わせることになるとはね」
アカギはよろりと立ち上がって歩き、部屋の壁に寄りかかるようにして座った。
「手当しないと。それに、ずぶ濡れ。傘は?」
「さぁな」
「さぁなじゃなくて」
私はタオルを持ってきて、アカギの前にしゃがんだ。そして、頭をわしわしと拭いた。アカギは黙ってされるがままにしている。なんか、犬みたいでかわいい……なんて。
「懐かしいな」
アカギが言った。
「何が?」
「いや、なんでもない。こっちの話」
「こんな状況が前にもあったのね」
「まぁね……」
そこで、アカギは、「ん」と、何かに気付いた様子で顔を上げ、またぼんやりと私を見た。
「あんた……良い匂いがする」
そして、アカギはゆっくり目を閉じてうつむいた。
「なによ」
私はびっくりして動きを止めたが、アカギの寝ている内にと、簡単な手当をし始めた。
普段なら言われないことを言われるだけで、こんなにも胸が熱くなるんだから、恋っていうのは本当に、面倒で切ないものだ。