2.雀斑
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私は鞄が戻ってきたことよりも、赤の他人に助けられたことに感動していた。こんな経験はあまりしたことがない。
治と名乗ったこの青年も、見返りの為に私を助けたわけではなさそうだった。
「では治さん、この後予定ってありますか?」
「えっと、特に無いですけど……」
「お礼に何かご馳走させてください」
そう言うと、嬉しそうな顔をした。
でもすぐに表情を戻す。
「いや、悪いですよ」
「私がお礼したいんですっ。それとも、私と食事をするのは嫌ですか?」
「そんなことはないです!」
治さんは私の問いに大きな声で否定して、それが恥ずかしく思えたのか、顔を赤くした。
「じゃあ、喫茶店でどうですか? そこなら治さんも気負う必要はないでしょ」
「……そう、ですね。じゃあ、お言葉に甘えて」
「良かった。私、元々喫茶店に行こうとしてたんです。ここら辺で良いお店、知りませんか?」
「あ、えっと、確かこっちの方に……」
彼の誘導に後ろから歩いて行くと、私が今まで入ったことのない喫茶店に着いた。
とりあえず座り、珈琲と軽食を頼んだ。比較的安価だが、店の雰囲気も良さそうだ。
「あの、僕も名前聞いて良いですか」
そう聞かれ、私はまだ名乗っていなかったことを思い出す。多分、治さんは九尾狐なんて知らないだろうから名前を言っても大丈夫だ。
「私は東雲舞美っていいます。改めて、さっきはありがとうございました」
「ぜ、全然。ほんと、驚きましたよね」
「私ったらぼーっとしちゃってたみたいで。あんな犯人を捕まえるなんて、治さんは足が速いんですね」
「いや、必死に追いかけただけですよ。東雲さんがずっと僕の前を歩いてたので、どこに行くのかなぁなんて考えてたら、引ったくりに遭うんだから、驚いて。何はともあれ、鞄が戻ってきて良かった」
話していると、温かい珈琲とサンドイッチが運ばれてきた。良い匂い。
「じゃあ、いただきます」
私もズズ……と啜ると、珈琲の香りが口の中に広がって、ほど良い苦味が舌に溶けてきた。
「美味しい」
「ですよね。僕、ここ好きなんですよ」
「じゃあここに来れば治さんに会えるってことか」
「え⁈ ま、まぁそうですね」
私は何気なく事実を言ったまでだが、治さんは動揺したようで、耳を赤くしてもう一度珈琲に口をつけた。
「照れ屋さん」
私がふふふと笑うと、治さんはますます顔を赤くした。
治と名乗ったこの青年も、見返りの為に私を助けたわけではなさそうだった。
「では治さん、この後予定ってありますか?」
「えっと、特に無いですけど……」
「お礼に何かご馳走させてください」
そう言うと、嬉しそうな顔をした。
でもすぐに表情を戻す。
「いや、悪いですよ」
「私がお礼したいんですっ。それとも、私と食事をするのは嫌ですか?」
「そんなことはないです!」
治さんは私の問いに大きな声で否定して、それが恥ずかしく思えたのか、顔を赤くした。
「じゃあ、喫茶店でどうですか? そこなら治さんも気負う必要はないでしょ」
「……そう、ですね。じゃあ、お言葉に甘えて」
「良かった。私、元々喫茶店に行こうとしてたんです。ここら辺で良いお店、知りませんか?」
「あ、えっと、確かこっちの方に……」
彼の誘導に後ろから歩いて行くと、私が今まで入ったことのない喫茶店に着いた。
とりあえず座り、珈琲と軽食を頼んだ。比較的安価だが、店の雰囲気も良さそうだ。
「あの、僕も名前聞いて良いですか」
そう聞かれ、私はまだ名乗っていなかったことを思い出す。多分、治さんは九尾狐なんて知らないだろうから名前を言っても大丈夫だ。
「私は東雲舞美っていいます。改めて、さっきはありがとうございました」
「ぜ、全然。ほんと、驚きましたよね」
「私ったらぼーっとしちゃってたみたいで。あんな犯人を捕まえるなんて、治さんは足が速いんですね」
「いや、必死に追いかけただけですよ。東雲さんがずっと僕の前を歩いてたので、どこに行くのかなぁなんて考えてたら、引ったくりに遭うんだから、驚いて。何はともあれ、鞄が戻ってきて良かった」
話していると、温かい珈琲とサンドイッチが運ばれてきた。良い匂い。
「じゃあ、いただきます」
私もズズ……と啜ると、珈琲の香りが口の中に広がって、ほど良い苦味が舌に溶けてきた。
「美味しい」
「ですよね。僕、ここ好きなんですよ」
「じゃあここに来れば治さんに会えるってことか」
「え⁈ ま、まぁそうですね」
私は何気なく事実を言ったまでだが、治さんは動揺したようで、耳を赤くしてもう一度珈琲に口をつけた。
「照れ屋さん」
私がふふふと笑うと、治さんはますます顔を赤くした。