1.出会い
名前変換はコチラから
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ロン。跳満、18000」
夜の雀荘には似つかわしくない女の声が響く。
「……またかい」
「えぇ、連荘ですね」
ジャラジャラと牌を混ぜながら彼女は答えた。
周りの男達は彼女に釘付けになっている。
流れるような牌さばきを見れば、場数を踏んでいることは明らかだった。
彼女と目が合えば、その雰囲気に呑まれそうになるが、その奥にはしっかりと、獲物を狩るような鋭さが感じ取れる。言うまでもなく、強い。
紅一点であることを気にすることもなく、息をするように点棒をむしり取っていく。
何より厄介なのは、彼女は女としての魅力も持ち合わせているということだ。和了を告げる口元の動きさえも、上品な色気を感じるほどに。
……なんだこの女。
そう耳打ちをされても、答えられる者はなかった。それは至極当然のことである。彼女は自分が未だ知られていないだろう地にわざわざ赴いたのだから。
先程、彼女がこの雀荘に来たばかりの時は、女が来たということで相当な口を叩かれていた。
彼女が卓につくつもりだと分かると馬鹿にする者さえいたが、今ではそんな輩も口をつぐみ、影も見ない。
彼女は特に金が必要という訳でもなかった。
鞄の中にはそこそこの金が入っているし、今打っているレートも低い。ちょうど、同卓していた者は賭け金の低さに感謝していたところだった。
勝敗などはもうこの際どうだって良い。
誰もが女の正体に興味の矛先が向いていた。
彼女はそれに気が付き、軽く局を終わらせ、金と点棒のやり取りをして、息をついた。こんな小遣い程度の金では恨みを買うこともないだろう。それに、少なくとも、組の上の方はいないように見えた。ここは、他の場所と比べると治安が良い方なのだろう。
初めて女の表情が緩む。
そして周りの者はようやく気付く。彼女は彼らが思っているよりもずっと若いことに。その立ち振る舞いや雰囲気に加え、対局中の迫力が彼女の美しさを引き立て演出していたのだが、勝負が終わると、まだ小娘とも呼べる年齢であることに気付かされる。
まだ子供じゃないか。
さっきまでの色気はなんだったんだ、勝負の熱によるものなのか。
ますます謎は深まっていく。
とうとう、耐え切れなくなって1人が尋ねた。
「嬢ちゃん、何者だ?」
「何者、と言うと?」
「そのままの意味さ」
「通りすがりのただの女、ですかね」
微笑みながら返す様子は楽しそうに見える。
「夜中に雀荘に通りすがる女はただの女だとは言えねぇな。それに、こんな遊びを覚えるには若すぎやしないかい」
「そうかもね」
「そもそも、女1人でこんな所にいては、食ってくれと言っているようなもんだ」
「毒に当たってお腹を壊しても知らないよ」
「それにしては旨そうな毒だ」
「お褒めに預かりまして」
相も変わらず、隙は見せない。
「……その様子じゃ、俺達はあんたの名前さえ知らずに帰ることになりそうだな」
質問をはぐらかす彼女に、男達はこれ以上何も情報は得られないのかと諦めかけた。その時。
「そういう訳でもないんじゃない?」
予想外の返しに皆困惑しつつ、その答えを待っている。
「私は東雲。東雲舞美。以後お見知り置きを」
夜の雀荘には似つかわしくない女の声が響く。
「……またかい」
「えぇ、連荘ですね」
ジャラジャラと牌を混ぜながら彼女は答えた。
周りの男達は彼女に釘付けになっている。
流れるような牌さばきを見れば、場数を踏んでいることは明らかだった。
彼女と目が合えば、その雰囲気に呑まれそうになるが、その奥にはしっかりと、獲物を狩るような鋭さが感じ取れる。言うまでもなく、強い。
紅一点であることを気にすることもなく、息をするように点棒をむしり取っていく。
何より厄介なのは、彼女は女としての魅力も持ち合わせているということだ。和了を告げる口元の動きさえも、上品な色気を感じるほどに。
……なんだこの女。
そう耳打ちをされても、答えられる者はなかった。それは至極当然のことである。彼女は自分が未だ知られていないだろう地にわざわざ赴いたのだから。
先程、彼女がこの雀荘に来たばかりの時は、女が来たということで相当な口を叩かれていた。
彼女が卓につくつもりだと分かると馬鹿にする者さえいたが、今ではそんな輩も口をつぐみ、影も見ない。
彼女は特に金が必要という訳でもなかった。
鞄の中にはそこそこの金が入っているし、今打っているレートも低い。ちょうど、同卓していた者は賭け金の低さに感謝していたところだった。
勝敗などはもうこの際どうだって良い。
誰もが女の正体に興味の矛先が向いていた。
彼女はそれに気が付き、軽く局を終わらせ、金と点棒のやり取りをして、息をついた。こんな小遣い程度の金では恨みを買うこともないだろう。それに、少なくとも、組の上の方はいないように見えた。ここは、他の場所と比べると治安が良い方なのだろう。
初めて女の表情が緩む。
そして周りの者はようやく気付く。彼女は彼らが思っているよりもずっと若いことに。その立ち振る舞いや雰囲気に加え、対局中の迫力が彼女の美しさを引き立て演出していたのだが、勝負が終わると、まだ小娘とも呼べる年齢であることに気付かされる。
まだ子供じゃないか。
さっきまでの色気はなんだったんだ、勝負の熱によるものなのか。
ますます謎は深まっていく。
とうとう、耐え切れなくなって1人が尋ねた。
「嬢ちゃん、何者だ?」
「何者、と言うと?」
「そのままの意味さ」
「通りすがりのただの女、ですかね」
微笑みながら返す様子は楽しそうに見える。
「夜中に雀荘に通りすがる女はただの女だとは言えねぇな。それに、こんな遊びを覚えるには若すぎやしないかい」
「そうかもね」
「そもそも、女1人でこんな所にいては、食ってくれと言っているようなもんだ」
「毒に当たってお腹を壊しても知らないよ」
「それにしては旨そうな毒だ」
「お褒めに預かりまして」
相も変わらず、隙は見せない。
「……その様子じゃ、俺達はあんたの名前さえ知らずに帰ることになりそうだな」
質問をはぐらかす彼女に、男達はこれ以上何も情報は得られないのかと諦めかけた。その時。
「そういう訳でもないんじゃない?」
予想外の返しに皆困惑しつつ、その答えを待っている。
「私は東雲。東雲舞美。以後お見知り置きを」