【eitr】短編まとめ
「うわ、空っぽ」
冷蔵庫の中を覗きながら、その空っぽ具合に独り言を溢した。
午前零時を過ぎた深い時間帯。仕事から帰ってきてから溜め込んでいた家事諸々をしていたら、いつの間にかこんな時間になってしまっていた。そもそも帰りが遅かったのだから無理もないだろう。
最近買い物に行けていなかったことを思い返すと同時に唸った。困ったな、夕食に食べるものが何も入っていない。
仕方がないから買いに行こうと、手近にあった財布とスマホを手に取って足早に玄関に向かった。ドアを開けると冷たい風が吹きつけ、羽織っているカーディガンを手繰り寄せる。
「雨止んでるじゃん」
今日は朝から雨が降っていたけど、いつの間にか止んでいたらしい。これなら傘を持っていかなくても大丈夫だろう。
そう高を括っていたけど。
「…………」
買い物を済ませ、さあ帰ろうと店を出ると、案の定外は雨が降っていた。しかもそれほど長居はしていないはずなのに、かなりの大雨。
すぐに店の中に戻ってビニール傘を探したが、既に売り切れてしまっていた。
踏んだり蹴ったりである。
度重なる不運に思わず肩を落とした。少し待ったら止んでくれるだろうか。
もうびしょ濡れになるのを覚悟でこのまま走って帰ってしまおうか、などと店の軒下で考えていると、手に持っていたスマホが震えたことで意識が引き戻される。
『返信遅くなった。まだ起きてるか?』
生行からのPeChatだった。
そのままいつものようにトーク画面を開いて、すぐに後悔した。何の気無しに見てしまったが、家に帰ってから既読をつければよかった。
既読をつけたことによってすぐに掛かってきた電話に恐る恐る応答する。電話を繋げた途端私が今外にいることがバレてしまい、生行に促されるまま雨で身動きが取れない状況を説明すると「迎えに行くから待ってろ」と一方的に切られてしまった。
言われた通り暫く店の中で待っていると、ガラス越しに傘を差した生行の姿が見えた。
「なゆーー痛ッ」
軒下に立つ私に傘が傾けられると同時に、額に軽い痛みが走った。反射的に閉じた目をそっと開けると、目の前には生行の手。
「デ、デコピン……」
「何か言うことは?」
「家から近いしいいかなって……痛ッ!何でまた!?」
「家から近いからってそのまま走って帰ろうとしてたんだろ」
図星である。
そっと目を逸らすと大きなため息が聞こえた。
「風邪引いたらどうするんだよ」
「仰る通りです……」
「あのタイミングで連絡して正解だった」
実は、急遽明日休みが取れたから生行に連絡を入れていたのだが、どうやらその返事をしようとしてくれたらしい。正直ダメ元だったものの、偶然にも生行も一日空いていたようで、話し合いの末明日は朝からドライブに行くことが決まった。
とはいえ、丁度雨の中に飛び込もうとしたタイミンで生行から連絡が来たから流石に驚いてしまった。そう言ってしまうとまたデコピンされかねないから黙っておくことにする。
「とりあえず帰るぞ」
生行が持っていた、もう一本の傘が差し出された。お礼を言いながら受け取ると、それを手に持ったまま生行が差している傘に入って身を寄せる。生行は一瞬面食らった様子だったが、すぐに仕方ないな、と言いたげに少し笑って空いている手を絡ませてきた。
「こんな時間に来てもらってごめんね」
「気にしないでいいから」
生行に手を引かれて歩き出す。
今晩は間が悪いことが立て続けに起きた夜だったけど、こうして生行と会えたことで少し救われたような気がする。
先程よりも弱まった雨の中、軽口を叩き合いながら並んで帰路に着いたのだった。
冷蔵庫の中を覗きながら、その空っぽ具合に独り言を溢した。
午前零時を過ぎた深い時間帯。仕事から帰ってきてから溜め込んでいた家事諸々をしていたら、いつの間にかこんな時間になってしまっていた。そもそも帰りが遅かったのだから無理もないだろう。
最近買い物に行けていなかったことを思い返すと同時に唸った。困ったな、夕食に食べるものが何も入っていない。
仕方がないから買いに行こうと、手近にあった財布とスマホを手に取って足早に玄関に向かった。ドアを開けると冷たい風が吹きつけ、羽織っているカーディガンを手繰り寄せる。
「雨止んでるじゃん」
今日は朝から雨が降っていたけど、いつの間にか止んでいたらしい。これなら傘を持っていかなくても大丈夫だろう。
そう高を括っていたけど。
「…………」
買い物を済ませ、さあ帰ろうと店を出ると、案の定外は雨が降っていた。しかもそれほど長居はしていないはずなのに、かなりの大雨。
すぐに店の中に戻ってビニール傘を探したが、既に売り切れてしまっていた。
踏んだり蹴ったりである。
度重なる不運に思わず肩を落とした。少し待ったら止んでくれるだろうか。
もうびしょ濡れになるのを覚悟でこのまま走って帰ってしまおうか、などと店の軒下で考えていると、手に持っていたスマホが震えたことで意識が引き戻される。
『返信遅くなった。まだ起きてるか?』
生行からのPeChatだった。
そのままいつものようにトーク画面を開いて、すぐに後悔した。何の気無しに見てしまったが、家に帰ってから既読をつければよかった。
既読をつけたことによってすぐに掛かってきた電話に恐る恐る応答する。電話を繋げた途端私が今外にいることがバレてしまい、生行に促されるまま雨で身動きが取れない状況を説明すると「迎えに行くから待ってろ」と一方的に切られてしまった。
言われた通り暫く店の中で待っていると、ガラス越しに傘を差した生行の姿が見えた。
「なゆーー痛ッ」
軒下に立つ私に傘が傾けられると同時に、額に軽い痛みが走った。反射的に閉じた目をそっと開けると、目の前には生行の手。
「デ、デコピン……」
「何か言うことは?」
「家から近いしいいかなって……痛ッ!何でまた!?」
「家から近いからってそのまま走って帰ろうとしてたんだろ」
図星である。
そっと目を逸らすと大きなため息が聞こえた。
「風邪引いたらどうするんだよ」
「仰る通りです……」
「あのタイミングで連絡して正解だった」
実は、急遽明日休みが取れたから生行に連絡を入れていたのだが、どうやらその返事をしようとしてくれたらしい。正直ダメ元だったものの、偶然にも生行も一日空いていたようで、話し合いの末明日は朝からドライブに行くことが決まった。
とはいえ、丁度雨の中に飛び込もうとしたタイミンで生行から連絡が来たから流石に驚いてしまった。そう言ってしまうとまたデコピンされかねないから黙っておくことにする。
「とりあえず帰るぞ」
生行が持っていた、もう一本の傘が差し出された。お礼を言いながら受け取ると、それを手に持ったまま生行が差している傘に入って身を寄せる。生行は一瞬面食らった様子だったが、すぐに仕方ないな、と言いたげに少し笑って空いている手を絡ませてきた。
「こんな時間に来てもらってごめんね」
「気にしないでいいから」
生行に手を引かれて歩き出す。
今晩は間が悪いことが立て続けに起きた夜だったけど、こうして生行と会えたことで少し救われたような気がする。
先程よりも弱まった雨の中、軽口を叩き合いながら並んで帰路に着いたのだった。
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