【eitr】短編まとめ
「な、なんであんな所に……」
思わぬ光景を目にして、思わず口を開けて呆然としてしまった。
視線の先には、数日前HAMAハウス内にある倉庫まで運んできたそこそこ大きな段ボール。
それが何故だか置いたはずの場所から動かされてしまっている。しかも上段に。
どうせ近いうちに使うだろうと低い位置に仕舞っておいたのに、この数日の間に誰かが動かしてしまったのだろうか。
背伸びをして手を伸ばしてみる。すると指が段ボールの表面を撫で、そのまま手前に引き寄せてみると少しだけ動いてくれた。
このまま眺めているだけでは仕方がないと周りを見渡してみるが、土台が見当たらなかったため、もう少しだけ粘ってみることにした。
もし自力で取れないようであれば、リビングで飼い猫を愛でていた部長に助けを求めようと心に決め、再び段ボールに手を伸ばした。
「よっ、と――うわっ…!」
やはり無茶はするものではない。
ある程度段ボールが棚から顔を出したところで両手で掴んで下ろそうした瞬間、ゴトッと音を立てたのと同時に勢いよく頭上に落ちてきてしまった。
どうやら段ボールを動かした衝撃で中に入っている物が動いてしまったらしい。
落ちてきた段ボールを咄嗟に両手でキャッチすることができたのはよかったものの、代わりにバランスを崩し、後ろに倒れてしまった。
次に来る衝撃にギュッと目を瞑ったのも束の間、倒れ込むより前に背中に何かが当たったのが分かった。
「大丈夫ですか?」
肩と背中が支えられたのと同時に背後から聞き覚えのある声が聞こえて振り向く。すると、そこには思っていた通り北片さんの姿があった。
至近距離でバッチリと目が合い、途端にバクバクと早鐘を打ち始めた心臓にいたたまれなくなって思わず目を逸らす。
とりあえず自分を落ち着かせようと静かに深呼吸をしながら、状況を把握しようとパニック状態の頭を必死に動かした。
今、私の肩を支えてくれているのは北片さんである。つまり、私が凭れ掛かっているのは――
「あっ……!?」
「おっと」
状況に気付いた瞬間、カッと一気に顔に熱が集まった。急いで北片さんから離れようとしたが、慌てて動いたせいで再びバランスを崩した私の体に北片さんの腕が回る。
「重ね重ね申し訳ありません……」
「いえいえ」
一周回って冷静になった私を落ち着いたと見做したのか北片さんが離れていく。
ある程度距離が空いたことにホッと息をつき、頭を下げから足早に倉庫を後にした。
「はぁ……びっくりした」
無意識に吐き出した言葉は、心なしか震えている気がする。未だに痛いくらいバクバクと騒ぐ心臓を思えば無理はないのだろうが。
気が動転して思わず逃げてきてしまった。変に思われたりしていないだろうか。
いや、きっと私の顔は真っ赤に染まっているだろうから、そのことに触れられたら返答に困ってしまう。
「……さっさと主任のところに行こう」
とりあえず、今やらなければいけないのは倉庫から取ってきた物を主任に渡すことだ。
浮ついた気持ちを何とか切り替えて、主任の部屋を目指した。
* * *
彼女の後ろ姿を見送った後、自分の手に視線を移す。すると先程の光景が脳裏に浮かんできて、思わずその手を固く握り込んだ。
「耳赤いよ?」
「っ、!?」
不意に背後から聞こえてきた声に大きく肩を揺らして振り向くと、可不可が笑いを堪えた様子で立っていた。
自分の顔に熱が集まっていくを自覚し、完全に面白がっている可不可をキッと睨む。
「……うるさいな」
「えー、酷い。まだ何も言ってないのに」
「言おうとしてただろ」
俺の言葉に口を尖らせて不満を露わにするが、その顔がにやけているのを見れば火を見るより明らかである。
可不可と一緒に倉庫前を通りかかったところ、中で彼女が倒れそうになっているのを見つけて咄嗟に動いてしまったが、俺はからかわれるほどの形相をしていたのだろうか。
これ以上一緒にいたらこれ以上何を言われるか分からない。
彼女に続き、可不可を倉庫に残して足早にその場を後にしたのだった。
「……あの二人がくっつくのも時間の問題かな」
一人になった倉庫でそう呟いた可不可の声は、誰の耳にも届かなかった。
思わぬ光景を目にして、思わず口を開けて呆然としてしまった。
視線の先には、数日前HAMAハウス内にある倉庫まで運んできたそこそこ大きな段ボール。
それが何故だか置いたはずの場所から動かされてしまっている。しかも上段に。
どうせ近いうちに使うだろうと低い位置に仕舞っておいたのに、この数日の間に誰かが動かしてしまったのだろうか。
背伸びをして手を伸ばしてみる。すると指が段ボールの表面を撫で、そのまま手前に引き寄せてみると少しだけ動いてくれた。
このまま眺めているだけでは仕方がないと周りを見渡してみるが、土台が見当たらなかったため、もう少しだけ粘ってみることにした。
もし自力で取れないようであれば、リビングで飼い猫を愛でていた部長に助けを求めようと心に決め、再び段ボールに手を伸ばした。
「よっ、と――うわっ…!」
やはり無茶はするものではない。
ある程度段ボールが棚から顔を出したところで両手で掴んで下ろそうした瞬間、ゴトッと音を立てたのと同時に勢いよく頭上に落ちてきてしまった。
どうやら段ボールを動かした衝撃で中に入っている物が動いてしまったらしい。
落ちてきた段ボールを咄嗟に両手でキャッチすることができたのはよかったものの、代わりにバランスを崩し、後ろに倒れてしまった。
次に来る衝撃にギュッと目を瞑ったのも束の間、倒れ込むより前に背中に何かが当たったのが分かった。
「大丈夫ですか?」
肩と背中が支えられたのと同時に背後から聞き覚えのある声が聞こえて振り向く。すると、そこには思っていた通り北片さんの姿があった。
至近距離でバッチリと目が合い、途端にバクバクと早鐘を打ち始めた心臓にいたたまれなくなって思わず目を逸らす。
とりあえず自分を落ち着かせようと静かに深呼吸をしながら、状況を把握しようとパニック状態の頭を必死に動かした。
今、私の肩を支えてくれているのは北片さんである。つまり、私が凭れ掛かっているのは――
「あっ……!?」
「おっと」
状況に気付いた瞬間、カッと一気に顔に熱が集まった。急いで北片さんから離れようとしたが、慌てて動いたせいで再びバランスを崩した私の体に北片さんの腕が回る。
「重ね重ね申し訳ありません……」
「いえいえ」
一周回って冷静になった私を落ち着いたと見做したのか北片さんが離れていく。
ある程度距離が空いたことにホッと息をつき、頭を下げから足早に倉庫を後にした。
「はぁ……びっくりした」
無意識に吐き出した言葉は、心なしか震えている気がする。未だに痛いくらいバクバクと騒ぐ心臓を思えば無理はないのだろうが。
気が動転して思わず逃げてきてしまった。変に思われたりしていないだろうか。
いや、きっと私の顔は真っ赤に染まっているだろうから、そのことに触れられたら返答に困ってしまう。
「……さっさと主任のところに行こう」
とりあえず、今やらなければいけないのは倉庫から取ってきた物を主任に渡すことだ。
浮ついた気持ちを何とか切り替えて、主任の部屋を目指した。
* * *
彼女の後ろ姿を見送った後、自分の手に視線を移す。すると先程の光景が脳裏に浮かんできて、思わずその手を固く握り込んだ。
「耳赤いよ?」
「っ、!?」
不意に背後から聞こえてきた声に大きく肩を揺らして振り向くと、可不可が笑いを堪えた様子で立っていた。
自分の顔に熱が集まっていくを自覚し、完全に面白がっている可不可をキッと睨む。
「……うるさいな」
「えー、酷い。まだ何も言ってないのに」
「言おうとしてただろ」
俺の言葉に口を尖らせて不満を露わにするが、その顔がにやけているのを見れば火を見るより明らかである。
可不可と一緒に倉庫前を通りかかったところ、中で彼女が倒れそうになっているのを見つけて咄嗟に動いてしまったが、俺はからかわれるほどの形相をしていたのだろうか。
これ以上一緒にいたらこれ以上何を言われるか分からない。
彼女に続き、可不可を倉庫に残して足早にその場を後にしたのだった。
「……あの二人がくっつくのも時間の問題かな」
一人になった倉庫でそう呟いた可不可の声は、誰の耳にも届かなかった。
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