隣席の亥清くんと友達になりました
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やっと定期試験が終わり、緊張感が漂っていた教室の空気がやっと和らいだ。――かと思えば、答案用紙が返却される日になるとすっかり元通りになってしまった。点数が下がった、再試験などといった明らかに穏やかではない単語が飛び交っていたが、数日経った今ではそれも落ち着きつつある。
試験に関係なく、授業と授業の間に設けられている休憩時間の教室は結構騒がしい。とある女子は教室の前方で輪になってお喋りをしているし、とある男子は隣のクラスから来た友人から歴史の教科書を貸してほしいとせがまれている。そんな中、私はというとひとり静かに自分の席に座っていた。
私は今、有頂天になっていた。理由は言わずもがな、英語の試験の点数が上がったからだ。
決して威張れることではないが、この英語嫌いは自他共に認める筋金入りで、返却の際に「頑張った」と教科担任に言ってもらえた程には成績が上がった。一応、これは私なりに”頑張った”結果であるということだけは言っておかなければならない。満点を取ったわけではないのだ。
「何百面相してんの?」
ひとりで考え事をしていると、いつの間にか登校してきた亥清くんが自分の机に鞄を下ろしながら私の顔を覗き込んでいた。
「亥清くん、おはよう」
「ん」
突然亥清くんが現れたことに驚きつつも挨拶をすると、何とも緩い返事が返ってくる。立っている亥清くんを見上げれば手で口元を覆って欠伸を噛み殺しているところだった。
そういえば、こうして朝に亥清くんと学校で会うのは初めてではないだろうか。最近まで仕事が忙しいからということで受けられる授業にだけ出席して来ては終わった瞬間に早退していたり、一日の授業が終わった放課後に課題を出す為だけに登校して来ていたりしていたのだ。実際亥清くんから忙しいと聞いていたし、それによりラビチャの連絡先も交換するに至ったのだが、もしかしたら仕事が落ち着いたのかもしれない。
「ねえ、亥清くん」
いつもの私だったらこの話題を振ったのだろうが、他に言いたいことがあった為一旦それを頭の片隅に追いやった。
亥清くんはいつになく元気な私を見たからか目をパチパチとさせている。
「なんかやけにテンション高くない?」
「高くもなるよ!英語の点数めっちゃ上がった!」
「あぁ、ラビチャでも送ってきてたやつ。よかったな」
「亥清くんが教えてくれたからだよ」
「あっそ」
はいはい、と軽くあしらわれている感じは否めないが、今はそれも気にならない。亥清くんが言っているように、試験結果が返ってきた日に結果の報告と勉強を教えてもらったお礼をラビチャを送ったのだ。
「よければお礼させてほしいな。かなりお世話になったから」
「気にしなくていいって。オレも教えてもらったし」
「そんなの割に合わないよ」
放課後の教室で勉強を教えてもらった日、早速ラビチャに訳の分からない英語の長文解読の問題を割と遠慮なく送ったのだ。それに分かりやすい解説付きで返信をしてくれていたのだが、途中からお互い文章を打つのが面倒になって電話に切り替えた。通話越しで勉強を教えてもらったのは一度だけではなくて、亥清くんが言っているように逆に私が他の教科を教えることもあったが、そんなものは片手で数えらる程しかない。
「あっ、ごめん、亥清くん忙しいよね」
――もしかしたら間違えたかもしれない。
突飛な提案と、珍しく食い下がる私に驚いたのか目を瞬かせている亥清くんを見て、急いで言い直した。感謝の押し売りになってしまっては元も子もない。
「忙しくない、大丈夫」
亥清くんは私がそう言うと一瞬固まり、少し考えるような素振りをしてから答えた。今度は私が固まった。
「本当?無理しなくても――」
「無理してないってば。で、どっか連れてってくれんの?」
何だか妙な反応をされて不思議に思ったが、そこまで言うならと疑問を流すことにした。
「亥清くん、甘いもの食べれる?」
「まぁ、うん」
「じゃあ、クレープ食べに行くのはどう?少し距離があるけど、キッチンカーが来てる公園があるんだって」
「いいよ。じゃあそこにしよう」
「やった」
「行きたかったの?」
「…………いや?」
「何だよ、今の間は」
そんなことを話していれば始業時間になっていたようで、担任が教室に入ってきたところで会話を中断させる。
私達の席は一番後ろの端だったことが幸いして、クラスメイトは私達が一緒に出掛ける予定を立てていることに気付くことはなかった。
試験に関係なく、授業と授業の間に設けられている休憩時間の教室は結構騒がしい。とある女子は教室の前方で輪になってお喋りをしているし、とある男子は隣のクラスから来た友人から歴史の教科書を貸してほしいとせがまれている。そんな中、私はというとひとり静かに自分の席に座っていた。
私は今、有頂天になっていた。理由は言わずもがな、英語の試験の点数が上がったからだ。
決して威張れることではないが、この英語嫌いは自他共に認める筋金入りで、返却の際に「頑張った」と教科担任に言ってもらえた程には成績が上がった。一応、これは私なりに”頑張った”結果であるということだけは言っておかなければならない。満点を取ったわけではないのだ。
「何百面相してんの?」
ひとりで考え事をしていると、いつの間にか登校してきた亥清くんが自分の机に鞄を下ろしながら私の顔を覗き込んでいた。
「亥清くん、おはよう」
「ん」
突然亥清くんが現れたことに驚きつつも挨拶をすると、何とも緩い返事が返ってくる。立っている亥清くんを見上げれば手で口元を覆って欠伸を噛み殺しているところだった。
そういえば、こうして朝に亥清くんと学校で会うのは初めてではないだろうか。最近まで仕事が忙しいからということで受けられる授業にだけ出席して来ては終わった瞬間に早退していたり、一日の授業が終わった放課後に課題を出す為だけに登校して来ていたりしていたのだ。実際亥清くんから忙しいと聞いていたし、それによりラビチャの連絡先も交換するに至ったのだが、もしかしたら仕事が落ち着いたのかもしれない。
「ねえ、亥清くん」
いつもの私だったらこの話題を振ったのだろうが、他に言いたいことがあった為一旦それを頭の片隅に追いやった。
亥清くんはいつになく元気な私を見たからか目をパチパチとさせている。
「なんかやけにテンション高くない?」
「高くもなるよ!英語の点数めっちゃ上がった!」
「あぁ、ラビチャでも送ってきてたやつ。よかったな」
「亥清くんが教えてくれたからだよ」
「あっそ」
はいはい、と軽くあしらわれている感じは否めないが、今はそれも気にならない。亥清くんが言っているように、試験結果が返ってきた日に結果の報告と勉強を教えてもらったお礼をラビチャを送ったのだ。
「よければお礼させてほしいな。かなりお世話になったから」
「気にしなくていいって。オレも教えてもらったし」
「そんなの割に合わないよ」
放課後の教室で勉強を教えてもらった日、早速ラビチャに訳の分からない英語の長文解読の問題を割と遠慮なく送ったのだ。それに分かりやすい解説付きで返信をしてくれていたのだが、途中からお互い文章を打つのが面倒になって電話に切り替えた。通話越しで勉強を教えてもらったのは一度だけではなくて、亥清くんが言っているように逆に私が他の教科を教えることもあったが、そんなものは片手で数えらる程しかない。
「あっ、ごめん、亥清くん忙しいよね」
――もしかしたら間違えたかもしれない。
突飛な提案と、珍しく食い下がる私に驚いたのか目を瞬かせている亥清くんを見て、急いで言い直した。感謝の押し売りになってしまっては元も子もない。
「忙しくない、大丈夫」
亥清くんは私がそう言うと一瞬固まり、少し考えるような素振りをしてから答えた。今度は私が固まった。
「本当?無理しなくても――」
「無理してないってば。で、どっか連れてってくれんの?」
何だか妙な反応をされて不思議に思ったが、そこまで言うならと疑問を流すことにした。
「亥清くん、甘いもの食べれる?」
「まぁ、うん」
「じゃあ、クレープ食べに行くのはどう?少し距離があるけど、キッチンカーが来てる公園があるんだって」
「いいよ。じゃあそこにしよう」
「やった」
「行きたかったの?」
「…………いや?」
「何だよ、今の間は」
そんなことを話していれば始業時間になっていたようで、担任が教室に入ってきたところで会話を中断させる。
私達の席は一番後ろの端だったことが幸いして、クラスメイトは私達が一緒に出掛ける予定を立てていることに気付くことはなかった。