隣席の亥清くんと友達になりました
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「最近よくスマホ触ってるよね」
「そう?」
いつもより早めに登校したある朝。教室を覗き込むとまだ誰も登校していないようでクラスメイトは誰一人いなかった。流石に早過ぎたかと思いながらスマホを見て暇を潰していると、「今日早いね」と朝練を終えて戻って来た友人にそう訊かれた。
「返信も返ってくるの早いし」
「すぐ通知に気付けるからかな」
和やかな雰囲気だが、内容だけ聞けばまるで浮気を疑い疑われた恋人の会話である。
それ以降黙って私の顔をジッと見る友人にたじろぐも、何か言いたげな様子に見えて次の言葉を待つ。すると、突然ニヤッと笑った。
「もしかして彼氏? なーんて……」
その一言で自分の身体がビシッと固まった。図星である。
いつもならテンポよく返せる軽口も浮かばず口を噤むと、友人が私の両肩を思いっきり掴んだ。
「えっ、何で赤くなって――嘘でしょう!?」
「本当にめざといよね……」
ガクガクと前後に揺らされながら絞り出した声は小さく、目の前の彼女に届いているのか怪しい。
悠くんと付き合い始めて数週間が経った。が、あまり自分から周りに打ち明けるのもどうかと思い、まだ誰にも話していない。照れ臭かったという理由もある。
「何で黙ってたの!」「誰? 誰?」と興奮冷めやらぬ様子で騒ぐ友人を宥めながら苦笑いを浮かべた。
ずっとしたいって言ってたもんね、恋バナ。
私は早々に白旗を上げたのだった。
* * *
家で悠くんの到着を待っていると約束通りの時間にインターホンが鳴り、小走りで玄関に向かう。ドアスコープを覗き、悠くんであることを確認してからドアを開けた。
「ライブ最高だった!」
玄関先で待っていた悠くんを家に引き入れ、開口一番にそう言うと、彼は言われると分かっていたのか驚いた様子もなく「だろ」と得意げな顔をした。
先日、悠くんが出演したライブイベントの話である。悠くんが所属しているŹOOĻの他にも三組の人気アイドルグループが出演していたそのライブは、開催が発表されてからというものたちまち大きな話題を呼んだ。
それを抜きにしてもかなりチケットの倍率が高かったようで、クラスメイトやアルバイト先でも当落に一喜一憂する声が聞こえてきた。
そんな中奇跡的に当選を果たし、四葉くん推しのアルバイト仲間と一緒にペンライトを握りしめて観に行った、というわけだ。
リビングに通してお茶を準備しながらライブについての話をしていると、悠くんは突然何かを思い出したように「そういえば」と声を上げた。
「あんた、ペンライトの色青にしてただろ」
「それはŹOOĻの前にIDOLiSH7が出てて、そのまま変えるの忘れてたから――って、何で知ってるの?」
「あんなステージに近い席にいたら分かるだろ」
ジトッとした目を向けられて慌てて訂正をする。
確かに今回かなり良い席が当たりステージに近い場所にいたのだが、まさか気付いていたとは思わなかった。
「まぁ、別にいいけど」
そう口では言いながらも不満げな表情はそのままだ。
「いいけどさぁ」
「――っ!?」
頭の後ろに手が周り、ぐいっと前へ引き寄せられる。そして、顔が近付いて唇に触れるだけのキスが落とされた。
「なんか癪なんだけど」
ベッ、と舌を出した悠くんの顔は赤く染まっている。私の顔もそれ以上に真っ赤になっているのだろうな、と回らない頭で現実逃避をしたのだった。
「そう?」
いつもより早めに登校したある朝。教室を覗き込むとまだ誰も登校していないようでクラスメイトは誰一人いなかった。流石に早過ぎたかと思いながらスマホを見て暇を潰していると、「今日早いね」と朝練を終えて戻って来た友人にそう訊かれた。
「返信も返ってくるの早いし」
「すぐ通知に気付けるからかな」
和やかな雰囲気だが、内容だけ聞けばまるで浮気を疑い疑われた恋人の会話である。
それ以降黙って私の顔をジッと見る友人にたじろぐも、何か言いたげな様子に見えて次の言葉を待つ。すると、突然ニヤッと笑った。
「もしかして彼氏? なーんて……」
その一言で自分の身体がビシッと固まった。図星である。
いつもならテンポよく返せる軽口も浮かばず口を噤むと、友人が私の両肩を思いっきり掴んだ。
「えっ、何で赤くなって――嘘でしょう!?」
「本当にめざといよね……」
ガクガクと前後に揺らされながら絞り出した声は小さく、目の前の彼女に届いているのか怪しい。
悠くんと付き合い始めて数週間が経った。が、あまり自分から周りに打ち明けるのもどうかと思い、まだ誰にも話していない。照れ臭かったという理由もある。
「何で黙ってたの!」「誰? 誰?」と興奮冷めやらぬ様子で騒ぐ友人を宥めながら苦笑いを浮かべた。
ずっとしたいって言ってたもんね、恋バナ。
私は早々に白旗を上げたのだった。
* * *
家で悠くんの到着を待っていると約束通りの時間にインターホンが鳴り、小走りで玄関に向かう。ドアスコープを覗き、悠くんであることを確認してからドアを開けた。
「ライブ最高だった!」
玄関先で待っていた悠くんを家に引き入れ、開口一番にそう言うと、彼は言われると分かっていたのか驚いた様子もなく「だろ」と得意げな顔をした。
先日、悠くんが出演したライブイベントの話である。悠くんが所属しているŹOOĻの他にも三組の人気アイドルグループが出演していたそのライブは、開催が発表されてからというものたちまち大きな話題を呼んだ。
それを抜きにしてもかなりチケットの倍率が高かったようで、クラスメイトやアルバイト先でも当落に一喜一憂する声が聞こえてきた。
そんな中奇跡的に当選を果たし、四葉くん推しのアルバイト仲間と一緒にペンライトを握りしめて観に行った、というわけだ。
リビングに通してお茶を準備しながらライブについての話をしていると、悠くんは突然何かを思い出したように「そういえば」と声を上げた。
「あんた、ペンライトの色青にしてただろ」
「それはŹOOĻの前にIDOLiSH7が出てて、そのまま変えるの忘れてたから――って、何で知ってるの?」
「あんなステージに近い席にいたら分かるだろ」
ジトッとした目を向けられて慌てて訂正をする。
確かに今回かなり良い席が当たりステージに近い場所にいたのだが、まさか気付いていたとは思わなかった。
「まぁ、別にいいけど」
そう口では言いながらも不満げな表情はそのままだ。
「いいけどさぁ」
「――っ!?」
頭の後ろに手が周り、ぐいっと前へ引き寄せられる。そして、顔が近付いて唇に触れるだけのキスが落とされた。
「なんか癪なんだけど」
ベッ、と舌を出した悠くんの顔は赤く染まっている。私の顔もそれ以上に真っ赤になっているのだろうな、と回らない頭で現実逃避をしたのだった。
40/40ページ
