隣席の亥清くんと友達になりました
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それから私達は、ゆっくりと園内を巡った。
途中に通りかかった売店でテイクアウトして空腹を満たし、他愛ない話をしながら時々写真を撮っては悠くんの全身黒ずくめで不審者満載な格好にふたりして笑ったり――。ほんの数時間のことだったが、イルミネーションを満喫した。
度々すれ違うカップルを見て、自分の手元が気になったこともあった。――もしかして、私達も側から見たらカップルに見えるのだろうか。もしそうだったら悠くんに申し訳ないな、と思いつつも手袋をしていない手に温かさが伝わってきて、不思議と離したいとは思わなかった。それなりに時間が経っても何も言ってこないから、もしかしたら悠くんは手を繋いでいることを忘れているかもしれないけれど。
そうこうしているうちに最初に通ったゲート近くまで戻ってきたようだった。
ゲートが見えてくると歩くスピードを緩め、近くにあったベンチに腰掛けた。どちらがそう言い出したのかは分からないが、自然とそうなっていたのだ。スマホを取り出し時刻を確認すると、まだ時間的には余裕があった。もしかしたら、ふたり共がどことなくこのまま帰ってしまうのは名残惜しいと思っていたのかもしれない。
今回は悠くんが変装に注力してきたことが甲を制したのか、一度も騒がれることもなく密かに過ごせたように思う。このまま何事もなく家に着きますように、思わずそう願ってしまった。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
暫く座って喋っていると、悠くんが「寒っ」と両腕を擦りながら言った。やはり長時間外にいたからか、身体が冷えてしまったらしい。一等強い風が吹き、身体を縮こまらせた。
マフラーを巻き直してから立ち上がった瞬間、私は大切なことを思い出して「あ!」と声を上げて、慌てて口を噤んだ。周りを見渡したが、特に視線は感じず胸を撫で下ろした。
「そうそう、これ渡すの忘れてた」
何故今まで忘れていたのだろうか。家を出た時から今までの間、ずっと手に提げていた紙袋を悠くんに差し出した。これは今日会ったら必ず渡そうと思っていた物である。
「何これ。――マドレーヌ?」
いきなり何を手渡されたのか、恐る恐るといった様子でそれを受け取り、中身を覗いてから入っていた物を取り出した。
中に入れていたのは、昨晩作ったマドレーヌだった。透明袋に個包装したマドレーヌをいくつか窓付きのギフトボックスに詰めていた為、封を開けなくても中身が分かるようになっている。
「この前学校で聞いたでしょう? 誕生日プレゼント何がいいかって」
あの日からずっと悩んでいたのだ。例え何を渡したとしても悠くんは文句なんて言わないと分かっていたが、適当に選ぶなんてことはしたくなかった。
ネットで検索をかけながら悩みに悩みまくり、やっと決まったと思ったら『お菓子言葉』なんてものがあるとを知ってしまい、更に頭を悩ませる要因となった。
「本当に作ってくれたんだ」
「えっ、もしかして冗談だったとか――?」
「そんなんじゃないけどさ」
ギョッとして聞くと、食い気味で否定されて胸を撫で下ろす。何にしようか決めかねてた時に何度か思ったことだったからだ。
「……嬉しいよ。ありがとう」
マドレーヌを見つめるその表情は、何か大切なものを見るような――優しい瞳をしていた。
途中に通りかかった売店でテイクアウトして空腹を満たし、他愛ない話をしながら時々写真を撮っては悠くんの全身黒ずくめで不審者満載な格好にふたりして笑ったり――。ほんの数時間のことだったが、イルミネーションを満喫した。
度々すれ違うカップルを見て、自分の手元が気になったこともあった。――もしかして、私達も側から見たらカップルに見えるのだろうか。もしそうだったら悠くんに申し訳ないな、と思いつつも手袋をしていない手に温かさが伝わってきて、不思議と離したいとは思わなかった。それなりに時間が経っても何も言ってこないから、もしかしたら悠くんは手を繋いでいることを忘れているかもしれないけれど。
そうこうしているうちに最初に通ったゲート近くまで戻ってきたようだった。
ゲートが見えてくると歩くスピードを緩め、近くにあったベンチに腰掛けた。どちらがそう言い出したのかは分からないが、自然とそうなっていたのだ。スマホを取り出し時刻を確認すると、まだ時間的には余裕があった。もしかしたら、ふたり共がどことなくこのまま帰ってしまうのは名残惜しいと思っていたのかもしれない。
今回は悠くんが変装に注力してきたことが甲を制したのか、一度も騒がれることもなく密かに過ごせたように思う。このまま何事もなく家に着きますように、思わずそう願ってしまった。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
暫く座って喋っていると、悠くんが「寒っ」と両腕を擦りながら言った。やはり長時間外にいたからか、身体が冷えてしまったらしい。一等強い風が吹き、身体を縮こまらせた。
マフラーを巻き直してから立ち上がった瞬間、私は大切なことを思い出して「あ!」と声を上げて、慌てて口を噤んだ。周りを見渡したが、特に視線は感じず胸を撫で下ろした。
「そうそう、これ渡すの忘れてた」
何故今まで忘れていたのだろうか。家を出た時から今までの間、ずっと手に提げていた紙袋を悠くんに差し出した。これは今日会ったら必ず渡そうと思っていた物である。
「何これ。――マドレーヌ?」
いきなり何を手渡されたのか、恐る恐るといった様子でそれを受け取り、中身を覗いてから入っていた物を取り出した。
中に入れていたのは、昨晩作ったマドレーヌだった。透明袋に個包装したマドレーヌをいくつか窓付きのギフトボックスに詰めていた為、封を開けなくても中身が分かるようになっている。
「この前学校で聞いたでしょう? 誕生日プレゼント何がいいかって」
あの日からずっと悩んでいたのだ。例え何を渡したとしても悠くんは文句なんて言わないと分かっていたが、適当に選ぶなんてことはしたくなかった。
ネットで検索をかけながら悩みに悩みまくり、やっと決まったと思ったら『お菓子言葉』なんてものがあるとを知ってしまい、更に頭を悩ませる要因となった。
「本当に作ってくれたんだ」
「えっ、もしかして冗談だったとか――?」
「そんなんじゃないけどさ」
ギョッとして聞くと、食い気味で否定されて胸を撫で下ろす。何にしようか決めかねてた時に何度か思ったことだったからだ。
「……嬉しいよ。ありがとう」
マドレーヌを見つめるその表情は、何か大切なものを見るような――優しい瞳をしていた。
