隣席の亥清くんと友達になりました
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「じゃあ、行ってくるわね」
スーツ姿でトートバッグを肩に掛けた母親が私の顔を心配そうに覗き込む。こんなに朝早くに母親の姿を見るのは久しぶりだ。
「いってらっしゃい」
「ちゃんと病院に行くのよ」
「ん」
未だに心配そうにしている母親に「遅れるよ」と言えば、もう一度こちらを見た後に部屋を出て行く。咳が出るせいで喉を痛めたらしく蚊の鳴くようなか細い声しか出なかったが、しっかりと聞こえようだ。
同時に脇から機械音が鳴ったそれを取り出して、ため息を吐いた。
「38℃……」
まさか小時間雨に打たれただけでこんなにも熱が出るとは思わなかった。
――いや、身体を冷やしたことだけが原因ではないかもしれない。
夏休みではセーブしていたアルバイトのシフトを増やしたからか、それとも学校行事の準備で早朝登校したり最終下校時間まで残っていたからか、或いは試験が近い影響か――よく考えてみれば心当たりがあり過ぎた。全く、慣れないことはするものではない。
昨日、せっかく悠くんが自身の登校を後回しにしてまで家まで送ってくれたのに。
大きなため息がこぼれてしまうのも仕方がないだろう。
* * *
解熱剤と咳止めが入った袋が歩く度にガサゴソと音を立てる。
「もう無理……」
リビングに入り、通りがけの机に薬を置いて――力尽きてしまったようにソファに身を投げ出した。
ちゃんと病院に行った私、偉いと思う。
そうひとりでごちると目を瞑った。
思うように動いてくれない身体を引き摺りながらもなんとか病院に行くと、診断結果はただの風邪だった。安静にしていれば一、二日で回復するとのことだったからひとまず安心である。
ソファの下からゴンッ、という音が聞こえたが正直構っていられない。恐らく上着のポケットに入っていたスマホが床に落ちたのだろう。
ベッドに入った方がいいのは分かっているが、目を瞑ってしまえばもうダメだった。
スマホが震えていることに気付かず、そのまま眠ってしまった。
「――うわ、もう夕方」
目を開くと外は既に日が落ちており、部屋の中も電気が付いていない為かかなり暗い。微かに聞こえる水音から、どうやら雨も降っているようだった。
身体を起こそうとするもバランスを崩し、そのままソファから落ちる。その際に視界に入った袋を見て飲み忘れたことに気付き顔を顰めた。せっかく貰ってきたのに――心なしか身体が重いように感じるのは気のせいだろうか。
今度こそゆっくりと身体を起こすと、今度はスマホが目に止まった。そういえば朝から見ていなかったと思い、ラビチャを開いた。
「めっちゃきてる……」
主に母や友人からで、どれも数時間前に送ってくれたものだった。
申し訳ないと思いつつ上から順番にトーク画面を開いていくと、一番下にあった名前に思わず「あっ」と声が出た。送り主は悠くんだ。
昨日家まで送ってもらった後にラビチャをもらっていたが、一切返信できていない状態だった。もしかして今日は登校していたのだろうか。
『玄関外のドアノブ』『余計だったら捨てて』と立て続けに送られてきていた文章を見た瞬間、ソファから立ち上がり玄関を目指した。この時ばかりは身体の怠さを忘れていたような気がする。
「本当にある……」
鍵を開けて玄関外を確認すると、ドアノブに引っ掛けられたビニール袋を発見した。中身はスポーツドリンクやヨーグルト等といった口に入れやすい物が複数入っている。
――後でお礼言っておかないと。
気を使わせてしまったことを申し訳ないと思いつつ、こういう時に心配してくれる人達がいることに心が温まるのを感じた。
スーツ姿でトートバッグを肩に掛けた母親が私の顔を心配そうに覗き込む。こんなに朝早くに母親の姿を見るのは久しぶりだ。
「いってらっしゃい」
「ちゃんと病院に行くのよ」
「ん」
未だに心配そうにしている母親に「遅れるよ」と言えば、もう一度こちらを見た後に部屋を出て行く。咳が出るせいで喉を痛めたらしく蚊の鳴くようなか細い声しか出なかったが、しっかりと聞こえようだ。
同時に脇から機械音が鳴ったそれを取り出して、ため息を吐いた。
「38℃……」
まさか小時間雨に打たれただけでこんなにも熱が出るとは思わなかった。
――いや、身体を冷やしたことだけが原因ではないかもしれない。
夏休みではセーブしていたアルバイトのシフトを増やしたからか、それとも学校行事の準備で早朝登校したり最終下校時間まで残っていたからか、或いは試験が近い影響か――よく考えてみれば心当たりがあり過ぎた。全く、慣れないことはするものではない。
昨日、せっかく悠くんが自身の登校を後回しにしてまで家まで送ってくれたのに。
大きなため息がこぼれてしまうのも仕方がないだろう。
* * *
解熱剤と咳止めが入った袋が歩く度にガサゴソと音を立てる。
「もう無理……」
リビングに入り、通りがけの机に薬を置いて――力尽きてしまったようにソファに身を投げ出した。
ちゃんと病院に行った私、偉いと思う。
そうひとりでごちると目を瞑った。
思うように動いてくれない身体を引き摺りながらもなんとか病院に行くと、診断結果はただの風邪だった。安静にしていれば一、二日で回復するとのことだったからひとまず安心である。
ソファの下からゴンッ、という音が聞こえたが正直構っていられない。恐らく上着のポケットに入っていたスマホが床に落ちたのだろう。
ベッドに入った方がいいのは分かっているが、目を瞑ってしまえばもうダメだった。
スマホが震えていることに気付かず、そのまま眠ってしまった。
「――うわ、もう夕方」
目を開くと外は既に日が落ちており、部屋の中も電気が付いていない為かかなり暗い。微かに聞こえる水音から、どうやら雨も降っているようだった。
身体を起こそうとするもバランスを崩し、そのままソファから落ちる。その際に視界に入った袋を見て飲み忘れたことに気付き顔を顰めた。せっかく貰ってきたのに――心なしか身体が重いように感じるのは気のせいだろうか。
今度こそゆっくりと身体を起こすと、今度はスマホが目に止まった。そういえば朝から見ていなかったと思い、ラビチャを開いた。
「めっちゃきてる……」
主に母や友人からで、どれも数時間前に送ってくれたものだった。
申し訳ないと思いつつ上から順番にトーク画面を開いていくと、一番下にあった名前に思わず「あっ」と声が出た。送り主は悠くんだ。
昨日家まで送ってもらった後にラビチャをもらっていたが、一切返信できていない状態だった。もしかして今日は登校していたのだろうか。
『玄関外のドアノブ』『余計だったら捨てて』と立て続けに送られてきていた文章を見た瞬間、ソファから立ち上がり玄関を目指した。この時ばかりは身体の怠さを忘れていたような気がする。
「本当にある……」
鍵を開けて玄関外を確認すると、ドアノブに引っ掛けられたビニール袋を発見した。中身はスポーツドリンクやヨーグルト等といった口に入れやすい物が複数入っている。
――後でお礼言っておかないと。
気を使わせてしまったことを申し訳ないと思いつつ、こういう時に心配してくれる人達がいることに心が温まるのを感じた。
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