隣席の亥清くんと友達になりました
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通学路を全力疾走する人がひとり。
顔目掛けて容赦なく叩きつけられる雨を遮る為に片手で目元に手を添えるが、あまり意味が無い。
雨が降る中、何故傘もささずに全身に雨を受ける羽目になっているのか――。
傘は朝家を出る時に持って来たし、何なら今手元にある。ただし、雨傘として機能しないが。
数分前、通学路である閑静な住宅街を歩いていたら強風に煽られ、さしていた傘がひっくり返った際に受け骨がポッキリと折れてしまい、使えなくなってしまったのだ。
幸いにも家までそう遠くない場所まで来ていたから、ここから走って帰れば――と高を括っていたら痛い目をみた。もう冬に突入しつつあるからかとても寒い。
早く帰りたい一心で必死に走っていると、視界にあるものが入り自然と足が止まった。
「いやいや、何でそんな所で寛いでるの……」
静かにこちらを凝視するアイツを半目で見据える。
最近この道を通るとよく見かけるようになった、件の猫だった。
見かける度に場所や位置、体勢までもがまるっきり一緒で、たまに置物なのではと疑ってしまう程に微動だにしないのだが、まさかこんな悪天候の中でも塀の上を死守しているとは思わない。
「こんな所にいたら風邪引いちゃうよ」
そう声を掛けても雨の音で聞こえていないのか、はたまた聞く気がないのか――ジッとこちらを見る猫と睨めっこをする。相変わらず何を考えているか分からない。
あんなに急いで帰ろうとしていたのにすっかり猫に気を取られしまい暫くその場に留まっていると、いきなりピタッと雨が止んだ。
不思議に思って見上げると、頭上には傘が。
「風邪引くのはあんただよ! 何で傘さしてないの!?」
「あ、悠くん」
「あ、じゃない!」
今日学校に来ていなかった筈の悠くんだった。
怪訝な視線を向けてくる悠くんに言い訳するかのように傘が折れたことを説明すると、次第に憐憫が滲んできて「うわ……」と顔を顰められた。悠くんのそれは、まるで私の心情そのものである。
「ほら、帰るんでしょ。早く」
私の肩をぐいぐいと押して「早く歩け」と促されて歩き始める。が、はたと立ち止まった。
「今から学校に行くつもりだったんじゃないの?」
「提出物出すだけだから別に急いでないし、ずぶ濡れになってる人無視して行くとか絶ッ対無理だから」
察しろよ、と無言で訴えてくる悠くんから目を逸らすのと同時に再び帰路についた。この無言の圧力には慣れたものである。
「……助かります」
口を開くと出そうな遠慮の言葉を呑む。色々言いたいことはあるが、雨が凌げる状況下で家まで帰れるのはかなり嬉しい。
素直に聞き入れた私にどう思ったのか、悠くんは満足そうに笑ったのだった。
顔目掛けて容赦なく叩きつけられる雨を遮る為に片手で目元に手を添えるが、あまり意味が無い。
雨が降る中、何故傘もささずに全身に雨を受ける羽目になっているのか――。
傘は朝家を出る時に持って来たし、何なら今手元にある。ただし、雨傘として機能しないが。
数分前、通学路である閑静な住宅街を歩いていたら強風に煽られ、さしていた傘がひっくり返った際に受け骨がポッキリと折れてしまい、使えなくなってしまったのだ。
幸いにも家までそう遠くない場所まで来ていたから、ここから走って帰れば――と高を括っていたら痛い目をみた。もう冬に突入しつつあるからかとても寒い。
早く帰りたい一心で必死に走っていると、視界にあるものが入り自然と足が止まった。
「いやいや、何でそんな所で寛いでるの……」
静かにこちらを凝視するアイツを半目で見据える。
最近この道を通るとよく見かけるようになった、件の猫だった。
見かける度に場所や位置、体勢までもがまるっきり一緒で、たまに置物なのではと疑ってしまう程に微動だにしないのだが、まさかこんな悪天候の中でも塀の上を死守しているとは思わない。
「こんな所にいたら風邪引いちゃうよ」
そう声を掛けても雨の音で聞こえていないのか、はたまた聞く気がないのか――ジッとこちらを見る猫と睨めっこをする。相変わらず何を考えているか分からない。
あんなに急いで帰ろうとしていたのにすっかり猫に気を取られしまい暫くその場に留まっていると、いきなりピタッと雨が止んだ。
不思議に思って見上げると、頭上には傘が。
「風邪引くのはあんただよ! 何で傘さしてないの!?」
「あ、悠くん」
「あ、じゃない!」
今日学校に来ていなかった筈の悠くんだった。
怪訝な視線を向けてくる悠くんに言い訳するかのように傘が折れたことを説明すると、次第に憐憫が滲んできて「うわ……」と顔を顰められた。悠くんのそれは、まるで私の心情そのものである。
「ほら、帰るんでしょ。早く」
私の肩をぐいぐいと押して「早く歩け」と促されて歩き始める。が、はたと立ち止まった。
「今から学校に行くつもりだったんじゃないの?」
「提出物出すだけだから別に急いでないし、ずぶ濡れになってる人無視して行くとか絶ッ対無理だから」
察しろよ、と無言で訴えてくる悠くんから目を逸らすのと同時に再び帰路についた。この無言の圧力には慣れたものである。
「……助かります」
口を開くと出そうな遠慮の言葉を呑む。色々言いたいことはあるが、雨が凌げる状況下で家まで帰れるのはかなり嬉しい。
素直に聞き入れた私にどう思ったのか、悠くんは満足そうに笑ったのだった。