隣席の亥清くんと友達になりました
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体育館内に響くドリブル音とスキール音、試合を行っている人達の掛け声を聞きながら首筋を流れる汗を適当に拭った。このところようやく過ごしやすい気温にまで落ち着いたものの、やはり身体を動かすとどうにも汗が滲んでしまう。
今日の体育は、体育館でバスケが行われることになった。元々グラウンドで行う予定だったのだが、生憎の雨天となり授業内容が急遽変更になってしまったのだ。”廊下を走らない”を厳守しつつも急いで体育館に移動できたのは本鈴が鳴る十数秒前のことである。――結果的に授業には間に合ったが、変更場所の通達がクラスに周知されたのが授業が始まる五分前だったのは解せない。教室から体育館までの距離を考えてほしいと心から思った。
結局この一時間何をするか決めていないという教科担任の「何したい?」という最早丸投げともとれる問いに多数決によってバスケに決まり、先程出席番号順で適当に組まれたチームで一試合終えたところだった。
因みに結果は惨敗だ。相手チームに現役バスケ部員が固まっていたんだから勝てっこない。
「あれは相手が悪かった」
「手加減してくれてたみたいだけどね。そっちは?」
「瞬殺」
「あぁ……」
隣に座っている友人とは別チームだったから彼女の様子を気にかける余裕が無かったが、どうやら私達と同じ状況だったらしい。
暫く他のチームの試合を観ていたが、ふわり、と湿気った風が入ってきて近くにある扉に目を向ける。室内に雨が入ってこないようにどれも閉め切られているのに、その扉だけ少し隙間が開いていた。そこから外の様子をうかがってみると、未だにかなりの量の雨が降っているのが分かる。
――悠くんは大丈夫だろうか。
ふと脳裏に浮かんたのはもうひとりの友人だった。
体育祭、文化祭などの一大イベントを一通り終えた今、次に待っているのは定期試験だ。悠くんは新学期が始まってからは登校してくることが増え、行事にも参加していた。仕事が落ち着いたのだと思っていた矢先、文化祭が終わった途端にパタリと姿を見なくなってしまった。本人にそれとなく聞いてみれば、どうやらマネージャーがスケジュールを調整してくれていたとのことだ。
「蒼、最近楽しそうだよね」
「そう?」
授業そっちのけで他事を考えているのがバレたのか友人がジッとこちらを見ていた。
「よく笑うようになった気がする」
「ほら、今も」と言われて咄嗟に両手で頬を揉むと、友人は声を上げて笑い出す。そんなにみっともない顔をしていただろうか。確かに口角が上がっていた自覚はある。
考えてみれば、最近かなり充実している気がする。学校行事が立て続けに行われたこと以外に特段生活自体に変化があったわけではない。となると――。
「あー……」
「なに? 心当たりでもあるの?」
十中八九、悠くんだなぁ。
顔を覗き込んでくる友人に曖昧な返事をしながらそう思った。
悠くんが登校して来ない為学校で顔を合わせる日が少ないが、ラビチャで頻繁に連絡を取り合っている。
――名前で呼び合える程に仲が良い人が、今横にいる彼女以外にもできたことがとても嬉しい。
また他事を考え出した私に何を思ったのか、再び友人が私の顔を凝視しながら口を開いた。
「恋?」
「ぶっ」
飲んでいた水が変な所に入ってしまった。
咳き込みながら文句を言う代わりに肘で突く。彼女はどこ吹く風だ。
――何だか、悠くんと話したくなってきた。
色々と聞き出したそうに目を輝かせて詰め寄ってくる友人を宥めながら、帰ったら連絡を取ってみようと心に決めた。
今日の体育は、体育館でバスケが行われることになった。元々グラウンドで行う予定だったのだが、生憎の雨天となり授業内容が急遽変更になってしまったのだ。”廊下を走らない”を厳守しつつも急いで体育館に移動できたのは本鈴が鳴る十数秒前のことである。――結果的に授業には間に合ったが、変更場所の通達がクラスに周知されたのが授業が始まる五分前だったのは解せない。教室から体育館までの距離を考えてほしいと心から思った。
結局この一時間何をするか決めていないという教科担任の「何したい?」という最早丸投げともとれる問いに多数決によってバスケに決まり、先程出席番号順で適当に組まれたチームで一試合終えたところだった。
因みに結果は惨敗だ。相手チームに現役バスケ部員が固まっていたんだから勝てっこない。
「あれは相手が悪かった」
「手加減してくれてたみたいだけどね。そっちは?」
「瞬殺」
「あぁ……」
隣に座っている友人とは別チームだったから彼女の様子を気にかける余裕が無かったが、どうやら私達と同じ状況だったらしい。
暫く他のチームの試合を観ていたが、ふわり、と湿気った風が入ってきて近くにある扉に目を向ける。室内に雨が入ってこないようにどれも閉め切られているのに、その扉だけ少し隙間が開いていた。そこから外の様子をうかがってみると、未だにかなりの量の雨が降っているのが分かる。
――悠くんは大丈夫だろうか。
ふと脳裏に浮かんたのはもうひとりの友人だった。
体育祭、文化祭などの一大イベントを一通り終えた今、次に待っているのは定期試験だ。悠くんは新学期が始まってからは登校してくることが増え、行事にも参加していた。仕事が落ち着いたのだと思っていた矢先、文化祭が終わった途端にパタリと姿を見なくなってしまった。本人にそれとなく聞いてみれば、どうやらマネージャーがスケジュールを調整してくれていたとのことだ。
「蒼、最近楽しそうだよね」
「そう?」
授業そっちのけで他事を考えているのがバレたのか友人がジッとこちらを見ていた。
「よく笑うようになった気がする」
「ほら、今も」と言われて咄嗟に両手で頬を揉むと、友人は声を上げて笑い出す。そんなにみっともない顔をしていただろうか。確かに口角が上がっていた自覚はある。
考えてみれば、最近かなり充実している気がする。学校行事が立て続けに行われたこと以外に特段生活自体に変化があったわけではない。となると――。
「あー……」
「なに? 心当たりでもあるの?」
十中八九、悠くんだなぁ。
顔を覗き込んでくる友人に曖昧な返事をしながらそう思った。
悠くんが登校して来ない為学校で顔を合わせる日が少ないが、ラビチャで頻繁に連絡を取り合っている。
――名前で呼び合える程に仲が良い人が、今横にいる彼女以外にもできたことがとても嬉しい。
また他事を考え出した私に何を思ったのか、再び友人が私の顔を凝視しながら口を開いた。
「恋?」
「ぶっ」
飲んでいた水が変な所に入ってしまった。
咳き込みながら文句を言う代わりに肘で突く。彼女はどこ吹く風だ。
――何だか、悠くんと話したくなってきた。
色々と聞き出したそうに目を輝かせて詰め寄ってくる友人を宥めながら、帰ったら連絡を取ってみようと心に決めた。