隣席の亥清くんと友達になりました
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※7周年特スト 若干ネタバレあります※
一ヶ月以上もあった夏休みもあっという間に終わってしまい、新学期が始まった。
暦の上ではとっくに秋である筈が、容赦なく照りつける太陽は九月に入っても健在だった。十月を過ぎ、十一月になってやっと秋らしい気温にまで落ち着いてきた今は幾分過ごしやすくなってきている。
そして、今この季節は学校行事が目白押しだ。体育祭、文化祭、期末試験――。楽しいことばかりではないが、どこか生徒の心は浮ついているように思う。
各々行事の準備や勉強に追われている一方、自分はというと、学校に顔を出すよりもテレビ局や所属事務所を訪ねることが格段に多かった。仕事があるこの状況は喜ぶべきなのだろうが、何というか――タイミングというものがあるだろう。
今も制服ではなくステージ衣装を身に纏い、用意された楽屋でスタッフが呼びに来るのを待っていた。
身支度が終わってしまうと手持ち無沙汰になってしまって、向かいに座って台本を読んでいる巳波を横目にケータリングを手に取る。いつ出ることになるか分からない為、ドアの方を気にしながら片手間で食べられるお菓子を選んだ。
「どなたかのスマホ鳴っていません?」
「あ、オレかも」
遠くで鳴っている音が自分のスマホからだと気付き、席を立つ。そういえば楽屋に到着してから何かと慌ただしくしていてスマホを見る時間が無かった。
鞄をガサゴソと探り通知を確認する。表示されているのはやはりラビチャだった。
この数時間の間に送られてきたそれを走り読み、緊急性がある内容が書かれていないかだけチェックをする。今返信しなかったものは仕事が終わってから返信するとして――ふと、件のクラスメイトの名前を見つけてスクロールする手が止まった。その瞬間ドクン、と心臓が鳴ったのが分かった。
『文化祭の話したよ』
という文章と共に写真が一枚。その写真には一面にビッシリと書かれている黒板が写っている。
先頭にデカデカと書かれた文字は『文化祭のクラス企画について』。授業のどこかで近々行われる文化祭についての話し合いが行われたのだろう。毎年各クラスで出し物を企画する決まりがあるのだ。
結局、今日中に企画を固めることはできなかったらしいが、よくこれだけの案が出たものだと感心する。
写真をアップにして書かれた文章をひとつずつ読んでいくと、何やら変なことが書かれている箇所に気付いてしまった。何だよ、『コスプレスタンプラリー』って。
「随分楽しそうですね」
「うわっ!?」
いつの間にこちらに来たのだろう。スマホに夢中になっていたオレの背後から巳波の声が聞こえて飛び上がった。
オレの反応が予想通りだったのか巳波はクスクスと笑っていて、それが何だか悔しくて顔を顰める。
「もしかして、先日スーパーに寄った時に一緒にいた方ですか?」
「……そう」
巳波相手に嘘をついてもすぐに見破られてしまうだろうと思い、癪だが素直に答えた。
あいつとラビチャを交換したあの日、「送っていくついでだから」と宇都木さんがスーパーまで送り迎えをしてくれたのだが、実は同じ現場に行った巳波も車内にいた。その時はふたりから何も聞かれなかったから内心安心していたのにバッチリと見られていたらしい。思わず頭を抱えた。
「何?」
「いえ。和泉さんと四葉さんと仲良くされていることは知っていましたが、おふたり以上に気心の知れた方がいらっしゃったんだな、と」
しかも女の子。と口にはしなかったが、言わんとしていることを嫌でも察してしまう。巳波の口元は上がっている。これは、完全に揶揄いモードに入っている。
「ガールフレンドですか?」
「違うってば! 蒼は――」
「名前で呼び合うくらい仲がよろしいんですね」
「だ・か・ら!」
ふふふ、ととても楽しそうにしている巳波を恨めしく思う。そんなに分かりやすかっただろうか。嘗て和泉と四葉と話した時のことを思い出して頭を振った。
本当は、オレだけ見てくれればいいのに。
――なんて、無理に決まってるのに。
今まで楽屋の外にいたトウマと虎於が戻ってきて、その数分後にスタッフが楽屋に入ってくる。その頃には頭の中でモヤモヤと渦巻いていた雑念を頭の片隅に追いやった。
一ヶ月以上もあった夏休みもあっという間に終わってしまい、新学期が始まった。
暦の上ではとっくに秋である筈が、容赦なく照りつける太陽は九月に入っても健在だった。十月を過ぎ、十一月になってやっと秋らしい気温にまで落ち着いてきた今は幾分過ごしやすくなってきている。
そして、今この季節は学校行事が目白押しだ。体育祭、文化祭、期末試験――。楽しいことばかりではないが、どこか生徒の心は浮ついているように思う。
各々行事の準備や勉強に追われている一方、自分はというと、学校に顔を出すよりもテレビ局や所属事務所を訪ねることが格段に多かった。仕事があるこの状況は喜ぶべきなのだろうが、何というか――タイミングというものがあるだろう。
今も制服ではなくステージ衣装を身に纏い、用意された楽屋でスタッフが呼びに来るのを待っていた。
身支度が終わってしまうと手持ち無沙汰になってしまって、向かいに座って台本を読んでいる巳波を横目にケータリングを手に取る。いつ出ることになるか分からない為、ドアの方を気にしながら片手間で食べられるお菓子を選んだ。
「どなたかのスマホ鳴っていません?」
「あ、オレかも」
遠くで鳴っている音が自分のスマホからだと気付き、席を立つ。そういえば楽屋に到着してから何かと慌ただしくしていてスマホを見る時間が無かった。
鞄をガサゴソと探り通知を確認する。表示されているのはやはりラビチャだった。
この数時間の間に送られてきたそれを走り読み、緊急性がある内容が書かれていないかだけチェックをする。今返信しなかったものは仕事が終わってから返信するとして――ふと、件のクラスメイトの名前を見つけてスクロールする手が止まった。その瞬間ドクン、と心臓が鳴ったのが分かった。
『文化祭の話したよ』
という文章と共に写真が一枚。その写真には一面にビッシリと書かれている黒板が写っている。
先頭にデカデカと書かれた文字は『文化祭のクラス企画について』。授業のどこかで近々行われる文化祭についての話し合いが行われたのだろう。毎年各クラスで出し物を企画する決まりがあるのだ。
結局、今日中に企画を固めることはできなかったらしいが、よくこれだけの案が出たものだと感心する。
写真をアップにして書かれた文章をひとつずつ読んでいくと、何やら変なことが書かれている箇所に気付いてしまった。何だよ、『コスプレスタンプラリー』って。
「随分楽しそうですね」
「うわっ!?」
いつの間にこちらに来たのだろう。スマホに夢中になっていたオレの背後から巳波の声が聞こえて飛び上がった。
オレの反応が予想通りだったのか巳波はクスクスと笑っていて、それが何だか悔しくて顔を顰める。
「もしかして、先日スーパーに寄った時に一緒にいた方ですか?」
「……そう」
巳波相手に嘘をついてもすぐに見破られてしまうだろうと思い、癪だが素直に答えた。
あいつとラビチャを交換したあの日、「送っていくついでだから」と宇都木さんがスーパーまで送り迎えをしてくれたのだが、実は同じ現場に行った巳波も車内にいた。その時はふたりから何も聞かれなかったから内心安心していたのにバッチリと見られていたらしい。思わず頭を抱えた。
「何?」
「いえ。和泉さんと四葉さんと仲良くされていることは知っていましたが、おふたり以上に気心の知れた方がいらっしゃったんだな、と」
しかも女の子。と口にはしなかったが、言わんとしていることを嫌でも察してしまう。巳波の口元は上がっている。これは、完全に揶揄いモードに入っている。
「ガールフレンドですか?」
「違うってば! 蒼は――」
「名前で呼び合うくらい仲がよろしいんですね」
「だ・か・ら!」
ふふふ、ととても楽しそうにしている巳波を恨めしく思う。そんなに分かりやすかっただろうか。嘗て和泉と四葉と話した時のことを思い出して頭を振った。
本当は、オレだけ見てくれればいいのに。
――なんて、無理に決まってるのに。
今まで楽屋の外にいたトウマと虎於が戻ってきて、その数分後にスタッフが楽屋に入ってくる。その頃には頭の中でモヤモヤと渦巻いていた雑念を頭の片隅に追いやった。