隣席の亥清くんと友達になりました
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私達が思っていた通り、夕飯は冷やし中華だったらしい。買ってきた物をおばあさんに渡した時に聞いてみたところ、よく分かったねと笑っていた。
私達も夕飯の支度を手伝ったこともあってか早く作り終え、少し早めの食事となった。おばあさんは主に私と亥清くんが話しているのを聞いているだけだったが、それでも「楽しかった」と言っていたのを聞いて、私も亥清くんも口元を綻ばせた。
「外暗くなってきた」
夕飯を食べ終わる頃には外は完全に日が落ちて真っ暗になっていた。縁側から外を眺めると、敷地の外にある街灯や周辺の家屋から漏れる明かりが暗闇の中に見える。
亥清くんはバケツ持ってくる、と縁側に置いてあった外履きに足を通して裏手に消えていくのを見送りながら私も外に出た。亥清くんが水を張ったバケツを持って戻ってきたのは、五分も掛からなかった。
「よし、何かルールをつけよう」
正面にしゃがみ込みんで外袋を開けている私の手元を覗き込む亥清くんは「また突拍子もないことを言い出した」と言いたげな顔を一切隠さずに顔を顰めている。いいじゃないか。普通にやっても面白いが、こういった遊び心があった方がもっと楽しめる。
「どんな?」
「えっと――先に火の玉が落ちた方がもうひとりのお願いをひとつ聞く」
「またベタな」
ああは言ったが他に思いつかなかったのだから仕方がない。とはいえ、火の玉を長持ちさせることなど努力でどうにかできるものではない為、これは完全に運任せになってしまう。
「勿論個人が出来る範囲で」
「いいよ、それで」
思い付きで言ってしまったのをフォローするように言葉を付け加える。亥清くんは少し考える仕草をした後、了承してくれた。
線香花火の先にふたり同時に火をつける。色とりどりの火花が噴き出す手持ち花火とは違って小さな火の玉がついただけだったが、パチパチと静かな音を響かせるそれに思わず見惚れてしまった。
「あっ」
暫くして、火の玉が地面に落ちた。砂に溶けるように消えていった鮮やかな赤色を未だに呆けた頭で見届けると、ハッと亥清くんの手元に視線を移した。正面に垂れているこよりの先を見ると、なんとこちらも無い。そのまま流れるように地面を見ると、まだ小さな炎が残っていた。今丁度落ちたようだ。どうやら言い出しっぺが負けるのはお約束らしい。
「……」
「うけるんだけど」
自分の手元を見て固まっていると、そんな私の様子を見てか亥清くんは笑いながらこよりをバケツの中に入れる。笑うな、という意味も込めて亥清くんを睨むが、辺りが真っ暗な故にあまり効果は無かったようだ。
「じゃあ、何かある? お願いしたいこと」
咄嗟の思いつきで言い出したのは私で、且つそれに付き合わせてしまっている形になっていたとしても約束は約束だ。
どんとこいと意気込んでいると、亥清くんは「あー」「えっと……」と暫くの間言い淀む様子を見せた。
「亥清くん?」
「……それ、やめろ」
それ、とはどれだ。
相変わらず亥清くんの抽象的な表現を汲み取るのが難しい。これだけ一緒にいるのだからいい加減慣れないものだろうか。――と、思案したところではたと気付いた。
「悠くん?」
「っ……」
そういうことだ、と亥清くんを名前で呼んでみる。しかし、思っていた反応とは裏腹に顔を大きく背けられてしまった。てっきり満足気に笑ってくれるか、間違っていようが眉間に皺を寄せながらも正解を教えてくれるものだとばかり思っていたのだが。
「これで合って――えっ、やっぱり違ってた?」
「こっち見んな!」
「えぇー……」
大きく顔を背けた悠くんの耳は、家から僅かに漏れる明かりで赤く染まっているように見えたのは――恐らく気のせいだ。
「因みに、勝ったら何言おうとしてた?」
「悠くんの誕生日聞こうと思ってた。前から気になってたんだけど、ずっと聞きそびれてたんだよね」
「……調べれば出てくるのに」
「いや、調べちゃったら反則かなって思って……」
「何に反則するわけ」
私達も夕飯の支度を手伝ったこともあってか早く作り終え、少し早めの食事となった。おばあさんは主に私と亥清くんが話しているのを聞いているだけだったが、それでも「楽しかった」と言っていたのを聞いて、私も亥清くんも口元を綻ばせた。
「外暗くなってきた」
夕飯を食べ終わる頃には外は完全に日が落ちて真っ暗になっていた。縁側から外を眺めると、敷地の外にある街灯や周辺の家屋から漏れる明かりが暗闇の中に見える。
亥清くんはバケツ持ってくる、と縁側に置いてあった外履きに足を通して裏手に消えていくのを見送りながら私も外に出た。亥清くんが水を張ったバケツを持って戻ってきたのは、五分も掛からなかった。
「よし、何かルールをつけよう」
正面にしゃがみ込みんで外袋を開けている私の手元を覗き込む亥清くんは「また突拍子もないことを言い出した」と言いたげな顔を一切隠さずに顔を顰めている。いいじゃないか。普通にやっても面白いが、こういった遊び心があった方がもっと楽しめる。
「どんな?」
「えっと――先に火の玉が落ちた方がもうひとりのお願いをひとつ聞く」
「またベタな」
ああは言ったが他に思いつかなかったのだから仕方がない。とはいえ、火の玉を長持ちさせることなど努力でどうにかできるものではない為、これは完全に運任せになってしまう。
「勿論個人が出来る範囲で」
「いいよ、それで」
思い付きで言ってしまったのをフォローするように言葉を付け加える。亥清くんは少し考える仕草をした後、了承してくれた。
線香花火の先にふたり同時に火をつける。色とりどりの火花が噴き出す手持ち花火とは違って小さな火の玉がついただけだったが、パチパチと静かな音を響かせるそれに思わず見惚れてしまった。
「あっ」
暫くして、火の玉が地面に落ちた。砂に溶けるように消えていった鮮やかな赤色を未だに呆けた頭で見届けると、ハッと亥清くんの手元に視線を移した。正面に垂れているこよりの先を見ると、なんとこちらも無い。そのまま流れるように地面を見ると、まだ小さな炎が残っていた。今丁度落ちたようだ。どうやら言い出しっぺが負けるのはお約束らしい。
「……」
「うけるんだけど」
自分の手元を見て固まっていると、そんな私の様子を見てか亥清くんは笑いながらこよりをバケツの中に入れる。笑うな、という意味も込めて亥清くんを睨むが、辺りが真っ暗な故にあまり効果は無かったようだ。
「じゃあ、何かある? お願いしたいこと」
咄嗟の思いつきで言い出したのは私で、且つそれに付き合わせてしまっている形になっていたとしても約束は約束だ。
どんとこいと意気込んでいると、亥清くんは「あー」「えっと……」と暫くの間言い淀む様子を見せた。
「亥清くん?」
「……それ、やめろ」
それ、とはどれだ。
相変わらず亥清くんの抽象的な表現を汲み取るのが難しい。これだけ一緒にいるのだからいい加減慣れないものだろうか。――と、思案したところではたと気付いた。
「悠くん?」
「っ……」
そういうことだ、と亥清くんを名前で呼んでみる。しかし、思っていた反応とは裏腹に顔を大きく背けられてしまった。てっきり満足気に笑ってくれるか、間違っていようが眉間に皺を寄せながらも正解を教えてくれるものだとばかり思っていたのだが。
「これで合って――えっ、やっぱり違ってた?」
「こっち見んな!」
「えぇー……」
大きく顔を背けた悠くんの耳は、家から僅かに漏れる明かりで赤く染まっているように見えたのは――恐らく気のせいだ。
「因みに、勝ったら何言おうとしてた?」
「悠くんの誕生日聞こうと思ってた。前から気になってたんだけど、ずっと聞きそびれてたんだよね」
「……調べれば出てくるのに」
「いや、調べちゃったら反則かなって思って……」
「何に反則するわけ」